カワイ・レナード

『厄介者』のレッテルを引きはがし、2度目のNBA制覇

ラプターズは球団創設24年目にして初となるNBA制覇を成し遂げた。3連覇を目指すウォリアーズを破ることができたのは、個性的な選手たちがチームとして一つにまとまったから。それでも、勝利の立役者を選ぶとしたら、それはファイナルMVPに選ばれたカワイ・レナードだ。

カワイは昨夏にスパーズを離れてラプターズに加入した。フランチャイズプレーヤーとしてファンに愛されたデマー・デローザンとのトレードだったから、レナードの良し悪しは別として、このトレードが成立した時には批判が巻き起こった。物静かで感情を表に出さないことで知られるレナードは、静かにラプターズに加わった。

「シーズン前のチームミーティングに参加した瞬間から、目の前のことに集中した。ここで歴史を作りたいと思ったんだ」と、自身2度目となるNBA優勝を決めた会見で、レナードは話し始めた。「どのチームのジャージを着ていたって、僕がやるのはバスケットボールだ。僕が来る以前からプレーオフに進出していたこのチームが強いのは分かっていたから、勝ちたい気持ちで合流することができた」

レナード自身にとってもリベンジのシーズンだった。スパーズでは大腿四頭筋の負傷が長引いたことを怠慢ないしは造反と見なされ、ラプターズへのトレードが成立した際にも1年で契約が満了することから「ラプターズでプレーする気はなく、シーズン全休で意中のクラブに移籍するのではないか」と陰口をたたかれた。リーグ屈指の2ウェイプレーヤーは、『クラブに従わない厄介者』というレッテルを貼られていたのだ。

このことについてもレナードは触れる。「ケガが嘘だとかチームのためにプレーしたがらないと疑われ、メディアに叩かれて気落ちしたよ。僕はバスケットボールが大好きで、プレーできない状態に陥ったらガッカリする。そういう時期を経験したから、他の誰でもなく僕自身がハッピーにならなきゃいけないと思った。誰に何を言われても気にせず、自分を信じようと思った」

「30得点を期待されてると書かれても、どうでもよかった。そういう試合もあったし、僕はただ正しいプレーをしようとしただけだ。記事の見出しにやるようなことをやろうと思わない、それはNBAでプレーするようになって学んだことだ。そうやって僕は成長してきた」

「自分はこのために努力してきたんだ」と、いつもは控え目なレナードが胸を張った。2014年に優勝した時、スパーズには数多くの重鎮がいて、彼は自分のプレーだけに集中すれば良かった。だがラプターズではそうはいかない。それは同じくスパーズから移籍したダニー・グリーンが「チームメートに声を掛けて模範を示す、ハドルの中で檄を飛ばす。こうした姿は見たことがなかった。プレーだけでなく言葉でもカワイはチームを引っ張ろうとしている」と証言している。

そのレナードはプレーの面でも、今まで以上にクラッチタイムでの存在感が増した。今回のプレーオフでの突出したパフォーマンスは、コービー・ブライアントを彷彿とさせるものだった。「過去から学ぼうとしているし、より賢くなりたいと思っている」。そんな成長を体現したレナードこそ、MVPのトロフィーに相応しい。