佐々宜央

佐々宜央にとって琉球ゴールデンキングスを率いる2年目のシーズンは、王者アルバルク東京相手にGAME3まで持ち込んだセミファイナルでの敗退で終わった。主力に故障者が相次ぐなど多くの浮き沈みを経験したシーズンを、セミファイナルGAME3を終えたばかりの佐々に振り返ってもらった。

「誤魔化しの効かない相手に、現実を突きつけられた」

──まずはA東京に敗れたセミファイナルを振り返っていただけますか。

こちらはシーズン中に選手が変わったこともあり、プレーの成熟度でA東京はより徹底ができていて、引き出しがあるチームでした。こちらは誤魔化しながら戦ってきたところがあります。それが誤魔化しの効かない指導者、選手たちを相手にしたことで、現実を突きつけられた。やっぱりまだまだ甘い部分もありました。それでも戦えたところはありましたけど、やっぱりチームの積み重ね、コーチの経験の差が出たと思います。

GAME3を終えて、ターンオーバーとイージーなシュートミスが結構多かったです。そこの精度が最終的な差となりました。こちらもGAME3で72失点に抑えていますけど、それでもレイアップなどゴール下でイージーシュートを決められている場面が多いです。そこの質の部分でまだ詰め切れていないところに自分の不甲斐なさがあります。今、後悔してもしょうがないと感じるところもありますが、1シーズンを通してそこまで質を上げられなかった部分の残念さはあります。

──昨シーズンと同じセミファイナル敗退に終わりましたが、どんな違いがありますか。

ホームとアウェーで戦うのでは全然違いますね。昨シーズンと同じセミファイナルで負けてしまって、僕自身あまり大きなことは言えないです。ただ、昨シーズンとは違うものは感じました。去年のセミファイナル(vs千葉ジェッツ)は、レギュラーシーズン終盤に船橋アリーナで連敗していて、勝てるイメージがちょっと沸かなかったです。2試合目はクロースゲームで負けましたが、まだ千葉は余力を残している。惜しいようで惜しくなかった試合でした。

それが、今年はA東京さんとホームで戦えたこともあり、1勝1敗でGAME3に持ち込むことができました。ただ、そこでA東京さんのエンジンの掛け方はもう一段階上がりました。そこに対して第1クォーターは戦えたけど、1試合を通してはできなかった。

ホームで惜しかったという結果とは全く思っていません。昨シーズンより進歩したかと言われると、こういうチームに本気を出させたぐらい。トップチームの本気に対してしっかり戦えるようになるにはまだまだ足りない。ただ、この経験でチームはステップアップできます。

佐々宜央

「続けることの大事さをこの1年間でさらに認識できた」

──今シーズンの琉球では、並里成、岸本隆一、橋本竜馬と3人のポイントガードをどのように起用するのが注目されました。この戦力を使いこなせた感覚はありますか。

これは積み重ねが大事だと思います。竜馬とは代表で一緒にやっていますが、レギュラーシーズンでは初めてでした。並里も初めてで、岸本は2年目。彼らの良さっていうのをどうやって出していくのか。本当にいろいろと考えた1年でした。ただ、3人の良さをしっかり出せたかと言えば尻すぼみで、正直に言って微妙なところはあります。

そこは自分の至らなさと、1シーズンだけでうまい使い方を見つけだすにはどうにもならない現実もありました。ガード論としては、ゲームメークは竜馬が引っ張ってくれました。チャンピオンシップでは誰が見ても竜馬がゲームをコントロールしていました。岸本は2年目なので、僕もやりたいことを理解できる感覚はあったと思います。並里は、本当に今回は一緒にプレーする初めてのシーズンで、波長をうまく合わせきれなかった。彼がもうちょっと良いパフォーマンスを出せるようにさせてあげたかった思いがあります。

──佐々さん自身、キングスでの2年目で昨シーズンと比べての変化は感じますか?

メンタルについては耐えてきた時期があって、タフになったと思います。シーズン途中に連敗が続いて、これで負けたら終わりじゃないかという気持ちになった時もあります。本当にギリギリのところまで自分の中で追い詰められましたが、選手が奮起してくれたおかげで折れずにやってこられました。そういったところで続けることの大事さをこの1年間でさらに認識できました。辞めるのは簡単ですが、選手に助けてもらって耐えることができました。

コーチとしてのスキル的な部分では、ああすれば良かったという積み重ねがずっとあります。これをどんどん経験していくことが自分の実になる。だからこそ、良い意味でまだまだだと思います。引き出しをどのタイミングで出すか、やるべきことをどれだけ徹底できるか。そういった部分を試合を重ねることでどんどん理解していけると感じます。

この仕事は最初の10年くらいはルーキーなんじゃないかとそういう感覚があります。だから、ヘッドコーチ2年目の自分の悩みなんて、20年くらいやっている人にしてみたら笑われることかもしれないですね。

──この2シーズンで『佐々宜央のチームのスタイル』は確立されたと感じますか?

周りからは「点の取れないコーチ」と見られているかと思います(笑)。それは嫌なイメージですけど、悪いところで言ったらそんな感じでしょうね。自分の中でもそこは本当に課題だと思います。もっとオフェンスを流動的にしていくために、そこは自分でも成長しなければいけないと感じています。

ただ、「なんて泥臭いディフェンスするんだ」とも思われているかと。ルーズボール、リバウンドでは負けたくない。どちらかと言うと、ディフェンシブなイメージでは良い感じに見られていたいです。しかし、オフェンスの部分はターンオーバーなど、そこは本当に自分の課題です。

佐々宜央

「選手が最後まで力を振り絞ってくれた満足度はある」

──純粋に得点を増やすなら、個人技に優れた外国籍選手を取ればすぐに解決できるかもしれません。ただ、キングスはそれこそチャンスメークの役割を日本人選手に託している、Bリーグの中でも少数派のチームです。

個で得点できる外国籍選手を取るのも一つの手法ですよね。でも、そういう選手がキングスに来たとしても、やはりバスケットボールは5人でやるもので、スペーシングとかが大事になってきます。そういう選手が加入したら少しは変わってくると思いますけど、すぐ平均80点台になる感覚は自分の中にはありません。

やはり自分の中でまだ見えていない部分がある。もっとオフェンスを軽くしないといけない。自分のバスケットボールは、なんか重いんです。スキルのある選手を取るというより、このレベルにきたら個人の技術は必要ですけど、それ以上にチーム戦術、チーム戦略の練習の組み立てとか、選手をより生かし切ることが自分には大切だと思っています。そこの部分は、このオフシーズンでいろんなバスケットを見て、自分の中で成長していきたい気持ちがあります。

──今シーズンの結果に対して、悔しさ100パーセントなのか、それとも半分はやり切った感覚があるのか、どういう思いですか。

やっぱり悔しいは悔しいです。例えばBリーグ1年目の決勝カードは栃木と川崎でしたが、両チームともその後の2年間で決勝には行けていない。このように同じ成績を残すのは簡単ではないです。故障者とか、いつ何が起こるのか分からないですし、チャンピオンシップに出場し続けられる保証もありません。ファイナルに行けるチャンスがいつ来るのかは本当に分からない。だからこそ、今年が最後のチャンスになるぐらいの気持ちでやっています。

その意味でも非常に悔しく、せっかくのチャンスをモノにできなかった気持ちは強いです。ただ一方で、一時期はケガ人が続出してチャンピオンシップに行けないと思ったことを考えると、自分のコーチングに対する満足度はあまりないですが、選手が最後まで力を振り絞ってくれた満足度はあります。本当によく耐えてくれましたし、最後の試合も点差が離れていても戦い抜いてくれたのは良かったです。

──琉球はBリーグの中でも個性が強い、特別なアイデンティティを持ったチームです。そんなチームを率いての2年目で、新たな発見はありましたか?

昨シーズンも非常に熱い応援をいただきました。ただ、いろいろと体制が変わり、沖縄出身の選手も少なくなってきている中で、応援されるチームを作れているのか不安もありました。そこで沖縄の皆さんに応援される、認めてもらえるように頑張らなければと思ってやってきました。自分も沖縄魂を持って戦っている、そのことを表現したいとやってきました。

そして2年目、クォーターファイナル、セミファイナルの大きな声援を見れば、皆さんに受け入れていただけたのは十分に分かります。このように応援してもらえるのはうれしいです。2年目を終えて、チームの積み重ねの大切さをより感じました。そして、ヘッドコーチとファンの皆さんの関係も年月を費やしていくことで深まる絆がある。それを感じることができる幸せな環境でやらせてもらえたのはありがたいことです。