文=丸山素行 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

城宝とヴァイニーを欠く状況でより積極的にプレー

昨夜、富山グラウジーズは川崎ブレイブサンダースを相手に見事な逆転勝利を挙げた。西地区の6位チームがリーグ首位を倒したのだから『金星』と言っていいだろう。その上、富山は得点源の城宝匡史とドリュー・ヴァイニーをケガで欠く状況での勝利なのだから、その意味合いはさらに大きい。

富山のガード、岡田優は「相手は強いし、ウチの状況も悪いです。それでも勝ちにいくつもりで挑みました」とこの試合に懸けた意気込みを語った。

スコアラー不在が積極性となり、岡田はシーズンハイの24得点を挙げた。それでも個人の力でなくチームオフェンスの結果だと言う。「積極的に点を取りに行こうとは思ってはいましたけど、チームで自分を生かしてもらって、自分がフィニッシュにいく状況を作ってくれたのでこういうスコアになりました」

第1クォーターで8-16とリードを許した場面で岡田は2本連続の3ポイントシュートを沈めた。ここで踏ん張ったことが、その後の富山の逆転劇を呼ぶきっかけだった。

「1本目は外したんですけど、入ったとは思ったので、今日はいい感じかなと思いました。2本目を打てば入ると思ったので立て続けに打ちました」と岡田は言う。

時計が進むにつれ岡田の落ち着きは際立っていた。ショットクロックギリギリでボールが回ってくる場面が増え、タッチの良さもあり3ポイントシュートを打つ心理が働くかと思うが、ワンフェイクを入れてディフェンスをかわしノーマークでジャンプショットを沈め続けた。「シュートは水物なので、やっぱり2点とかドライブの意識があったので後半は打たなかったんです。状況によって良い判断ができたと思います」

「自分の課題として良い判断をすることを掲げているんですけど、もうちょっとシュートにいっていい部分も振り返ればあったと思いますし、なんで打たないんだと言われたところもありました」と、その判断にしてもベストではなかったと語る。

岡田「この勝ちを大きいものにするために」

大事な場面やビッグショットが決まった時に喜びを表現する選手は少なくない。だが岡田は終始表情を変えなかった。「自分がスコアしたことに関しては特に何も反応しないんですけど、本当に今日は冷静に集中してリングだけ見てやれたと思います」。この高い集中力によって精密機械のように淡々とボールをリングに運び続けたこととなった。

川崎を破った直後でも、岡田に浮かれた素振りは見られなかった。「自分たちが80点以上取って、しっかり守ったら勝てるというのは証明できたと思います。今日の勝ちがこれからどう影響するか分からないですけど、この勝ちを大きいものにするためにもこれからが大事です」

富山はここ10試合で6勝4敗と勝ち越し、調子を上げているが、『これからが大事』というように残留プレーオフ回避へ厳しい戦いはまだ続いている。B1に残留し、川崎からの勝利が本当に意味のあるものだったと笑えるようになるためにも、岡田の活躍は欠かせない。