髙田真希

文・写真=鈴木栄一

「東京五輪もあり、一日一日を無駄にできない思い」

昨シーズン、デンソーアイリスは若返りを図る中でファイナル進出を果たし、大きな飛躍を遂げた。それだけに今シーズンは、大黒柱の髙田真希を軸に赤穂さくらと赤穂ひまわりの姉妹、オコエ桃仁花など若手の成長でさらなるステップアップが期待されていた。ところが、レギュラーシーズン残り2試合の時点で13勝7敗、年明けのオールジャパンも準決勝敗退と、日本一を目指すチームとしては物足りない結果となっている。

そんな状況下で、2月2日と3日にJX-ENEOSサンフラワーズと対戦。プレーオフを前に『女王』を撃破することで弾みをつけるのが理想であったが、現実は2日が58-93、3日は少し持ち直したものの66-79と連敗を喫した。

「自分たちのやろうとしていることが徹底できていないので、相手にやられてしまう。練習してきたことを実行するために、もっとコミュニケーションを取ってチームの決まり事に対する一人ひとりの意識を強くしないと、今回のような結果になってしまいます。昨日と比べたら自分たちのやろうとしていることはできたと思いますが、JXに勝つということに関して自分たちはまだまだ及ばない。技術だけでなく、気持ちの面でも負けていると感じました」

3日の試合終了後、髙田はこのように『女王』との対戦で露呈した自分たちの課題について振り返る。一方で、自身のプレーについては、さらなる進化へ貪欲な姿勢を強調する。

「今までと変わらないか、それ以上だと思います。今年は3ポイントシュートを打つようになってプレーの幅が広がりました。この先は東京五輪もあります。もっと成長していきたいですし、一日一日を無駄にできない思いです。リーグ戦は自分が成長できる場で大事です」

ただ、1試合平均20得点、10リバウンド以上のハイパフォーマンスを維持する髙田に続く存在の台頭がない限り、上位陣との厳しい戦いを勝ち抜くのは困難だ。だからこそ、「若い選手にはガンガン行ってほしい。自分が点数を取るより、若い選手が取ってくれたほうがチームも勢いに乗って良い試合ができます。自分も得点を取りに動きますが、それを利用しながらもっと周りの選手が動くことによって、チームとして点数を取れます」と若手の奮起に期待を寄せる。

髙田真希

「若手を助けながらリーダーシップを発揮したい」

今の成績について、「もっとできると思うのが率直な気持ちです」と髙田は言う。ただ、経験豊富な彼女は、そう簡単に物事が運ぶものではないことも承知している。「それはあくまで自分の中のビジョンであって、若手は波が激しく、うまくいかない時もあります。これも一つの経験で、これをどうやって生かすかが大事。自分もそういった経験を乗り越えての今があると思っているので、若手を助けながらリーダーシップを発揮してもっと引っ張っていかなければ」

『2年目のジンクス』とスポーツ界でよく言われるように、2年続けて右肩上がりでステップアップするのは難しい。その苦しみを今のデンソーはまさに味わっているところだ。

実際、昨シーズンとの比較を聞くと「勢いの部分は減っていると思います」と語る髙田だが、「良い時のプレーは去年を上回っています。その良い時を増やしていくことで、去年より良いチームになれる。そのチャンスは十分にあると思っていますし、やろうとしていることは開幕に比べればできています」とチームの最大出力は着実に上がっていると自信を見せる。

あとは、この最大出力をどれだけ維持できるか。そのためには「自分たちはもっとチャレンジしていないといけないのに、気持ちの面で受けてしまうことがあるので、もっと気持ちを出していく必要があります。そして目標は、日本一と設定してあるので、そこに向かって一人ひとりが、どういうモチベーションで日々を過ごしていけるのかです」と精神面を鍵に挙げる。

今のデンソーは、若いからこその魅力と不安要素が良くも悪くも多数出ている。このマイナス要素を減らすには、個々のステップアップはもちろんのこと、悪い流れを断ち切るここ一番での髙田の存在が今まで以上に重要になってくる。大エースとして試合を支配しつつ、若手の成長を導く存在になる。デンソーがプレーオフを勝ち上がっていくには、この2つの重要な役割をこなすことが不可欠だ。高い要求ではあるが、髙田だからこそやり遂げることを期待したい。