ケニー・ローソン・ジュニア

「チームのみんなが自分を快適にプレーさせてくれた」

群馬クレインサンダーズは、救世主を必要としていた。現役ドイツ代表でインサイドの要、ヨハネス・ティーマンは11月上旬から脳しんとうでインジュアリーリストに登録されて、いまだ戦線に復帰できず。現在ブロックランキングリーグ首位のエージェー・エドゥは、前節からベンチ外となった。さらに前節富山グラウジーズ戦の第2戦を欠場したケリー・ブラックシアー・ジュニアは、今節こそ出場可能だったもののコンディションは万全ではない。追い討ちをかけるように、トレイ・ジョーンズとコー・フリッピンがケガのため離脱とリリースがあった。

そのような状況の中、群馬は1210日にサンロッカーズ渋谷をホームに迎えた。インサイドに不安を抱えながら、ジョシュ・ホーキンソンやドンテ・グランタム、トーマス・ウェルシュといった歴戦のプレーヤーを相手にしなければならなかった。

バスケットボールはチームスポーツであるため、誰かがいなければ出場できる別の選手の活躍を期待する。しかし、満身創痍の群馬にとってそれは容易なことではないと筆者は考えていた。前節の第2戦同様にインサイドが崩壊して、ワンサイドな展開になってもおかしくない状況だった。

その中で群馬はロスター全員が躍動し、6人が2桁得点を挙げるバランスの良さを見せて94-92で接戦をモノにした。ディフェンス自慢の群馬にとっては本来求める勝ち方ではないが、厳しい状況の中、チームでつかみ取った勝利だ。

1クォーターこそ、23-20とリードを奪って終えた群馬だったが、第2クォーター開始からSR渋谷に0-10のランを食らい劣勢の展開に。ここから活躍を見せたのが、今節から緊急補強となったケニー・ローソン・ジュニアだった。連続で3ポイントシュートを沈めると、次のポゼッションで迷いなくダンクにいき連続得点。我慢の時間帯から一転、会場を沸かせ流れを引き寄せた。

ローソン・ジュニアは自身のパフォーマンスを振り返る。「チームのみんなが自分を快適にプレーさせてくれました。新しく加入するのは難しいことでしたが、みんなが繋いでくれたのでよかったです。群馬は才能ある選手がたくさんいるので、みんなでオフェンスをリードした結果、自分が2本の3ポイントシュートを決めることができました」

試合を通じて2358秒の出場で、12得点2リバウンド2アシスト1スティール1ブロックの活躍。重要な場面でも長くコートに立った彼は、まさに救世主だった。

ケニー・ローソン・ジュニア

ミリングヘッドコーチと同郷「30分くらいの距離の高校に通っていた」

群馬のディフェンスシステムは連動がカギとなるため、簡単ではない。新加入選手にとってはなおさらだろう。この試合では相手のピック&ロールに対してダブルチームを仕掛ける場面も多く、他の選手との円滑なローテーションがよりいっそう求められた。

ローソン・ジュニアは、このディフェンスシステムもうまくこなした。「チームディフェンスは、これから学んでいかないといけません」と前置きした上で「自分でも思っていなかったですが、うまくローテーションできました。仮に連携がうまくできなかったとしても、自分が全力でプレーすることでカバーできることもあるので、力を出し尽くすことにフォーカスしました」と振り返る。

聞けば、ローソン・ジュニアは月曜日に群馬に到着してメディカルチェックを受け、火曜は軽い練習を行い、チームとして連携を確認したのは試合当日の少しの時間だけだったという。昨シーズンは4クラブを渡り歩き、B1からB3まですべてのカテゴリーを経験。さらにBリーグが終了した夏の間はメキシコのクラブでプレーしていた。これまでのキャリアを生かし、緊急補強でもアジャストできる力を証明した。

「昨シーズン、多くのクラブを渡り歩きましたが、群馬に来て、このスタイルは自分に合っていると感じます。事前にシステムについても聞いており、わかりやすかったです。ケガ人がコートに戻ってくるまでの時間をどう繋ぐかが自分の役割です」

特に群馬には縁深いものを感じていると続ける。「カイル・ミリングヘッドコーチとは、ホームタウンが同じです。2年前に天皇杯で2分くらい話した程度で、特に親交があったわけではありませんが、群馬に来て30分くらいの距離の高校に通っていたと知りました」

37歳のベテラン選手は、その経験値の高さと順応性で、チームの勝利を支えた。しかし、あくまでケガ人が戻ってくるまでの繋ぎ役と自身を評し、謙虚な姿勢を崩さない。そして、熱戦をサポートしてくれたファンへの感謝も忘れない。「終盤に向けて、どんどん声援が大きくなり、それが勝利に繋がりました。応援は力になっていますし、感謝しています」

さらにファンに向けて、笑顔でメッセージを送る。「ニックネームは特にないですが『ケニー』と呼ばれています。ただ、群馬にはケニー(淺野ケニー)がいます。『KJ』とも呼ばれますが、ジュニア(ブラックシアー・ジュニア)と一緒なので、どれでもいいと思っています。ファンの皆さんが考えてください」