ケニー・アトキンソンが新たなオフェンスを導入
この3シーズンのキャブスはプレーイン・トーナメント、プレーオフのファーストラウンド、そしてセカンドラウンドと一歩ずつ階段を上って来ました。しかし、その結果を十分ととらえず、オフになるとヘッドコーチ交代に踏み切りました。新たな指揮官となるケニー・アトキンソンに求められるのはオフェンス面の改善です。
昨年オフはニックスとのインサイド対決で負けた反省からマックス・ストゥルースやジョージ・ニアンを補強し、またシーズン中にサム・メリルが頭角を表すなど、シューターの活用を推進しました。ハードなディフェンスからのトランジションが武器のチームに、ハーフコートでの得点力を加えることは、正しい方向性ではありました。
しかし、シューターは揃っていても、良いシュートシチュエーションを作ることができず、特にプレーオフではコーナーからの3ポイントシュートはアテンプト5.6本、成功率21%と散々な結果に終わりました。キャブスの課題は個人のシュート能力ではなく、ダリウス・ガーランドとドノバン・ミッチェルの個人突破に頼るオフェンスシステムにあったのです。
アトキンソンに期待されるのはガード陣の突破力だけでなく、シューターを活用したオフボールでのプレーパターンを作り上げること。ネッツ時代にはスクリーンを様々な形で配置してシューターをフリーにするプレーを多用し、無名だったジョー・ハリスをリーグ屈指のシューターとして輝かせた実績もあるだけに、チームオフェンスは大きく進化する可能性があります。
シューター陣はもちろん、ポイントガードのガーランドも小柄な特徴を生かしたオフボールムーブでディフェンスを振り切るのが上手く、シュート能力も高いだけに、ギブ&ゴーやハンドオフを利用したプレーパターンも増えていきそうです。ミッチェルがチームに加わってからは得点が減っていたガーランドですが、ガードコンビとしての機能性を高めるためにもオフボールでの得点パターンを増やしたいところです。
このオフェンスを機能させるキーマンはエバン・モーブリーになるでしょう。インサイドの起点役として巧みにパスで展開でき、運動量も豊富なモーブリーはシステムにフィットするタイプですが、唯一の懸念が3ポイントシュートに消極的なことです。シューターを活用するオフェンスはコートを広く使える必要があり、相棒のジャレット・アレンに3ポイントシュートは期待できないだけに、モーブリーが3ポイントシュートを決めきることが重要です。
ヘッドコーチ交代によりキャブスのオフェンスは、個人能力を生かす形からチームとしての組み立てを重視する形に大きく変化しそうです。論理だけで言えば適切な変化が起こりそうですが、多彩なプレーパターンで魅力的なオフェンスになるのか、それとも個人から自由が失われ不満の種になるのか、結果がどうなるのかは分かりません。いずれにしてもキャブスにとって変革の新シーズンとなりそうです。