サンダー

「成長したい」メンタリティを重視した選手評価

ティンバーウルブズ、ナゲッツ、セルティックスと東西のトップチームを続けざまに倒したサンダーは、23勝10敗と西カンファレンス首位の座をうかがっています。スターターの平均年齢が22.6歳と若いチームですが、現時点では『リーグ最強』といっても過言ではなく、充実したシーズンを過ごしています。

ラッセル・ウェストブルックの放出を機に若手有望株とドラフト指名権を集め始め、シェイ・ギルジャス・アレクサンダー、ルーゲンツ・ドート、ジョシュ・ギディー、ジェイレン・ウィリアムス、そしてルーキーのチェット・ホルムグレンと6年目までの若手を中心にしたロスターで、マーク・ダグノートが35歳の若さでヘッドコーチに就任してから同じ戦術を熟成させて力をつけてきました。

若手コアを育てての再建は王道に見えますが、実際には途中でフリーエージェントやトレードでベテランを補強することで経験値や安定感を加えてから勝てるようになるチームが多く、本当の意味で若手コアの育成によって勝てるようになるサンダーは珍しいケースで、それも毎シーズン確実にジャンプアップしているのだから、あまりにもできすぎたシンデレラストーリーです。

若手を集めるドラフトでもサンダーは異質で、選手の評価基準は一定しているものの、一般常識とは異なりポジションバランスを無視した指名を行い、セオリー外のロスター構成で成功しています。複数のポジションと役割をこなせるオールラウンダーであり、ディフェンスでも1on1だけでなく広い範囲をカバーしてスイッチ対応力のある選手を求めた結果、スキルとスピードのあるガードばかりを集めることになりました。中にはアイザイア・ジョーのように他のチームでプレータイムを得られなくても、サンダーのディフェンス戦術にはハマった選手もいます。

ボールを持ちたがるガードだらけではありますが、スペーシングを徹底することで個人技での突破を多く取り入れ、ドライブとキックアウトパスを繰り返すオフェンスを構築してきました。同じメンバーで同じ戦術を深めてきたことで、シーズン毎にポジショニングとボール回しがスムーズになり、そこにシェイの驚異的な得点能力が加わることで、シンプルながら止められない攻めになりました。戦術の熟成と個人の成長が見事にリンクしているのです。

代わりにサンダーの評価基準にはシュート力が欠けており、2シーズン前は3ポイントシュート成功率がリーグ最下位でした。この数字を昨シーズンに17位まで向上させると、今シーズンはここまでリーグトップの成功率になっています。ホルムグレンやジョー、ケイソン・ウォレスなどシュート能力のある選手を獲得したこともありますが、「成長したい」というメンタリティを重視する評価基準をもったチームらしく、シュートが苦手だった選手が見事に弱点を克服してきました。

好調とはいえシーズンは半分も終わっておらず、相手からの警戒も強まる中では若いチームらしく失速する可能性は十分にあります。逆に若いチームだからこそ、さらに成長する可能性もあります。最近は対戦相手や試合展開に応じて起用する選手を変えていくなど、新たな一面も見せ始めており、失敗を恐れず更なる成長を求めているようにもみえます。4年ぶりのプレーオフ進出だけでなく、もっと先を見据えて突き進んでいます。