ベン・シモンズ

「身体に問題がなければ自信を持ってプレーできる」

ネッツの再建はまだスタートしたばかり。5シーズン連続でプレーオフに進出した後、昨シーズンは32勝50敗に沈み、オフにはミカル・ブリッジズを放出。これまでのトレードで手放した自前の指名権を取り戻す動きは、少なくとも当面の間は下位に低迷するとクラブ自身が判断したことを意味する。

新たなシーズンを迎えるにあたっても評価は低く、各種ベッティングサイトではレギュラーシーズンで19勝ないしは20勝しか挙げられないと予想されている。ライバルのニックスが優勝候補として注目を集めるのとは対照的に、ネッツはほとんど話題にならない。

その数少ない話題の一つがベン・シモンズの復帰だ。腰と膝のケガに長く苦しんでいる彼は、ジェームズ・ハーデンとのトレードでネッツに加入してからの2シーズンで57試合にしか出場していない。昨シーズンはケガが治ったはずが開幕から半月で戦線離脱。2か月後に復帰するも、1か月ももたずにシーズン終了となった。

プレーできている間のパフォーマンスも低調で、昨シーズンは23.9分のプレーで6.1得点、7.9リバウンド、5.7アシストを記録したが、フィールドゴール成功率は58.1%と伸び悩み、フリースロー成功率は40.0%と壊滅的な数字。3ポイントシュートは1本も打つことがなかった。「ケガが治った」、「ジャンプシュートが入るようになった」という動画が出回るのは毎年夏の恒例行事。しかし、開幕すると自信なさげに放つジャンプシュートは相変わらず決まらないし、すぐにケガをする。

そんなことを繰り返しているにもかかわらず、シクサーズ時代に結んだ5年1億7700万ドル(約270億円)の高額年俸が残っており、契約最終年となる今シーズンの年俸4000万ドル(約60億円)はネッツでは飛び抜けて高い。それでコート上での活躍がほとんど見られないのだから、批判の声が渦を巻くのも無理はない。

それでも彼は、前向きな気持ちでネッツのトレーニングキャンプに参加している。「半年前の手術からマイアミでリハビリをしていて、プレーの許可が下りてブルックリンに戻って来た。すべてが思い通りに行ったわけじゃないけど、前回の手術からコンディションが後退することなくここまで来ている。身体に問題がなければ自信を持ってプレーできる。今がまさにそういう状態で、あとは試合でプレーするだけだと感じている」

彼は賢明にもニュースやSNSから距離を置いており、自身への批判については「全く知らない」と言う。「誰かが何かを言っているとしても、それは彼らが知らないことや理解できないことについて、あるいは彼らが持っている限定的な情報についての言葉だろう。僕はそういった話に気を取られることなくリハビリに集中した。優先すべきは身体を鍛え、プレーすることだ」

現地10月8日にはクリッパーズとのプレシーズンゲームで実戦復帰を果たした。先発出場で13分間プレー。ニコラス・クラクストンが欠場したため、シモンズはポイントガードではなくビッグマンとしてプレーしたが、それができる万能性は彼のオンリーワンとも言うべき特長だ。それでも新ヘッドコーチのジョルディ・フェルナンデスは、あくまでシモンズをガードとして使う構想を持っている。

「ポイントガード、ポイントフォワード、ビッグガード、何と呼ばれてもいいけど、自分はペースを重視してプレーするガードだと思っている。今シーズンのチームはKD(ケビン・デュラント)やカイリー(アービング)がいるわけじゃないから、アイソレーションで攻める機会は少ない。ペースを重視して、お互いに助け合ってケミストリーを生み出していく」とシモンズは言う。

再建中のネッツに対する過小評価についてもシモンズは意に介していない。「日々集中し、上達することだけを考えたい。この段階で最終的なゴールを意識すると、集中が乱れてしまう。勝ち負けはその日に結果が出るけど、日々上達できたか分かるには時間がかかる。とにかく日々に集中するんだ」

彼自身は次の契約を勝ち取るための戦いに身を置いており、今シーズンもケガでプレーできない、まともにシュートを決められない醜態を晒せば、もう彼にオファーしようというチームは出てこなくなる。だが、それも彼にとってはスルーすべき『雑音』に過ぎない。「僕にとって大事なのは健康であること。自分の身体から最大限の力を引き出し、高いレベルでプレーすることだ。お金のことは気にせず、ただ健康でプレーしたい。僕は自分がそんなにダメなバスケ選手だとは思っていない。僕はバスケをやるのが大好きだから、今シーズンはプレーに打ち込みたいんだ」