琉球ゴールデンキングス

「相手の土俵に入ってバスケットをした時の脆さがあります」

琉球ゴールデンキングスは今、シーズン最大の苦境に立たされている。4月27日、28日のアウェー名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦に連敗し、名古屋Dとの戦績は4戦全敗となった。西地区首位の座をキープしているが、名古屋Dとのゲーム差は残り2試合でわずか1しかない。同率で並ばれた場合、直接対決の成績で名古屋Dが上となることもあって追い込まれている。

昨シーズン、悲願のリーグ初優勝を果たした琉球はここまで地区6連覇中かつ、コロナ禍でチャンピオンシップがなかったシーズンを挟みセミファイナルに5年連続出場中だ。Bリーグ随一の安定した結果を残せているのは、様々な試行錯誤がある中でもシーズン終盤に向けて徐々にチーム力を高めてきたピーキングの上手さにある。だが、今は21日の長崎ヴェルカ戦と合わせて痛恨の3連敗、ここ8試合で3勝5敗と明らかにチームの状態は良くない。一番の問題は、琉球らしさが失われていることだ。

bjリーグ時代から琉球が強者であり続けられた最大の理由は、終盤の接戦における我慢比べで絶大な強さを発揮してきたから。ディフェンスを思うように崩せず神経をすり減らすような展開になっても、集中力を切らさずにやるべきことを泥臭くやり続ける。そうすることで失点を最小限に抑え、最終的に相手が根負けする。こうして接戦を勝ち切ることができたらからこそリーグ上位の成績を残し続けてこられた。

だが、今はその我慢比べで先に集中力が切れてしまっている。特に名古屋Dとの2試合目はこの課題が出た一戦となった。試合後、桶谷大ヘッドコーチは「我慢して最後に勝ちをもぎとる戦いをしないといけなかったのに、我慢しきれなかったのが敗因です」と振り返った。象徴的な場面は指揮官も言及したヴィック・ローのテクニカルファウルだった。第4クォーター序盤、琉球はローの攻守に渡るハッスルプレー、積極的なボールプッシュからの切れ味鋭いドライブもあって流れをつかみかけた。それがディフェンスファウルに対する審判への暴言によって、無用なファウルを追加して4ファウルとなり、ベンチに下がらざるを得なくなったのは、試合の行方に大きな影響を与えていた。

もちろん、ローだけが責められるのではなく、終盤にはタフに守っていたのにシューティングファウルをするなど、要所で琉球は我慢しきれなかった。指揮官は今の問題をこのように語る。「相手の土俵に入ってバスケットをした時の脆さがあります。いかに自分たちの土俵でバスケットをできるのかが重要です。一番はメンタルゲームのところで、どれだけみんなが余裕を持ってプレーできるか。劣勢になった時の判断の悪さが欠点です」

また、余裕を持ってプレーできないのは、これぞという明確なローテーションを確立できていないこともあるだろう。今シーズンの琉球は、前年に千葉ジェッツで大暴れしたリーグ屈指のオールラウンダーであるヴィック・ローを獲得。さらにシーズン途中にアレックス・カークが帰化枠になるなど、これまでで最もタレント豊富な陣容となった。しかし、この戦力を最大限に発揮できているかといえば、うまく噛み合っていないと言わざるを得ない。

特にカークの帰化により、ローとアレン・ダーラムを同時起用できるビッグラインナップが大きな武器となるはずだったが、このラインナップを軸に臨んだ天皇杯決勝で69-117と千葉Jに大敗した。ローとダーラムはともに自らリバウンドを取ってボールプッシュし、そのまま一気にフィニッシュまで行ける強さ、速さを備えている。自分からどんどん仕掛けていきたいタイプの彼らを軸にトランジションを出せている時の最大火力は、これまでの琉球にない爆発力だ。しかし、オープンシュートを決めきれず、オフェンスが停滞すると、2人同時にコートに立つことでボールムーブが停滞しがちになるマイナス面がプラス面を上回ってしまう。そしてシュートが低調なこともあって、現在ビッグラインナップを勝負どころで目にすることは少ない。なんとかして改善策を見出し、CSでは試合の流れを変えられる武器としたいところだ。

琉球ゴールデンキングス

「このままCSにいっても難しいと思っています」

では琉球がらしさを取り戻すために何が必要なのか。指揮官は「チームメートをいかに信頼してプレーできるかに行きつきます」と言う。「互いの信頼感を高めるには、シンプルですがしっかりとシュートを決め切ることに尽きる。名古屋Dとの試合でも、インサイドアウトからオープンでのシュートチャンスを作れていましたが、そこで決めきれないことでリズムに乗り切れなかったです」

指揮官はこう語る。「今日もオープンのシュートを決めていたら、勝てていた可能性はあります。日本代表でトム(ホーバス)さんも言っているように、やっぱり決めないと、という部分はあります。選手にプレッシャーをかけたいわけではないですけど、オープンでしっかり決めるゲームができれば自信になる。パスを出す選手も悩まずにパスを出せるようになります」

確かに調子が良い時の琉球は試合全体でシュート確率は悪くても要所でしっかり決めることができていた。だからこそ、試合の流れを相手に渡さず、ディフェンスでも我慢を続けることができた。しかし、オフェンスとディフェンスは表裏一体であり、今はここ一番でのビッグショットを決めるまで守備が我慢しきれていない。その結果、オフェンスでも余裕がなくなり、単発のシュートセレクションに陥っている側面もある。

琉球がすべきことはシュートを打ち続けることも含め、「結局は我慢強くやり続けることしかないです」という、桶谷ヘッドコーチの言葉に尽きる。そして不幸中の幸いというべきか、CSに向けてチームを立て直せるチャンスはあと2試合残っている。

「フィジカルゲームで興奮している状態でも、やるべきことをやる。そして、やらなくてもいいことをやらない、これを徹底することがチームにとってすごく大切です。2つ負けたのはめちゃくちゃ悔しいですし、ショックです。ここで地区優勝をしたかったですが、このままCSにいっても難しいと思っています。もう一回チームを立て直して広島(ドラゴンフライズ)戦に臨んで、そこからCSに向かっていきたいです」

こう指揮官は4日、5日のレギュラーシーズン最終節が持つ意味の大きさを語った。アウェーで戦う広島はワイルドカードでのCS出場圏内にいる。そして、レジェンドで今シーズン限りでの引退を表明している朝山正悟のホームラストゲームということで、モチベーションは高く必勝体制で臨んでくるだろう。会場が大きく盛り上がることが必至の完全アウェーで、琉球らしさを出して地区優勝をつかみとれれば、必ず浮上のきっかけになるはずだ。