ザイオン・ウイリアムソン

オフボールでオフェンスに絡めず、良さを引き出せず

1年前のオフ、ペリカンズはケガによる欠場を繰り返していたザイオン・ウイリアムソンをトレードする噂がありました。鳴り物入りでデビューした2019年のドラフト1位は、信じられないパワーとスピードを誇る一方で、それに自身の肉体が耐えられないことで4シーズンで114試合しか出場できていませんでした。

しかし、5年目の昨シーズンはキャリアハイとなる70試合に出場し、ペリカンズの主役の座を取り戻す活躍を見せました。チームとしてもケガのリスクを下げるためか、シュート能力のあるウイングを揃えスペーシングを徹底するとともに、ザイオンに強引な突破をさせるのではなく、適切にパスを散らす形を作り上げました。その結果、ザイオンは22.9得点に加えてキャリアハイの5.0アシストを記録しています。

今オフにはダニエル・タイスを獲得しました。昨シーズンに加入したジェレマイア・ロビンソン・アールとともにスモールラインナップで起用しやすく、オフェンスではザイオンのアタック力を生かすためにインサイドを空け、ディフェンスではフィジカルな対応でセンター相手に戦えるビッグマンは、ザイオンの個性に適した相棒です。また懸念だったポイントガードにはデジャンテ・マレーを獲得し、プレーオフで勝てるチームへの進化を目指すシーズンとなります。

その一方でペリカンズにはブランドン・イングラムをトレードする噂も出ています。マレーが加わったことでハンドラー過多となっていること、ザイオンとイングラムを並べても相乗効果が生まれにくいこと、そして何よりイングラムの契約が来オフに切れるため、今のうちにトレードで対価を得ておきたいということから、トレードは現実味のある噂になっています。

この5シーズンの間、ペリカンズを引っ張ってきたのはイングラムでした。高い打点から放つジャンプシュートを武器に、平均得点はすべてのシーズンで20を超え、アシストでも貢献できます。ザイオンとイングラムは異なる持ち味のスコアラーだけに、チームに多様性をもたらすことが期待されてきましたが、ケガが多く連携が構築されないまま時間ばかりが過ぎていきました。

昨シーズンはようやく2人揃っての出場が増えましたが、2人が同時にコートに立つとオフェンスレーティングが落ちるという結果に。いずれもボールをもらってから考えて仕掛けるタイプなのでパス回しのテンポが悪く、何より3ポイントシュートのないザイオンとスクリーンや囮の動きに欠けるイングラムは、オフボールでオフェンスに絡んでお互いの持ち味を引き出すことができず、コンビとして厳しい数字に繋がっています。

1年前のザイオンのトレードから一転し、今度はイングラムにトレードの噂が出ているのは、このコンビが5年という月日に見合った連携を構築できていないことが原因であり、このまま信じ続けていいのか迷いがあるからです。若手からベテランまで充実したロスターを誇るペリカンズですが、チャンピオンリングを獲得するためにベストなロスターは何なのか。仮にイングラムのトレードが成立しても、特殊な選手であるザイオンに適したロスターを構築できるのかは不透明なだけに、勇気のいる決断になりそうです。