序盤から琉球を寄せ付けずCSセミファイナル初戦は33点差の圧勝
5月18日、千葉ジェッツは琉球ゴールデンキングスとのチャンピオンシップ(CS)のセミファイナル初戦を95-62と圧勝。2年連続のファイナル進出に王手をかけた。
千葉Jは試合の出だしから大黒柱の富樫勇樹がエンジン全開で、琉球の激しいマークを全く問題にせずこのクォーターだけで3ポイントシュート2本を含む8得点をいきなり挙げる。さらにゼイビア・クックスのドライブに加え、チーム全体でシュートタッチの良い千葉Jは29-24と主導権を握ると、第2クォーターに入ってその勢いはさらに加速する。
スピードのミスマッチを生かして縦への突破からズレを作り出すと、そこからテンポよくパスをまわしてオープンを作り、クリストファー・スミス、原修太、ジョン・ムーニーが高確率で沈めていく。そして守備では、平面で激しくプレッシャーをかけることで、第2クォーターのみで4スティールを奪い、6つのターンオーバーを誘発。こうして攻守で圧倒した千葉Jは、30-14のビッグクォーターを作り出し、前半で21点の大量リードを奪う。後半に入っても千葉Jは、琉球に付け入る隙を与えず、19得点のスミスを筆頭に5選手が12得点以上をマークと、バランスのとれたオフェンスで楽々と逃げ切った。
95点が示すように、この試合の千葉Jは持ち前の破壊力でリーグ屈指の堅守を誇る琉球の盾を粉砕した。だが、オフェンスに良い流れをもたらしたのは、ディフェンスでやるべきことをしっかり遂行したからこそ。各選手が高い集中力を保ち続け、鋭い反応で次々とパスカットをし、ゴール下でも簡単にシュートを打たせなかった。その結果は13スティール、6ブロックと見事な数字に出ていた。
ジョン・パトリックヘッドコーチも、「今日は最初からヴィック(ロー)と(アレン)ダーラムに対して良い1on1のディフェンスで頑張りました。原が出ている間は相手のベストプレーヤーをしっかりマークしてくれました。オフェンスでシュートは外れる時もありますが、ディフェンスはコントロールできます」と、守備の遂行力の高さを称えている。
千葉Jの大黒柱、富樫は会心の勝利を「初戦を取るのはすごく大事だとチームとして臨んだので、結果として勝てたことは良かったと思います。内容も準備してきたことができました。でも2勝しないと次に上がれないので、しっかりと切り替えて良いイメージを持ちながら明日の準備をしていきたいです」と総括する。
「もう1回、多くのジェッツブースターの前でプレーするには横浜アリーナに行くしかない」
千葉Jがベストメンバーで琉球と戦うのは、この試合が今シーズン2度目。一度目は117-69で圧倒した天皇杯決勝であり、2戦続けての圧勝劇に富樫は「チームとしてマッチアップしやすい相手なのかなと思います」と、相性の良さを感じている。だが、もちろんそこに慢心はない。「全員がしっかり動いて、1人に頼らずプレーしていたことが今日の勝因だと思います。天皇杯の決勝と含め、2試合こういう試合ができたのはすごく自信になります。かといって、明日も同じ試合になるかと言ったらそうではないと思うので、気持ちを切り替えて自信を持ち過ぎずに戦いたいです」
富樫は第3戦までもつれこんだ宇都宮ブレックスとのCSクォーターファイナルで、3試合平均20.0得点6.3アシスト、3ポイントシュート成功率47.1%と圧巻のパフォーマンスを見せた。そして、この試合でも12得点7アシストを記録し、特に第1クォーターには前半のオフェンス爆発をもたらす引き金となるような見事な活躍だった。
「なんといってもレギュラーシーズンとCSは別物で、一つひとつのプレーの重さは違います。宇都宮との第3戦など、一つのミスが命取りになる空気の中でプレーしていたことが、集中力を切らさずにずっとプレーできている要因なのかと思います。そして、この緊迫した空気感でもすごく楽しみながらプレーできていると思います」
このように富樫は、今シーズンのCSで4試合続けてハイパフォーマンスを続けられている理由を分析する。そして、特にポストシーズンのような大きなプレッシャーのかかる舞台では、エースである自分が周囲を牽引していかなければいけない、と強い覚悟と責任感を持ってコートに立っている。
「大きな注目を集めるゲームになればなるほど、この舞台で活躍できる、できない選手はすごく分かれると思っています。自分がチームを引っ張っていくという意味で、特にオフェンス面ではそういう気持ちでやっています」
これで千葉Jは、ワイルドカード2位とCS出場8チームの中で最も低い順位からのファイナルまであと1勝と迫った。もちろん富樫が狙うのは優勝のみで、ファイナル出場が目標ではない。それでも、ファイナルに行くことで、ファンに贈ることができるプレゼントもある。「もう1回、多くのジェッツブースターの前でプレーするには(中立地であるファイナルの)横浜アリーナに行くことしかないです。その約束を果たすためにも、あと1勝できたらいいと思います」
再び多くのブースターの歓声を背にプレーするためにも、富樫は今の勢いのまま明日でファイナル進出を決めることしか考えていない。