田口成浩

文=佐保めぐみ 写真=B.LEAGUE

「いずれチャンスは来ると自分でも思っていました」

4月10日、千葉ジェッツは秋田ノーザンハピネッツに91-62で勝利した。前半は得点が伸び悩んだが、オフェンスにリズムが生まれるまでハードなディフェンスを徹底したことが勝因となった。そのディフェンス面で輝きを放っていたのが田口成浩だ。マークマンに簡単にはボールを持たせず、ボールを持てば自由にパスを出させない激しい守備を見せた。

「先週のアウェーの秋田戦では、ディフェンスの激しさが全然なくて、相手の激しさに負けたところからスタートして最後までもつれる展開となった」と、勝ったものの大苦戦を強いられた前回の試合を振り返る。

「自分たちの強い気持ちを持ってハードにプレーすれば、こういう点差ができると証明できた」と言うように、失点を前回の83から62へと減らした。前回はジャスティン・キーナンに44点、白濱僚祐に14点も取られたところを、今回は両者とも10点以内に抑えている。

オフェンスでもチームに勢いを与える仕事を田口はやってのけた。第3クォーター残り時間1分25秒で決めた3ポイントシュートに会場は大盛り上がり。さらに残り時間5秒の時に富樫勇樹からパスを受けて再び3ポイントシュートを決めると、会場はこの日一番の大歓声で盛り上がった。

そこまでは無得点が続いていたが、それだけに田口にとっても気持ちの良い連続得点となった。「いずれ時は来るというか、チャンスは来ると自分でも思っていました。チームメートもノーマークを見つけてパスしてくれましたし、その流れで連続で決められたのがすごい気持ち良かったです」

田口成浩

明日からA東京戦「真っ向からぶつかって、全力で」

秋田戦での田口はいつも以上に気迫のこもったプレーをしているように感じる。昨シーズンまでは主将としてチームを牽引した古巣への思いは、やはり別格だ。

「自分の古巣、しかも地元ということで、自分も必死にこの千葉でやっているんだぞと。千葉に来て試合に出れなくて、全然できないっていう姿を見せることによって、何してんだと言われるのもあれですので。その気持ちが自分のシュートを思いっきり打つことだったり、激しいディフェンスに繋がると思います」

チームの象徴だった自分が移籍を選択したことを快く思っていないファンも少なくない。それも覚悟して田口は千葉を選んだ。苦難の道であることは承知の上。だからこそ、秋田のファンの前で不甲斐ない姿は見せられない。それが彼にとって『強い気持ち』の原動力の一つとなる。

レギュラーシーズンでは4試合を残し、千葉は全体勝率1位をキープしている。それでも今週末にはアルバルク東京との連戦が控えており、全体勝率1位の座を守り切るためにも、チャンピオンシップに向けて苦手意識を作らないためにも、内容も結果も求められる試合となる。田口は「まずはこの土日、タフだと思いますけれども、それは相手も同じなので真っ向からぶつかって、全力でいきたい」と力強く語った。

千葉に加入して田口はベンチスタートへと役割を変え、悪い流れであればそれを断ち切り、良い流れであればさらに勢いを与えるプレーが求められている。プレータイムが伸びずに悩む時期もあったが、どんな試合状況でもコートに入ればすぐに100%の全力プレーを出せるようになった。スタッツに残らないディフェンスでチームにエナジーを与え、3ポイントシュートで勢いに乗せる。千葉ジェッツのスタイルに順応した田口は、レギュラーシーズンの最後の山場である明日からのA東京戦、そしてチャンピオンシップでどんなプレーを見せてくれるのだろうか。