指揮官マローンは批判に苦言「完璧な選手などいない」
2シーズン前のプレーオフで、ジャマール・マレーはフィールドゴール成功率47.3%、3ポイントシュート成功率39.6%の平均26.1得点、さらに数字には表れないニコラ・ヨキッチとの息の合った連携、クラッチタイムでの抜群の勝負強さを遺憾なく発揮し、ナゲッツにNBA優勝をもたらす原動力となった。
しかし、その前のシーズンを全休した原因である膝の大ケガの影響は消えず、かつてのようなハードワークができなくなっている。今シーズンここまでほぼコンスタントに出場を続けているが、平均得点は20を割り込んでいる。マレーは昨年9月に4年2億800万ドル(約310億円)のマックス額で契約を延長したばかり。高額契約を結びながら調子が上がらないことで、大きな批判を浴びてきた。
1月は17試合が組まれている過密日程で、コンディションを気に掛けながらプレーする必要がある。現地1月10日のネッツ戦では膝に痛みが出たため後半のプレーを取り止め、12日のマーベリックス戦でも17得点を挙げたものの動きは重く、指揮官マイケル・マローンは「膝が万全ではなく、後半は休ませようかとも考えた」と明かしている。
だがその2日後のマブス戦、試合前に「だいぶ状態は良くなった。今日は良いプレーができる気がする」と語っていたマレーが久々の『大爆発』を見せた。フィールドゴール26本中18本成功の45得点。最初のシュートこそ落としたものの、そこから3ポイントシュートを3本連続で沈め、相手を引き付けてのアシストも冴えた。
本来ならナゲッツはマレーとヨキッチのどちらかが常にコートに残ってオフェンスを引っ張るので、マレーは第1クォーター途中で一度ベンチに下がる。しかし、3本目の3ポイントシュートを決めた時にマレーは指揮官マローンに「下げないでくれ」と依頼した。結果、第1クォーターをフル出場したマレーは19得点3アシストを記録。第2クォーターも13得点と、その勢いは止まらない。
自分のリズムでボールを受け取れば、目の前にディフェンスがいても迷わず打ち切る。ヨキッチとのピック&ロールを始めとする連携はスムーズに流れ、2人だけでイージーシュートのチャンスを作り出す。完全にリズムに乗ったマレーは止めようがない。カイリー・アービングは溜め息をついた。「第1クォーターであれだけ乗せてしまったら、30点や40点を奪われても不思議じゃない。偉大な選手に偉大なプレーを許してしまった」
相棒のヨキッチは10得点14リバウンド10アシストと、『控えめな』トリプル・ダブルを記録。彼は試合開始から10分間シュートを打っていない。マレーが当たっていればヨキッチが無理をする必要はない。今シーズン序盤にヨキッチがすさまじいスタッツを叩き出していた時期、ナゲッツはチームとして機能していたわけではなかった。マレーが得点を引っ張り、ヨキッチが余裕十分でプレーを楽しめている時こそ、ナゲッツは強さを発揮する。この試合は、久々にそんなナゲッツの手の付けられない強さが見られた。
そのマレーは試合後、「ゾーンに入っていたね」と高揚した表情を見せた。「僕がゾーンに入っていることをチームメートも理解して、どんどんボールを回してくれた。プレー全体に活気があって、それが自然に僕のところに集まってきた。僕はその流れに身を任せて、思うままにプレーしただけなんだ。外したシュートもあったし、ミスもあったけど、気にせず次のプレーへと移った。良いプレーが出るとモチベーションが上がり、それが次の良いプレーを生む。そんな好循環が生まれていたように思う」
マレーがこれだけのパフォーマンスを見せた時だからこそ、指揮官マローンは「みんなジャマールに対して厳しすぎる」と、普段から彼に向けられている批判に対して苦言を呈した。
「彼は完璧な選手ではないが、完璧な選手などいない。彼に5200万ドル(約78億円)の年俸を払うのは、その価値があると分かっているからだ。彼の活躍を総合的に見ると、このチームにとって非常に有益なものだ。私は彼を信じてきたし、これからも信じる。今日のようなプレーが見られてホッとしたし、チームメートが彼の活躍に大喜びしている様子を見るのはうれしかった。ジャマールに知ってもらいたいのは、このチームの全員が彼を支え、彼とともに歩んでいくということだ」
これでナゲッツは直近の10試合で8勝2敗と調子を上げており、西カンファレンスの上位争いへと食い込んできた。