大接戦を勝ちきり、4勝2敗でファーストラウンドを突破
セブンティシクサーズのタイリース・マクシーは、ニックスとの第4戦で目覚ましい活躍を見せてチームを危機から救った。しかし、それはニックスにジョエル・エンビードよりもマクシーを警戒すべきだとディフェンスの方針を改めさせることになった。それまでOG・アヌノビーやジョシュ・ハートがフィジカルで抑え込もうとしていたマクシーのマークをドンテ・ディビンチェンゾが担当することに。ディビンチェンゾは運動量を生かしてコートのどこまでもマクシーを追い掛け、スペースと時間を奪った。マクシーがボールを持ち、縦に仕掛ける前に邪魔をする。その策が効き、マクシーをフィールドゴール18本中6本成功の17得点と抑え込んだ。
エンビードにはゴール下を支配され、アイザイア・ハーテンシュタインとミッチェル・ロビンソンの2人を交互に使って激しく当たる守り方にもアジャストされて、13本のフリースローを与えた上で39得点を奪われ、13リバウンドと攻守に暴れられた。だが、それよりもマクシーを抑えたことで、第5戦と同じく接戦にはなっても違う結果を生み出した。
コートに倒れたエンビードがロビンソンの足をつかんで倒したダーティーファウルとマディソン・スクエア・ガーデンでの大ブーイング、マクシーによる起死回生の連続得点、ウェルズ・ファーゴ・センターに詰め掛けたニックスファンと、それに対抗するためにシクサーズのオーナーが自腹を切って地元ファンをアリーナに入れたファン同士の意地の張り合い、残り30秒でジェイレン・ブランソンとジョシュ・ハートのホットラインから決まったゲームウィナー。様々な出来事があったシリーズで、両チームは実力伯仲だったが、ニックスが上回った。
「シリーズを終わらせるチャンスがあったら、逃してはいけないんだ」とブランソンは言った。「第5戦では上手くやれなかったけど、それを引きずってはいない。今日ここで仕留められるかがすべてだった。何が起きても不平を言うのではなく、実際にコートに出て仕事をしなきゃいけなかった」
厳しい戦いで勝利を引き寄せた秘訣はメンタル面にあるとブランソンは言う。「僕たちは決して屈しない。外部の人たちが何を言おうが、自分たちが何をすべきかは分かっている。チームで団結して戦ったし、それはこの先も変わらないだろう。僕はこのチームのそういう部分が気に入っているんだ」
ジョエル・エンビードはケガの影響が色濃く残り、最後まで本調子でプレーすることはなかった。最後の試合ではペイントエリアを支配して存在感を発揮したものの、チームを勝たせるには至らなかった。
「優勝できると信じていたけど、思ったように事が運ばなかった」とエンビードは言う。「いろいろ問題はあったけど、まずは僕からだ。僕自身が選手としてもっと成長しなければいけない。だから選手として、人間として、リーダーとして、もっと良くなる方法を見いだしたい」
「でも、あきらめたりはしない。自分を哀れむこともしない。思うように動けず、跳ぶこともできなかった。身体が反応してくれなかったけど、それでも自分の存在感があれば十分だと思ったし、何よりプレーしたかったんだ」
両チームの差はほんのわずかだったが、勝負の世界の冷徹さは勝者と敗者を明確に分ける。シクサーズの冒険はここで終わり、ニックスはカンファレンスセミファイナルでペイサーズと対戦する。