崎濱秀斗

昨年末に福岡第一高校でウインターカップを制した崎濱秀斗が渡米し、3カ月が過ぎた。スラムダンク奨学生としてプレップスクールのセントトーマスモア・スクールに通いながらNCAAディビジョン1(D1)に所属する強豪大学への編入を目指している。シーズン前から同校のピックアップゲームも体験し、6月にはアディダスが主催するユーロキャンプにも参加。本場アメリカとヨーロッパで世界水準のバスケットに触れ、想定以上の刺激を受けている。

本場に圧倒される日々「時間はかかったけど信頼を得られた」

――卒業からこれまではどのように過ごされていたんですか?
中学生の頃からの夢だったアメリカでバスケットをすることがかなうので、渡米前はずっとワクワクしていました。友達ができるかなとか、英語で話せるかなという不安も少しありました。

コネチカット州にあるセントトーマスモアに行ってからの約2カ月間は学校に慣れる期間として、ピックアップゲームや個人練習などを毎日やっていました。1日目の練習でピックアップゲームに参加させてもらったのですが、ほとんどがD1に進む選手でした。ウォーミングアップからやばかったです。日本のプロでも見たことないようなダンクをする人や、全然身長が高くないのに、苦もなくレッグスルーダンクをする人、リングを壊す勢いのダンクを繰り返す人もいました。ファイブスター(NBAドラフト1巡目候補)の選手が2人いて、その1人はデューク大や地元のコネチカット大などのハイメジャー(強豪校)からオファーをもらっていました。プレーを間近で見て、「うわぁ、さすが。この人はNBAに行くだろうな」という存在でした。

――そういった選手とプレーして、どのようなことを感じましたか?
自分がどれだけ通用するだろうと思いながらプレーしました。初日は3ポイントシュートなどをたくさん決められて、いい感じでした。次の日にファイブスターの選手の動きを見て、いろいろ考えてしまったけど、みんなから「自信を持たないとここではやっていけない」と言われて、今は慣れました。チームメートからの信頼も得られました。時間はかかったけど、毎日が楽しくて良い練習ができているのでもう大丈夫です。

――英語でのコミュニケーションには苦労されていないですか?
チームメートはスペインや南アフリカ、ベトナム、韓国、中国などいろいろな国から来ていて、みんな違うイントネーションを持っていますが、言っていることは思っていた以上に理解できます。たまにスラングワードが混じってくると戸惑うこともありますが、今はコミュニケーションで困ることはないです。スピーキングも得意なほうだと思うんですけど、もう少し発音を良くして、語彙を増やしていきたいです。

――勉強のほうはいかがでしょう。
最初の頃は大変でした。もともと理数系はめちゃくちゃ苦手で、数学は何も理解できなくて……。日本にいるときは英語だけを勉強していたので、国語など言語学習は分かって、テストも良い感じでした。

崎濱秀斗

「フィジカル面で劣っている部分はありませんでした」

――6月2~5日にはイタリアで開かれたアディダスのユーロキャンプに参加しました。NBAに前年入れなかった人やユーロリーグのプレーヤー、アメリカのトップの高校生など世界トップレベルの選手が集まったそうですね。
プレータイムはなかなか得られませんでした。弱さが出てしまいました。強みを自分で殺して、ずっとパサーに回ってスコアもできなかった。「できなかった」という言い方が正しいかは分かりません。「絶対に周りを生かそう」と考えてしまいました。その部分はうまくいきましたが、それはコーチが求めていることではなかったです。コーチは得点や得点に絡むアクションを起こしてほしかったんだなと、キャンプを終えてから理解しました。

――手応えを感じられたポイントはありましたか?
フィジカル面では劣っている部分はありませんでした。押されても逆に押し返せるぐらいの身体になっています。ディフェンスも良かったです。オフコートで、短期間でコーチやチームメートから信頼を得ることが大事だなと思いました。

――世界のレベルは想像とは違うものでしたか。
2022年にU17ワールドカップに出場して、いろいろな国と対戦し、たくさんのプレーヤーを見てきました。今回渡米して、アメリカには他国なら代表に入れるようなレベルの選手がたくさんいると知りました。世界は広いし、アメリカはさすがバスケの本場だなと思いました。

――今はアメリカ・フロリダ州のIMGアカデミーにいらっしゃるそうですね。
はい。あと2カ月くらい滞在します。ハイレベルなプレーヤーが大勢いると思っていたのですが、オフシーズンなので練習している子たちはだいたい中学生で……。環境はめちゃくちゃ良いんですけどセキュリティが厳しくて、ウェイトトレーニングができないときがあります。アメリカの夏は基本何もないというか、みんな自分の国に帰ってワークアウトをしているのでそっちでもいいなと思うこともありますが、自分で追い込んでトレーニングしています。

崎濱秀斗

「D1編入に最も必要なのはシュート力です」

――コート外ではどのように過ごしていますか?
練習が長くないので、空き時間が多いですね。セントトーマスモアにいる間は高校からIMGに進学した内藤英俊さんと英真と、英語で電話して、「日本食はどうやって買っているの?」とか聞きました。2人とはジョークを交えながら話ができるし、アメリカの経験も長いし、プレーしているところもレベルが高いので、刺激を受けます。日本にいる友達にも電話しますよ。高校が恋しいですね。練習はきつかったし、ヤバいと思ったこともたくさんあるんですけど、今思うとバスケットの環境はめちゃくちゃ良かったです。

――日本で気になるプレーヤーはいますか
日本でプレーする同世代の活躍はYouTubeなどで見ていますけど、「この人に負けたくない」という選手はいないですね。みんな日本でプレーしているから。自分は今、オフシーズンなので耐え時。後で爆発的するため、自分との戦いです。

――目標は変わらず、NCAAのD1校への編入ですか?
変わっていません。そのために最も必要なのはシュート力です。アメリカに来てから、高校時代のようにジャンプシュートをちゃんと打ち切るシチュエーションがあまりないんです。ピックアップゲームが多くて、みんな1対1を仕掛けるので。自分も1対1の能力はついたんですけど、組織的なピック&ロールなどをやっていない状態です。11月のシーズンインに向けてあせらずにやっていきます。3ポイントシュートはサイズが小さい選手だからこそ大事です。チームメートもみんな上手なので、キックアウトパスも飛んでくると思うので、キャッチアンドシュートや、プルアップジャンパーを練習しています。時間が必要なので、少しずつ上達していきたいですね。

D1編入という目標をかなえた後には、ユーロリーグやヨーロッパのどこかのリーグでプレーしたいという思いもあります。6月のユーロキャンプに参加して、組織的なバスケットが自分に合っているし好きだと感じました。若いうちにいろいろなバスケットを経験したいですね。そしていつかは日本に帰って、地元の琉球ゴールデンキングスでプレーできたらいいなと思っています。

――応援してくれている皆様にメッセージをお願いします。
D1の大学からオファーをもらうため、アメリカで頑張っています。これからも応援よろしくお願いします。家族にはまずオファーをもらうまで見守っていてほしいです。