大河正明

1958年5月31日、京都府生まれ。2015年にサッカーのJリーグから新リーグ創設を目指すバスケ界へと舞台を移して組織再編を手掛け、川淵三郎初代チェアマンの後にチェアマンに就任。現在は「BREAK THE BORDER」をキーワードに、新たなプロリーグの盛り上げに尽力している。日本バスケットボール協会の副会長も兼任し、立ち遅れたバスケットボールの環境整備、強化に邁進する。高校生までバスケ部。

U18の整備と国際交流、将来への投資に注力

──先日の会見で大河チェアマンは『B.LEAGUE BEYOND 2020-超えて 未来へ-』という所信表明で、中長期の方針を発表しました。この時はエクスパンション型リーグへの移行、クラブライセンス基準の引き上げ、昇降格制度の変更と、2024年以降の話である『第3フェイズ』ばかりが注目されましたが、今回はその前の話、つまり東京オリンピックを迎えるまでのこの1年でバスケ人気の盛り上がりをどう作っていくかを聞かせてください。

もちろん、2019-20シーズンや2020-21シーズンをどうするかは一つの大きな課題です。ただ、この1年よりもその先にどんなバスケット界の未来があるのかを示すのが、あの会見では大事でした。

実際、リーグの事業は予算化されている中で粛々と進めないといけません。決められた予算の中で質的に何かを変えていくことに注力するのが2019-20シーズンで、その後のジャンプを目指すシーズンにもなります。

将来へ向けた基礎作りで言えば、U18が2021年にはスタートするので、そこを固めなければいけない。育成の指導者を育てて、環境を整備してU18へと繋げる。何年か先への投資ですが、練習環境とコーチングスタッフが揃えば、BリーグのU18に行く選手はものすごく増えるはずです。

──なるほど。2021年からのU18をスムーズにスタートさせるには、この1年が大事ですね。

近隣の国との若い世代からの交流のトライアルを進めていくのも大事だと思っています。我々がやらなければいけないのは、クラブ単位だけでなくリーグとしても海外のチームと接点を持ち、交流できる環境を整えること。そのために私も中国、韓国、台湾、オーストラリアへと行っています。例えばオーストラリアが提携して選手が行き来するようになれば、大きな選手と対戦する機会が増えます。BリーグのU16代表選抜チームをヨーロッパや南米に遠征させることも考えたいですね。本当は中学生ぐらい、U14から行かせてあげたい。そういうことを仕込む1年です。

Bリーグファイナル

「大晦日に『オールナイトBリーグ』をやりたい!」

──Bリーグの中ではどんな取り組みを考えていますか?

試合の中身は選手に頑張ってもらうしかないんだけど、試合全体の満足度をどう上げて、新しいお客様をどう勧誘して増やしていくのかは、いくつかのチームに絞って調査しています。これまでやってきた地道な集客、SNSを使った入場者数はベースとしてありながらも、どこをどう突くことでお客様がもっとたくさん来てくれるようになるのか、そのトライアルを始めています。

チケットシステムも今年から変わります。座席を3D映像で見て選べるチームも出てくるし、ダイナミックプライシングも始まってきます。ハイライト映像の撮り方、作り方の技術も変わってきているので、特定のファンに特定のものがリーチするような仕組みも考えられます。そういった可能性にチャレンジしていきます。

──2019-20シーズンの大きな仕掛けと言えば横浜アリーナでの開幕戦ではないでしょうか。昨シーズンは船橋アリーナで『先出し開幕戦』がありましたが、今回はリーグの主管で他のカードに先駆け、川崎ブレイブサンダースvs宇都宮ブレックスの開幕戦を実施します。

そうですね。初年度は代々木第一体育館でBリーグ主管の開幕戦を行いました。2年目、3年目はやりませんでしたが、今回またBリーグ主管でやるのは大きな変更です。これも来年以降をにらんだ仕掛けの一つです。Bリーグとしてナショナルアリーナを作りたいと言っていて、それができるまではさいたまスーパーアリーナや横浜アリーナといった会場を押さえる必要があるので急には増やせませんが、2020-21シーズン以降にリーグ主管の試合をもう少し増やしていけないかと思っています。

──リーグとして主管試合を増やすのはナショナルアリーナができた時の準備であり、演出も含めてクラブ単独ではできない規模のイベント、特別な試合を作っていくという意味ですよね?

そうなりますね。例えば正月でもいいし、クリスマスイブでもいい。そういうお祭りっぽいことを準備したいです。私が興味を持っているのは、例えばレバンガ北海道のホームゲームをこちらでやるとか。琉球ゴールデンキングスもbjリーグ時代に大田区総合体育館でホームゲームをやっています。各クラブのスポンサーは、本社はその地方にあっても東京には出先があり、その広告も東京で出したいというニーズがあります。首都圏で試合をすればBリーグが持っているメディアの皆さんとの接点を利用して広げていくこともできます。

秋田ノーザンハピネッツがB2にいた時、アースフレンズ東京Zのホームゲームがいっぱいになりました。東京にも秋田のファンはいっぱいいるし、秋田に住んでいる人も東京に遊びに来る良いきっかけになります。一極集中と言うとイメージが良くないかもしれませんが、年に1回そういう試合があってもいい。大晦日に『オールナイトBリーグ』で2試合やるとか。2試合目が21時半にスタートして、終わったらみんなでニューイヤーカウントダウンとか楽しくないですか?

大河正明

「横浜アリーナを満員に、言い訳せずチャレンジ」

──とはいえ、先出し開幕戦で好カードを組むとは言っても、平日ナイトゲームで横浜アリーナをいっぱいにするのはそう簡単ではありませんよね。集客については楽観視していますか?

横浜アリーナを平日に埋められる勝算があるわけではありませんが、そこに向かってやっていこうと。だからファイナル並みの演出を用意して、ちゃんと告知して開幕戦の対決ムードを煽って、いよいよBリーグの4年目が始まるということを、ワールドカップからの良い流れで出していきたいと思っています。そんなに簡単ではありませんが、プロ野球は平日でも横浜スタジアムが満員になりますから、言い訳せずにチャレンジしたいです。

ワールドカップ効果にはかなり期待しています。日本代表の人気がJリーグの人気に直結しないのがサッカーの難しいところで、バスケットにもその傾向があるかもしれません。ですが、12人の登録選手に『海外組』はおそらく渡邊雄太と八村塁の2人しかいないので、今回は大丈夫だと思います。篠山竜青選手やニック・ファジーカス選手、比江島慎選手がワールドカップで活躍すれば、横浜アリーナの開幕戦を盛り上げる追い風になります。これからNBAやNCAAでプレーする選手がどんどん増えてきたらまた違う様子になるかもしれませんが、それでも初年度のように開幕戦を盛り上げて、他のチームの開幕戦の集客にも良い影響を与えたいですね。

──それで言うと、話は逸れますが8月の日本代表のさいたまスーパーアリーナ3試合もかなりのチャレンジですよね。

千葉ポートアリーナの試合は早々に売り切れました。今の初速から考えて24日のドイツ戦は早めに完売になりそうです。良い席は売れているので、あとは4階席とかを売っていかなければいけない。招待も含めて2万人のキャパシティに対して1万5000ぐらいはすでに見えています。バスケ界で3日で6万人を集めるのは過去にない話なのでかなりのチャレンジですが、しっかり埋められるように頑張らないといけないですね。