フリーエージェントとなり、3年6600万ドルで契約へ
ケンテイビアス・コールドウェル・ポープはフリーエージェント交渉解禁から数時間で、マジックとの合意に至ったようだ。
コールドウェル・ポープはNBAキャリア11年のベテランで、『バブル』のシーズンにレイカーズのNBA優勝に貢献した後、ウィザーズを経てナゲッツに加わると、2022-23シーズンの優勝を勝ち取った。異なる2つのチームで優勝を勝ち取るのは至難の業だが、彼は安定感抜群のディフェンスと堅実な3ポイントシュートでそれを成し遂げた。
マジックは指揮官ジャマール・モズリーの下で、若手を中心にしながらタフに守れるバスケでプレーオフ進出を果たした。まだ多くの伸びしろを残す若いチームを『勝ち方を知るベテラン』が引っ張る意味は大きい。
マジックは彼と3年6600万ドル(約100億円)の契約を結んだとされ、残るキャップスペースが2800万ドル(約42億円)となり、獲得が噂されたビッグネームであるポール・ジョージやクレイ・トンプソンの可能性はほぼ消えた。それでも、マジックが獲得すべきベテランは堅守のアイデンティティに合致し、同時に『チームの顔』はパオロ・バンケロを筆頭に生え抜きの若手であるほうが望ましい。コールドウェル・ポープはチームの主役ではなくても指南役となる、最適な補強と言える。
2022-23シーズン王者のナゲッツにとって、コールドウェル・ポープの退団は歯がゆいものとなる。彼はナゲッツにとって不可欠な戦力だったが、サラリーキャップの縛りが厳しい今では、すんなり契約延長とはいかない。ニコラ・ヨキッチとのスーパーマックス契約は始まったばかり。現在は契約最終年を迎えるジャマール・マレーと契約延長交渉中で、新契約はマックス額かそれに近いものになるだろう。
シーズン終了の時点でカルビン・ブースGMはコールドウェル・ポープについて「戻って来てほしい」と言いながらも、「ウチはドラフトで指名した選手を育てて強いチームを作っているが、それでもサラリーの調整は困難を極める」と、あきらめムードを漂わせていた。市場からビッグネームを買い漁るならともかく、ナゲッツは2巡目指名のヨキッチ、ケガを抱えて他チームが指名しようとしなかったマイケル・ポーターJr.を指名してスター選手へと育ててきた。だが、ここでコールドウェル・ポープをマジックと同じ条件で引き留めれば、来年にはマレーが流出しかねない。そのためにはコールドウェル・ポープを見送るしかなかった。
優勝を勝ち取り、自前のタレントを数多く擁するナゲッツであっても、強いチームをキープするのは簡単ではない。昨年のブルース・ブラウンに続いて今回はコールドウェル・ポープが抜け、その穴は2年目を終えた生え抜きのクリスチャン・ブラウンが担う。
それと同時にラッセル・ウェストブルック獲得の噂が浮上してきた。ウェストブルックは400万ドル(約6億円)のプレーヤーオプションを行使してクリッパーズ残留を決めたが、ジェームズ・ハーデンと2年7000万ドル(約140億円)の新契約を結んだクリッパーズはウェストブルック放出に動く模様。ウェストブルックの実力からすれば年俸は格安で、加えて控えポイントガードのレジー・ジャクソンをすでに放出しており、コールドウェル・ポープの退団も重なったナゲッツはガードの補強を必要としている。
ナゲッツはタレント発掘と育成のメソッドは確立して優勝を勝ち取ったが、ヨキッチを筆頭とする今のコアメンバーとともに次の優勝を勝ち取るには、チーム作りをシフトして『優勝を狙える戦力』をキープする努力が求められる。