アル・ホーフォード

「勝利のために必要なことを何でもしてくれる」

攻守揃ったベテランのアル・ホーフォードは、オフにフリーエージェントとなり、セブンティシクサーズと4年1億900万ドル(約118億円)の契約に合意した。昨シーズンまでホーフォードが所属したセルティックスにとっては、大きな戦力ダウンとなる。

キャリア平均14.1得点、8.4リバウンドのホーフォードは、チームの勝利を優先するタイプの選手で、ロッカールームでもリーダーシップを発揮できる。その彼を失い、指揮官のブラッド・スティーブンズは頭を抱えているだろう。この苦しみは、経験者にしか分からない。

ホーフォードを失った苦しみを味わったもう一人のヘッドコーチは、現在バックスを率いているマイク・ブーデンホルザーだ。2013-14シーズンから2017-18シーズンまでホークスのヘッドコーチを務めたブーデンホルザーは、2016年のオフにホーフォードを失った。ホーフォードの人となり、そして彼の退団が決まった時の心境を、ブーデンホルザーが『Boston Herald』に語った。

「選手との関係性を考えると、(フリーエージェントとなっての退団は)最も辛い瞬間なんだ。しかし、フリーエージェントの権利は選手たちが勝ち取るもので、選手個人、家族らにとってベストな決断を下すもの」

「私は、これからもアルの決断をリスペクトし続ける。彼は正真正銘のプロだ。とても尊敬している」

「彼は非常に指導しやすい選手で、勝利のために必要なことを何でもしてくれる。無私無欲の選手なんだ。初めてヘッドコーチとしてチームを率いる場合、チームと勝利を第一に考えられる選手、チームに求める選手像など、色々と理想を持ってしまう。もしチームのベストプレーヤーの一人が、そういう意識を自然に備えた選手だと、チーム全体に同じ意識を浸透させられるように感じられる。アルは、そういう能力を備えた選手で、彼の中に自然と根付いていることなんだ」

「私は、仕事をこなして、家に帰って家族と過ごす。そういう環境で育ってきた。人目を引くような出来事もなく、仕事が大好きで、家に戻ればそれぞれの人生がある。そういう生き方をしてきた。アルの物事に対する対応を見ていると、私と彼はこの上なくフィットしていたと思うね」

ホーフォードを絶賛するブーデンホルザーだが、彼が16年の夏にホークスを離れる決断を下した時、どういう気持ちだったのだろうか?

家具を壊すほど激昂したかと聞かれたブーデンホルザーは、「そういう感情ではなかった」と、笑った。ただ、「できることなら、もう少し一緒に仕事がしたかった」と、振り返る。

「球団にとっても大きなことだったが、次に向かって進まないといけない。次のオプションについて考え、できる限りベストな決断を下さないといけない。それでも、球団にとっては大きな出来事だった」

セルティックスは、ホーフォードとカイリー・アービングの退団が決まったものの、ケンバ・ウォーカーの獲得に成功した。3年前にブーデンホルザーが感じた苦悩と比べれば、スティーブンズには多くのオプションがある。それでもなお、2019-20シーズンが開幕すれば、ホーフォードがどれだけ大きな存在だったかを知ることになるのだろう。

今頃スティーブンズも、ブーデンホルザーのように「もう少しアルと仕事がしたかった」と思っているのかもしれない。