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一進一退の攻防、第4クォーターは超ロースコアに

スパーズとロケッツのプレーオフ準決勝第5戦。ここまで2勝2敗と実力伯仲の両者の戦いは、48分間で決着がつかず、延長にもつれた。

立ち上がりにスパーズが、第3クォーターにロケッツが流れをつかみかけるも、どちらも点差を2桁に広げることのできない一進一退の攻防が続く。第3クォーター残り5分37秒、カワイ・レナードがジェームズ・ハーデンをディフェンスした際に右足首をひねるケガに見舞われるも、スパーズは推進力を失うことなく戦い続け、最後のポゼッションでダニー・グリーンが3ポイントシュートを決めて86-85と逆転した。

第4クォーターは両者の「負けたくない」意地のぶつかり合い。互いにズレを作らない集中したディフェンスによりノーマークでシュートを打つ機会がほとんど生まれず、超ロースコアの展開に。

残り54秒、99-99の同点の場面でハーデンがパティ・ミルズからファウルを誘発。フリースローを2本とも成功させリードを奪う。それでもスパーズはマヌ・ジノビリが得意のステップからレイアップを沈めすぐさま追い付き、全く譲らない。

残り11秒、最後のオフェンスでミルズが3ポイントシュートを終了のブザーと同時に沈めたかに見えたが、ハーデンのシュートチェックをかわす際にわずかに動作が遅れたことで、時計がゼロになった後のシュートであるとの判定が下されノーバスケットに。101-101のまま試合は延長へ突入した。

延長戦のラスト1分、どちらに転ぶか分からない攻防

延長戦でも息詰まるディフェンス合戦が続く。開始から3分間に渡り得点が生まれなかったが、残り2分でハーデンのドライブからフリーになったパトリック・べバリーの3ポイントシュートで試合が動き出し、ここからリードチェンジを繰り返す展開に。

ハーデンのパスをジノビリがカットして攻撃機会を得たスパーズは、ラマーカス・オルドリッジがポストプレーからリングにアタックすると見せかけてジノビリにパス、そのジノビリもアタックと見せかけてキックアウト、正面でフリーになったグリーンが3ポイントシュートを決めて106-104とリードを奪う。

この時点で残り56秒。だがここからが長い試合だった。じっくり攻めるだろうというスパーズの予測をハーデンに覆され、右コーナーでフリーになったライアン・アンダーソンに3ポイントシュートを決められる。それでも直後にグリーンが強引なアタックから3点プレーとなるバスケット・カウントを決めて109-107、再びリードを奪った。

残り30秒、スパーズはハーデンのピック&ロールをスイッチで対応しズレを作らせず、エリック・ゴードンに何の工夫もない遠目からの3ポイントシュートを打たせ、これを外させる。時間のないロケッツはリバウンドを拾ったグリーンにファウルゲームを仕掛ける。グリーンはフリースローを1つ落とし110-107、1ポゼッション差でロケッツに可能性を残してしまった。

残り9秒、ルーズボールに飛び付いたミルズとエリック・ゴードンのジャンプボールからの再開。ゴードンが意地でつないだボールを託されたのは、もちろんジェームズ・ハーデン。時間がない中、ハーデンは鋭いステップでジノビリをかわして最後の3ポイントシュートを狙ったのだが、抜かれたはずのジノビリが背後から跳んで懸命に手を伸ばし、リリースの瞬間にボールを叩き落とした。この瞬間にタイムアップとなった。

ジノビリのリスキーなブロックショット、劇的な幕引き

ジノビリは試合を終わらせたブロックをこう説明する。「自分でも予想していなかったプレー。近くにいた自分が、ハーデンに対してハードなディフェンスをした。リスキーだったけど、あのまま打たせるのもリスキーだったから、自分にできることをしたんだ」。そして「今日のようなプレーをプレーオフの試合でやれるとは思ってもいなかった」と、自身のビッグプレーに酔いしれた。

ケガをした後もプレーを続けたが、延長戦はベンチから見守ったレナードは「オーバータイムにチームメートがハードにプレーして勝負を決めてくれた。フラストレーションも溜まったけれど、勝ってくれて良かった」と喜ぶ。右足の具合については「少し痛みがある。でも第6戦には出場できるようになるさ」と語った。

レナードは22得点15リバウンド2スティール2ブロックと、攻守に存在感を示した。その彼が交代を余儀なくされたアクシデントが、逆にコートに立つ5人の結束を高めたと言える。

ロケッツはハーデンが33得点10リバウンド10アシストのトリプル・ダブルを記録するも、スパーズの総数を上回る9ターンオーバーを犯し、チームを勝利に導くことができなかった。

スパーズは対戦成績を3勝2敗とし、カンファレンス決勝進出に王手をかけた。トニー・パーカーを失い、レナード抜きで延長戦を勝ちきったことは自信になる。第6戦は戦いの場をロケッツのホーム、トヨタ・センターに移して行われる。