ジョシュ・ギディー

サンダーはカルーソ獲得で『勝ちに行く』へ方針転換

『ESPN』の名物記者、アドリアン・ヴォジロナウスキが今オフ最初にスクープしたトレードは、ブルズのアレックス・カルーソとサンダーのジョシュ・ギディーだった。

カルーソはキャリア7年目を終えた30歳。2016年のNBAドラフトにエントリーするも指名を得られず、2017年のサマーリーグでプレーしたレイカーズでそのポテンシャルを認められ、2ウェイ契約を経て『ヤング・コア』の一員となり、3年目の2019-20シーズンにはNBA優勝にも貢献。2021年オフにフリーエージェントとなり、4年契約でブルズに加わった。

2年連続でNBAオールディフェンシブチームに選出された守備のスペシャリストであり、なおかつ決して得意ではなかった3ポイントシュートを磨き、今シーズンは1試合平均のアテンプトが4.7とキャリア平均から倍増させ、成功率40.8%を記録。チームプレーの中で個性を発揮できる優れたロールプレーヤーだ。

ギディーは2021年の1巡目6位指名を受けてサンダーに加わり、3年目のシーズンを終えた21歳。力強いボールプッシュに当たり負けしないフィジカルの強さ、卓越したコートビジョンからアシストを量産する203cmの大型ポイントガードだ。

ただ、西カンファレンス1位と躍進した若きサンダーにおいて、ギディーは居場所を失いつつあった。シェイ・ギルジャス・アレクサンダーが絶対的なエースとなり、ジェイレン・ウィリアムズもフォワードながらプレーメークができ、今後はチェット・ホルムグレンのポストアップからの展開も増やしていきたい。チームがそう成長していく中で、オンボールで力を発揮するギディーの役割は減りつつあった。プレーオフではスタメンから外され、シューターのアイザイア・ジョーの起用が優先された。

ギディーの評価はいまだ高く、いずれオールスターにも成長できるポテンシャルを秘めている。ただし今のサンダーは各ポジションに魅力的な選手が揃い、しかもその大半が若手で、プレータイムを得られず埋もれてしまうことにもなりかねない。ブルズはメインのポイントガードであるはずのロンゾ・ボールが膝のケガから復帰できず、この2シーズンを全休していまだ復帰の目途が立たない。コービー・ホワイト、アヨ・ドスンムとハードワークのできるガードはいるが、プレーメーカー不在でチームオフェンスが機能しない状況を変えるべく、カルーソを放出してでもギディーを必要とした。

ブルズはデマー・デローザン、ザック・ラビーン、ニコラ・ブーチェビッチの『ビッグ3』体制が機能しないまま3年が経過した。デローザンは今オフにフリーエージェントとなり、他の2人にもトレードの可能性があるため誰が残るか分からないが、ロンゾの復帰を待ち続けてプレーメーカー不在だった状況はこれで改善され、どんな形のチーム作りにせよ、ギディーを軸に進めることができる。

一方でサンダーは、このトレードにより若手の成長にフォーカスする段階から『勝ちに行く』への方針転換を告げたと言えるだろう。今オフのフリーエージェント市場ではデローザンやポール・ジョージ、クレイ・トンプソン、プレーヤーオプションを破棄すればレブロン・ジェームズという名前が出てくるが、そんな『超ビッグネーム』ではなく、シェイを中心とした今のサンダーのバスケを変えることなく、そのスタイルを分厚く強化できる選手を選ぶのがサンダーらしいとも言える。

ちなみにカルーソはレイカーズと2ウェイ契約を結んでNBAデビューを果たす前、サンダー傘下のGリーグチーム、オクラホマシティ・ブルーでプレーしていた経験があるため、サンダーに馴染みがないわけではない。しかも当時ブルーを率いていたマーク・ダグノートが、今はサンダーのヘッドコーチを務めており、チームに溶け込むのに苦労はしないだろう。

主力選手のサラリーが上がりきらないうちが優勝のチャンス。若いサンダーにはまだ数年のチャンスが残されている。契約が残り1年のカルーソと3年ないしは4年の新契約を結び、そのタイムラインで優勝を目指すことになりそうだ。