ビクター・ウェンバニャマ

ウェンバニャマ「すごく楽しい。でもすごく難しい」

スパーズはデビン・ヴァッセルが右足の、ジェレミー・ソーハンが左足首のケガのため、今シーズンはもうプレーしないことを発表した。現地4月2日のナゲッツ戦ではケルドン・ジョンソンとジェディ・オスマンまで欠場。ローテーションは穴だらけだったが、それでも最後の最後までナゲッツと見応えのある攻防を繰り広げられたのは、ビクター・ウェンバニャマの攻守に渡る大活躍があったからだ。

105-105で迎えた残り1分からのナゲッツの攻め。ニコラ・ヨキッチがウェンバニャマを引き付けて完璧なアシストをレジー・ジャクソンに送ったはずが、ジャクソンのシュートは軽々とブロックされた。ウェンバニャマは34分の出場で23得点15リバウンド8アシストを記録したが、何よりも9ブロックが印象的だった。

ウェンバニャマのブロックショットの脅威により『正しいプレー』を心掛けるナゲッツのオフェンスは乱れた。ブロックを食らわなくてもウェンバニャマの伸ばす手を意識するあまりシュートを落としたり、打てる場面で躊躇したり。ウェンバニャマのリムプロテクターとしての存在感がロースコアの展開を作りだしていた。

それでも連覇へと突き進むナゲッツは、ウェンバニャマの堅守を乗り越える。続く攻めでクリスチャン・ブラウンがウェンバニャマを引き付けてキックアウト。ワイドオープンのチャンスをマイケル・ポーターJr.が沈めて108-105と勝ち越す。続く攻めではヨキッチが余裕十分でフリースローを獲得し、2本とも危なげなく決めて110-109で勝ちきった。

ヨキッチは42得点16リバウンド6アシストを記録。高さとしなやかな動き、バスケIQで競い合うウェンバニャマのマッチアップは見応えがあった。試合後のヨキッチは「彼には600ブロックぐらい食らったけど、何とか勝てたよ」と語る。彼が軽口を叩くのは相変わらずだが、異彩を放つルーキーとのマッチアップを楽しんでいたのは間違いない。

ヨキッチは言う。「彼に何本もブロックされたけど、ああいう特別な選手を相手に点を取るには特別なプレーをしなきゃならない。今日はそれを試みたつもりだ」

ウェンバニャマもヨキッチとの対戦を「すごく楽しい。でもすごく難しい」と語る。「常に頭をフル回転させて、一つのミスも許されない。攻守ともに良い戦いはできたと思う。正直に言うと今日は疲れた。考えるのも難しいぐらいにね」

ウェンバニャマは文字通り、心身ともにヘトヘトになるまで戦い続けた。ナゲッツにあと一歩及ばず、シーズン58敗目を喫したが、ウェンバニャマを始めとする選手たちの姿勢にグレック・ポポビッチは大いに満足していた。

「私は長年この仕事をやっているが、その中でも最も激しく戦った試合の一つとなった」とポポビッチは言う。「難しい状況下で48分間、コールやターンオーバーがあっても気持ちを落とさず、ただ次のプレーに向かった。48分間の努力は本当に印象的で、ここ数年で最高のものだった」

ヨキッチも同じ印象を持っているようだったが、ポポビッチが感じるのは頼もしさでも、他チームが感じるのは脅威だ。ヨキッチはこう語った。「それにしても、これから彼がもっと学び、すべてを理解した時には、本当に厄介な相手になるだろうね」