文・写真=鈴木栄一

「自分のプレーに関してはひどい内容で残念でした」

3月10日、川崎ブレイブサンダースは京都ハンナリーズを相手に、第4クォーターに入って相手の追い上げを食らいながら83-80で逃げ切り、勝利を収めた。この試合、川崎の一つの勝因となったのは、ともに1点リードで迎えた残り12秒、そして残り3秒の場面で、辻直人がしっかりフリースローを2本連続で決めたことだった。

年明けから腰痛による欠場が重なっていた辻にとって、今日は2月4日の琉球ゴールデンキングス戦以来となる久しぶりのホームゲーム。そこで勝利に直結するフリースローを確実に決めており、「前節の復帰から状態は上向きになっているでは?」というこちらの問いに対し、本人は自らに厳しい評価を下している。

もともと、前日に熱が出たことで試合に出られるのか心配していたというコンディションだったことを考慮しても満足には程遠い。「久しぶりにホームゲームに帰ってこられたので、盛大に気持ち良く試合を終えたかったのですが、自分のプレーに関してはひどい内容で残念でした。腰が万全はなく、自分の意識に身体がまだ追いついていない。意識ではパスを出そうとしても身体が反応していない状況で、今日も大事なところでターンオーバーをしていました」と振り返る。

また、試合後に北卓也ヘッドコーチが、「今日は第4クォーターでどんな展開になろうとも辻を最後まで起用していようと考えていました」と語ったように、勝負の第4クォーターで10分間フル出場。そこで冒頭で触れたように、大事なフリースローをしっかり決める勝負強さは健在であることを示したが、その働きについても「特に手応えはないです。それより、まだ身体がついていっていないことへのショックといった面が多かったです」と語る。

プレーオフまで「まだ20試合」ではなく「もう20試合」

やはり痛感しているのはゲーム感が戻っていないことだ。「ちょっとはプレーしましたが、それは復帰したうちに入らないので、オールジャパンの後2カ月間、まともにプレーしていませんでした。バスケの練習自体も2週間はやっていない状況ですし、(ゲーム感が戻るのには)まだ時間がかかると思いますが、焦りはあります」

レギュラーシーズンも終盤となり、各チームは残りあと20試合を切っている。特に川崎のような上位チームの場合、プレーオフを見据えての戦いがより現実的になってくる。それだけに辻にとって、プレーオフまで「まだ20試合」ではなく「もう20試合」という危機感は強い。

自身が離脱している間も順調に勝ち星を積み重ねてきたチームメートに対しては「みんなすごい攻め気がありますし、自分の関係ないところでもシュートが成立します」と頼もしさを感じている。ただ、同時に「自分は今日もシュートをもっと打っていいはずなのに、シュートに持っていけないのが悔しかったです。また、チームが今まで来た流れを自分が復帰してすぐに崩したくないと、遠慮している部分は少しあります。ただ、もっと自分がボールをさわって味方に気持ちよくシュートを打たせることが、自分がやってきたプレーなのに、今はそれができていないです」と自身についてはもどかしさを一番に感じている。

「僕は積み重ねていってのプレーヤーだと思います」

現在のコンディションについては、「痛みが完全に取れてからプレーすることも一つの選択肢です。だた、いつになったら完全に痛みが取れるのかは分からない。プレーを続けながら治していき、腰の痛みをカバーできる身体のバランス、筋力を整えないといけないと思います」と、痛みを抱えながらのプレーになっている。

ただ、この選択を取った背景には、以下のような考えがあるからだ。「2カ月離れているだけでこんなにも感覚が狂っているので、(痛みがなくなるまで待ち)プレーオフにぶっつけ本番は大変なこと。僕は休んでいて急に動けてと言われ、すぐにできるタイプではないです。積み重ねていってのプレーヤーだと思います。痛みはありますが、できない痛みではない。プレータイムを重ねることで感覚は戻ってくるので、どれだけプレーできるのか時間も大事だと思います」

川崎は、17日、18日とホームで強豪シーホース三河と対決する。昨シーズンのNBLファイナルで激闘を繰り広げた相手との再戦は大きな注目を集めるも、辻も「もう、プレーオフが近づいてくるので、今、できることを三河戦で見つけるチャンス。そこから得たものをプレーオフにつなげていきたいです」とかなり重要視している。