育成とサイズアップ、大会を通じて選手たちが成長
『B代表』という位置づけで参戦したジョーンズカップにて、日本はチャイニーズ・タイペイAとB、ヨルダン、インドネシア、カナダ、イランから勝利を上げて6勝2敗で大会を終え、2010年以来、9年ぶりとなる3位の成績を収めた。
この大会はチャイニーズ・タイペイ協会主催で、今年で41回を迎える伝統ある国際大会。以前は2年に一度のアジア選手権(現アジアカップ)に向けてアジア主要国のA代表が参戦するケースが多かったが、ここ数年は国際試合が増えているために、各国それぞれが強化したいチームを送り出している。主催国のチャイニーズ・タイペイはAとBの両代表を送り出し、韓国、ヨルダン、インドネシアはA代表選考を兼ねたチームが参戦。イランはB代表、カナダはブリティッシュ・コロンビア大、フィリピンは『マイティースポーツ』というフィリピンを拠点にして戦う、アメリカ国籍選手を多数含むクラブチームの参戦となった。
そんな中で日本の目的は、フリオ・ラマスヘッドコーチの言うところの『育成』と『サイズアップ』にあった。
ワールドカップ予選に出場した張本天傑と、負傷から完全復帰した橋本晃佑は4番から3番ポジションへ、大学生の星野曹樹は4番から2番に挑戦するなど、それぞれコンバートの訓練と見極めを兼ねていた。また若手のテーブス海と中村太地はビッグガードになるために、シェーファー・アヴィ幸樹と渡邉飛勇らセンター陣はサイズアップ要因として、経験値を積み上げる場となった。また初参戦のコー・フィリッピン、帰化選手となったウィリアムス・ニカについても、戦力となれるかが試された。
『サイズアップ』の課題に回答、頭角を現した選手たち
そんな中で別格とも言える結果を残したのが、「Bリーグで実績を残しているという意味で、A代表の即戦力になれるか試したかったし、期待通りの活躍を見せている」と、現地視察にて東野智弥技術委員長が評価した司令塔の安藤誓哉、シューターの安藤周人の2人だ。
日本は毎年苦戦するチャイニーズ・タイペイAとのオープニングゲームを、終盤に安藤(周)が連続3ポイントを決めて77-75のスコアで制すると、ヨルダンにはゾーンディフェンスが功を奏し、安藤(誓)が終盤に大爆発して72-63で勝利。チャイニーズ・タイペイは世代交代を迎え、ヨルダンは数人の主力を欠いていたが、これらA代表に勝利したことで、若いチームに勢いが出てきて、自信が芽生えてきた。
場所を移しての大会後半では、チャイニーズ・タイペイB、イランB、カナダの大学と、勝たなければならない相手に対して、我慢しながらも確実に勝ち切る試合運びを展開した。主軸センターが不在だったとはいえ、ワールドカップ代表候補メンバーで結成した韓国に81-83まで猛追したことは大収穫だと言える。
またシェーファーと渡邉ら若きセンター陣が試合をすればするほど成長し、2m前後でサイズのある3番を目指している橋本や、終盤にコンディションが戻ってきた張本らの3ポイントが要所で決まったことなど、高さの面で想像以上にチームが機能したという面では、サイズアップの強化が進んでいることを示せた大会でもあった。
Bリーグ優勝チームの司令塔、実力を示した安藤誓哉
このチームの大黒柱と言える働きを見せたのは安藤誓哉だ。安藤がコートに立つ時間帯と不在の時間帯では、ゲームの落ち着きが格段に違う。大会を通して球際に強いところを見せ、自らリバウンドを取ってはボールをプッシュして速い展開を作った。序盤はチームの流れが停滞した時に1対1で打開していたが、後半戦になると流れを見極めてインサイドやシューター陣を使うゲームメークも冴え、Bリーグ優勝チームの司令塔として、その実力と成長の両面を示した。
ラマスヘッドコーチは、大会前に「結果を出せばA代表の合宿に呼ぶ」ことをエルマン・マンドーレコーチに伝えており、それを聞いた選手たちが発奮したことは言うまでもない。だがそれ以上に「戦うチームになったことがうれしいし、それが勝因」とマンドーレコーチは快進撃の要因を明かしている。
「日の丸をつけた以上、100%のプレーをするのは当たり前で、そのモットーで全員が戦っていた。このチームはA代表のスタイルと同様に、トランジションで走ること、ボールを動かしていいシュートを打つことにトライし続けたからこそ6勝できた。一番の目的である育成面では、若いセンター陣が伸びたことが収穫です」
ジョーンズカップから選出される5名および、代表候補選手については、現時点で日本協会からは公式発表はないが、ラマスヘッドコーチは7月24日の公式会見にて「ワールドカップに向けた合宿にジョーンズカップから5名の選手を呼ぶが、そのうち2名はジョーンズカップで結果を残した選手で、25日から合宿に参加する」と名前こそ明かさなかったが、ジョーンズカップでのパフォーマンスを評価したことを明言している。
大会終盤にマンドーレコーチは「ラマスコーチは毎日ジョーンズカップの映像を見てチェックしているし、私たちと密に連絡を取り合っている。多分、今取材しているこの時も彼から今日の試合についてメッセージがきているよ(笑)」と語っていた。
トライアウトを兼ねた大会で結果や可能性を示した選手にチャンスが与えられるのは当然のこと。競争システムを勝ち抜いた選手が引き上げられることは、A代表の面々にとっても刺激となり、選手層の底上げという意味でも、ワールドカップに繋がる大会になった。