創部2年目のチームを36得点で引っ張る
ウインターカップ3日目、初出場の福井工業大学附属福井がインターハイ王者の桜花学園にあわやアップセットという大健闘を見せた。
チーム創設2年目で、まだ2年生と1年生しかいないチームだが、県立足羽で33年間指揮を執り、アンダーカテゴリーの日本代表も率いた林慎一郎がコーチを務める。体育館、寮、食事など環境も整え、チーム作りを始めて2年で全国大会に出場し、桜花学園と競り合うまでに成長した。
林コーチが目指すのは、今のトレンドであるピック&ロール主体のセットオフェンスに頼らず、スピーディーな展開の中で1対1で勝負するバスケ。同じく初出場だったインターハイでも3回戦まで勝ち上がったスタイルは、それから半年で練度を高めていた。
留学生のサジョ レイが速攻できっちり走り、他の選手も鍛え上げたフィジカルで桜花学園と渡り合う。前半を終えて45-40とリードし、その後も一進一退の攻防を続けながら、桜花学園に対して受け身に回るのではなく、攻め気のプレーを貫いた。
「相手が格上なのは分かっているので、とにかくチャレンジしよう、やれることをやろうと言葉を掛け合って、すごく良い雰囲気で試合に入ることができました」と言うのは、2年生にしてキャプテンとエースを務める小池昌鈴だ。留学生のレイは187cmと高さはあるが、走れる分だけパワーで押すタイプではない。そのレイが空けたスペースに小池が飛び込むのが福井工大附属の得点パターン。桜花学園はこの攻めにてこずり、小池はペイントエリアで快調に得点を伸ばしていく。
「逃げている時は攻めが機能しない。とにかく縦にアタックしてと指示されていたので、みんなそれを意識してプレーしました」
しかし、若いチームだけに弱点もあった。選手層が薄く、小池とレイ、板橋香苗の3人が40分間フル出場。後半、時間が進むにつれて疲れが出て、運動量は何とかキープしても踏ん張りが利かなくなっていく。
66-71と逆転を許した第4クォーター残り6分過ぎ、小池はリバウンド争いで桜花学園のイシボ・ディバインと空中で激突し、背中からコートに叩き付けられる。小池が「死んだかと思いました(笑)」と振り返るアクシデントだったが、これで小池は疲労を乗り越えた。
「ここで折れてられないな、ってあの場面で思いました。ここまでやってきたんだから、もう一回やれる。残り時間も少ないんだから最後までやりきろうと。死にかけましたが、絶対に折れたくなかったです」
ここから小池は本当に息を吹き返し、タイムシェアで余力が残っているはずの桜花学園を再び圧倒し始める。最後は竹内みやとの点の取り合いでわずかにおよばず、78-81で敗れたのだが、36得点を挙げた小池を始め、福井工大附属の健闘は見事だった。
林コーチは小池の活躍を「いつも30点、40点取れとハッパを掛けています。今日のようにゾーンに入った日にこれぐらい点を取っても驚きません」と称えた。そして小池は、「私の持ち味はオフェンスで、ディフェンスではいつもみんなに助けてもらっている分、もっと得点を取らなきゃいけないと思っています」と語る。
ウインターカップは3回戦敗退に終わったが、このチームはメンバーがそのまま来年も残る。インターハイとウインターカップに初出場してインパクトを残した今年から、来年はさらなる飛躍が期待される。
