「塁や雄太が合流しても今までのプレーを忘れずに」
日本バスケットボール協会(JBA)は6月29日、味の素ナショナルトレーニングセンターで開催されているパリ五輪男子日本代表第三次強化合宿の一部を公開し、キャプテンを務める富樫勇樹が報道陣の取材に応じた。
候補メンバーが24名から16名にまで絞られ、「本番が近づいてきた実感があります」と心境を語った富樫は、報道陣からの質問に対応。東京五輪ぶりの代表入りとなる八村塁に関する質問が多く寄せられる中、「塁は今回のメンバーの半分以上を知らない。まずは名前を覚えるところからスタートして、チームやメンバーにフィットするには時間はかかると思います」とした。
また、八村の加入でどのようなプレーが増えていきそうかという質問に対して、富樫は「トランジションプレーや3ポイントシュートなど、かなりチームの助けになってくれると思う」と話したが、この回答の前には次のようなことも話していた。
「(代表チームのスタイルは)良い意味で塁を頼りにするバスケではないと思いますが、北海道遠征の終わりに、全員に『塁と(渡邊)雄太が合流しても遠慮せず、今までのプレーを忘れずにやってほしい。例えば(富永)啓生ならこれまでと同じくらいシュートを打ってほしい』と話しました。塁が入るというのは大きな強みだけど、今までやってきたメンバーが萎縮してプレーしたらこれまでの積み重ねに意味がなくなってしまうと思うので」
2019年のワールドカップと東京五輪の日本代表チームは、アメリカで素晴らしい成果を挙げる八村を必要以上に意識し、選手個々やチームの本来の持ち味を生かしきれなかったという反省がある。富樫は同じ轍を踏まぬよう、リーダーとして上記のようなメンバーの意思統一にも力を注いでいる。
本戦出場に黄色信号が点灯した渡邊は「信じている」
6月に北海道で行われた『日本生命カップ2024』では、若手主体のオーストラリア代表に1分け1敗。本戦を不安視するような世間の声が漏れ伝わる状況について問われると、富樫は「自分たちもあの結果に満足していないですし、これからどういうチームを作っていくかだと思う」と泰然自若とした様子で答えた。
「自分もみんなも今の日本代表の実力をわかってますし、(ワールドカップ覇者の)ドイツ代表は10回やって1回勝てるかという相手かもしれないけど、その1回を本番に持ってくればいいだけの話なので。これからいろんなところでレベルアップして、ドイツのレベルに追いつきたいとは思いますけど、何十回やって一度も勝てないような相手ではないと思ってるので、それを本番に持っていきたいです」
プレー面だけでなく精神面でもチームに大きな影響を与える渡邊雄太が、6月初旬に負った肉離れで本戦出場も危ぶまれる状態となったことについても「雄太は一緒にチームを作っていく上で大事な存在ですけど、最悪の状況も考えながらやっていくしかないかな」と落ち着いて話し、「まあでも、戻ってくれるんじゃないかと信じてます」と言葉を加えた。
五輪初戦のドイツ戦まで、1カ月を切った。八村がトム・ホーバスヘッドコーチのバスケにどれだけフィットできるか。渡邊がどれだけコンディションを戻し、チームに合流できるか。これからコンディション不良者が出てこないか。不安要素は当然ゼロではないが、今はとにかく個々が最善を尽くしながら日々を過ごすしかないと富樫は力を込める。
「今ここで練習している選手たちは、合宿が始まってからの1カ月半、常にピークの状態…いつメンバーから落ちるかわからない状態で練習している。とにかく1日1日を大事に。トムさんも『毎日成長』ってよく言いますけど、そのとおりだと思います」