福岡大学附属大濠は「日本一」から3年間遠ざかっており、今は優勝を経験した選手が一人もいない。その大濠で1年の頃から中心選手として活躍し、世代別代表だけでなくA代表の合宿に招集されるなど個人としても大きな飛躍を遂げている渡邉伶音選手に、成長の軌跡と高校バスケ総決算となるウインターカップへの決意を聞いた。
「自分の身体を理解し上手く使えるようになってきた」
──大濠に入学することを決めた理由から教えてください。
小さい頃から高校バスケの試合を見ていて、大濠の選手たちが留学生に対してもアタックし、3ポイントシュートもしっかり決める姿、個人の能力が高いだけでなく組織としてもすごく良いチームで、とてもカッコ良く見えました。中学1年生でウインターカップを見に行って、大濠の応援席の後ろで観戦した時に「絶対にここでプレーしたい!」と思いました。
──この3年間を振り返って、一番成長したと感じる部分は?
自分の身体をしっかり使えるようになったことです。中学時代から外のプレーを少し教わっていましたが、高校のバスケに慣れるのには時間がかかりました。まだ完璧ではないですが、今では自分の身体を理解し、上手く使えるようになってきたと感じています。
──順調にキャリアを高めているように見えますが、辛かった経験はありますか。
新チームが始まったばかりの頃は、練習試合でインサイドのプレーにミスが続いてしまいコーチに厳しい指摘を受けたことがあります。その瞬間は悔しかったですが「川島悠翔選手が抜けたからインサイドが手薄だと思われたくない」と言われたことが強く印象に残っています。それがきっかけで、インサイドの力をつけようと頑張りました。
──最近の調子はどうですか。
U18日清食品トップリーグが終わり、日本代表の活動も一段落して、残すところはウインターカップだけです。しっかりと準備を進めています。
「オフェンスとディフェンスの両方で任せてもらえる選手に」
──去年のウインターカップでは準優勝に終わりました。
去年の前半は経験も浅く、なかなか結果も出ずに苦しい思いをすることが多くありました。福岡県予選で福岡第一に勝ってから良い準備ができ、トップリーグでも各県の代表チームにすごく良い試合ができて良い雰囲気で大会に臨めたので、山場となった美濃加茂との準決勝も、しっかり勝ち切って決勝まで行けたことは良かったです。
ただ、僕は留学生とマッチアップすることが多く、最後は足が全く動かなくなってしまいました。特に福岡第一との決勝戦では相手に自分のプレーを読まれてしまい、自分がやりたかったプレーをさせてもらえず、とても悔しかったです。
──今年のインターハイは、準決勝で美濃加茂に敗れました。その時の心境は?
僕たちにとって初めてのインターハイでしたし、優勝するつもりで臨みました。特に今年は「大濠は優勝して当たり前」という声が多かったですが、チームとしては挑戦者の気持ちでインターハイに臨みました。ただ、夏の時期にトーナメントを戦うのは初めての経験でしたし、僕自身も大会の直前までU22日本代表でジョーンズカップに出場していたので、チームを仕上げるのに1週間くらいしか時間がなくて、去年のウインターカップから成長を感じられない不安があったのも事実です。その中で、美濃加茂はチームとしての完成度が素晴らしく、僕が留学生を1人で止められなかったことで、外へのキックアウトからのシュートが次々と決まりました。地元開催の大会だったこともあって、福岡の皆さんに優勝を届けられなかったことが本当に悔しかったです。
インターハイを経て、もっと自分でオフェンスを仕掛ける力、ディフェンスでも1人で相手を止められる力が必要だと感じましたし、オフェンスとディフェンスの両方で任せてもらえる選手にならなければならないと強く思いました。
──プロチームのライジングゼファー福岡に特別指定選手として入団した時期もありました。どうでしたか。
高校2年生で未熟な僕を特別指定選手としてチームに入れてくれたことにすごく感謝してます。少しはやれる部分もあると思っていましたが、想像以上にレベルが高く、毎日の練習が学びの連続でした。特に外国籍選手とのマッチアップでは、フィジカルやスキルの違いを痛感し、バスケに対する理解が深まり、フィジカルに対する意識も高まりました。
ライジングと大濠、日本代表チームの3つを掛け持ちするのは難しい部分もありました。それぞれのチームで求められる役割が全く違うので、どの環境でも自分に求められるプレーをすることはとても重要だと感じましたし、将来の大きな糧になると思います。
──U19日本代表の活動についても聞かせてください。
日本代表では大濠のバスケと全然違うものを求められたので、その違いに悩むことがありました。大濠では自分の判断で強引に行ける場面もありますが、代表ではすべてがチームプレーなので「もっと自分で行きたい」という気持ちとの葛藤もありながプレーをしていたので、U19ワールドカップの権利は獲得できなかったことは、すごく悔しかったです。
代表の活動から帰ってきてすぐに片峯コーチと「シュートのアテンプトを増やしていきたい」という話をして、中から外の流れでは絶対スリーポイントを打ち、多少強引であってもペイントを取りに行くように意識して練習をしたので、トップリーグの八王子学園八王子、京都精華学園の節で平均20得点を取るプレーができたことは、自分大きく成長できたところです。
「去年届かなかったあの頂点を絶対に取りに行く」
──チームを引っ張る立場としての責任感をどう感じていますか?
片峯コーチからも「求心力のある選手にならなければならない」とよく言われます。僕が外のプレーをできるのは、自分よりサイズが小さいチームメートがインサイドで頑張ってくれてるおかげですし、みんなが自分にパスをさばいてくれるからです。その責任は大きいですし「伶音に渡せば大丈夫」と思ってもらうためには試合だけでなく練習でもお手本となる存在にならなくてはいけません。
以前は「プレーで見せつける」ことしか考えてなかったり、「リバウンドやゴール下だけを全うすればいい」という気持ちが大きかったですが、今は練習や試合でもリーダーシップを発揮し、練習中も頼られる存在になって、チーム全体を支えたいと思っています。
──最後のウインターカップに臨む心境を教えてください。
とにかく優勝したいという気持ちが強いです。今の大濠にはJr.ウィンターカップや全中を含めても優勝を経験したことのある選手が誰もいません。その中で1年生の時から「絶対優勝しよう」とずっと励まし合ってきました。今回のウインターカップはその集大成です。1、2年生も頼れる存在がたくさんいるので、「日本一」の景色を見たことのないメンバーと、去年届かなかった頂点を自分たちが取りに行くと信じて、最後の追い込みをかけています。
──最後に、応援してくれるファンへのメッセージをお願いします。
インターハイでは優勝を届けられなかったので、ウインターカップでその悔しさを晴らし、3年間の集大成として皆さんに優勝を届けたいです。泥臭いプレーを見せて、最後まで自分たちの力を振り絞って全力で戦いますので、応援よろしくお願いします。