難しい興行で大熱戦を展開した主役に

圧倒的な強さで2025-26シーズンのBリーグの頂点に立った長崎ヴェルカは、スコアラーのスタンリー・ジョンソンとイ ヒョンジュン、精神的支柱の狩俣昌也、そして選手たちをまとめ上げたモーディ・マオールヘッドコーチといった多くのメンバーがチームを離れ、今シーズンは再出発の1年目という位置づけでBプレミア初年度を迎える。

ただ、9月13日に行われた川崎ブレイブサンダースとのプレシーズンゲームは、互いにメンバーが揃わない状況ではあったが非常に熱量が高く、プレシーズンとは思えないほどタフな試合となった。89-91で敗れたものの、今シーズンより指揮を執るディーン・ヴィッカーマンヘッドコーチは大きな手応えを感じさせるコメントを残した。

「この試合は私たちが望んでいたすべてを与えてくれました。非常に競争的で、フィジカルで、ファウルトラブルもあり、シーズン中に実際に起こり得る状況に対処することができました。こういう試合を経験をできたことがチームにとってすごくよかったですし、良い週末になりました」

プレシーズンゲームというのはどのチームにとっても非常に難しい興行だ。メンバーの連携やコンディションが万全でなく、「シーズン前にケガをしたくない」という無意識のブレーキも掛かる中、それでもチケットを販売している以上は対価に見合うだけのものを見せなければいけない。ただこの試合は、どちらのチームのファンにとっても『見に来てよかった』と思わせる素晴らしいものだった。

このようなゲームのトーンを中心となって作り上げた一人が馬場雄大だった。昨シーズンまで出場機会の少なかった選手や新加入選手たちを引っ張り、カバーし、終盤の勝負どころではギアを上げて必要なシュートを確実に沈めた。27.45分のプレータイムで、22得点6アシスト、フィールドゴール成功率は77.8%を記録。スタッツを見ただけでパフォーマンスの高さは明らかだが、生身の馬場は数字以上に突出した存在感と攻守両面での高いスタンダード、そして勝利への意志を示し続けた。

「新たなバスケットを試す」でもなく、「まだ開幕前だから力を抜く」でもなく、「この試合に勝つ」ということに絶対的なプライオリティを置いて戦ったと馬場は言った。

「やるからには負けたくない、いかに気持ちを切らさずにやり切るかという意識は、シーズンを通して絶対に必要になってくると思っています。だからプレシーズンでもあえてシーズン中のように気合を入れてきましたし、チームメートにもそういうコミュニケーションを取っていました。ディフェンディングチャンピオンとしてプライドを持って戦わないといけないし、何事も『勝ってナンボ』というところは絶対あると思うので、どういう形であれまず勝ちをプライオリティにしてやっていくのが僕のやり方なんだと思っています」

馬場の声掛けに引き寄せられたところもあってか、横浜エクセレンスへの期限付き移籍を終えた永野威旺は思い切りの良いペイントアタックから7アシストを成功させ、2024-25シーズンぶりに地元クラブに戻った髙比良寛治もしつこいディフェンスで川崎の攻撃のリズムを狂わせた。ただ、馬場が目指すものはもっと高いところにある。

「今シーズンはプレータイムシェアが絶対必要だと思っていますが、今日は主力が出ていない時間でリードを詰められてしまう展開だったので、『ただの控えじゃないよ』というところをもう一度再確認する必要があると思っています」

今シーズンの長崎は東アジアスーパーリーグ、天皇杯に出場することが決まっている。スケジュールは当然過密になり、昨シーズンのように主力に出場時間が偏る戦い方をしていたらハレーションが起きかねない。馬場はそのようなことを踏まえて、「彼らも勝利に貢献する一員。12人で戦っていくんだというところは開幕戦までに仕上げていきたい」と語った。

「オフェンス面での成長にトライしていきたい」

昨シーズンの馬場は、ディフェンスを軸にチームを支えるロールプレーヤー的な役割を果たしていた。しかしジョンソンとヒョンジュンが退団した今シーズンはオフェンスでもイニシアティブをとる立場になりそうだ。

馬場は次のように自身の今シーズンを展望している。「もう少し得点に絡んでいきたいなというふうには思っています。ディフェンスの実力は毎シーズン証明できていると思うし、ヒョンジュン選手やスタンリー選手がいないということで得点面はかなり落ちると見られていると思うので、オフェンス面での成長にトライしていきたいです」

オーストラリアNBLで3度の優勝を経験した名将で、2020-21シーズンにはメルボルン・ユナイテッドで馬場と共闘しているヴィッカーマンヘッドコーチも、「メルボルンにいた頃の彼はエリートなディフェンシブストッパーで、トランジションでのスピードも見せてくれましたが、このチームではより大きなオフェンスの役割を担ってほしいと思っているし、彼のためにもっとプレーを組み立てられるようにしたいです」と話した。

馬場いわく、ヴィッカーマンヘッドコーチは自身の絶対的なスタイルを踏襲するというタイプの指揮官でなく、チームは引き続きポジションにとらわれず、展開数の多いバスケットを志向することになりそうだという。ヒョンジュンの枠にどんな選手が入るのか。新加入選手たちがどのようなプレーを見せるか。不確定要素はまだ多いが、昨シーズンの優勝を契機に一段階上のフェーズに進んだ馬場が、さらに己を磨き、どんな時でも観客に『この試合を見に来てよかった』と思わせられるパフォーマンスを発揮することは間違いないだろう。