「ポゼッション争いで勝てた。3ポイントシュートを高い確率で決め切れたことが勝因」
12月2日、シーホース三河はバイウィーク明けの初戦で琉球ゴールデンキングスと対戦。6人が2桁得点を挙げたように、ボールがよく動く質の高いチームオフェンスで琉球の堅守を攻略し、93-73と圧勝した。
試合の立ち上がりはともにオープンシュートを決め切れずロースコアとなったが、三河はこのクォーターだけで7本のターンオーバーを誘発したように守備から流れをつかむ。ドランジションから石井講祐が3ポイントシュートを決め14-7と先行すると、琉球がたまらずタイムアウトを取る。しかし、三河の勢いは止まらず、ザック・オーガストのインサイドアタックを中心に高確率でシュートを決め、25-7とさらにリードを広げて第1クォーターを終える。
第2クォーターになっても三河は攻守で琉球を圧倒し、33-10とさらに突き放す。しかし、ここから岸本隆一、松脇圭志の2人にこのクォーターで合計8本中6本の3ポイントシュートを決められ、14点リードと追い上げを食らって試合を折り返した。
後半に入っても琉球の流れは続き、第3クォーター中盤には55-64と点差を一桁に縮めた。だが、ここから三河はセカンドチャンスポイントや、ジェイク・レイマンのタフショットなど、要所での決定力の高さを見せたことで試合の主導権を渡さない。すぐにリードを2桁に戻すと、そのまま危ない展開で逃げ切った。
この試合、三河の石井は15分14秒のプレータイムで、3ポイントシュート5本中3本成功を含む11得点4アシストを記録した。特に第3クォーターにリードを9点差にまで縮められた直後のポゼッションで3ポイントシュートを成功させ、大事な第4クォーターの出だしでオフェンスリバウンドを取り、レイマンの長距離砲も繋げるなど、スタッツ以上に大きなインパクトを与えた。
昨シーズンの王者相手の快勝に、石井は「1つはディフェンスリバウンドを取って、ポゼッション争いで勝てたこと。2つ目は3ポイントシュートを高い確率で決め切れたことが勝因だと思います」と総括する。そして、自身のプレーをこのように振り返る。
「シュートは良いタッチだったので打ち続けました。オフェンスリバウンドなど繋ぎのプレーは、流れを持ってくるプレーとして意識してやっています。ここぞの場面で良い働きができた手応えはあります」
「琉球戦に向けてしっかり準備ができ、それを実戦で今年一番と言えるくらい表現できた」
今回の圧勝は中身の濃いバイウィークを過ごせたからこそで、石井も好感触を得ている。「バイウィークはまずしっかり休んだ後、初回の練習でコーチが自分たちの強み、もっと改善した方が良い部分をわかりやすくデータに出してくれました。そのおかげで、自分たちがさらに上がっていくためにやるべきことがより明確になりました。今日の琉球戦に向けてしっかり準備ができ、それを実戦で、今年一番と言えるくらい表現できたと思います」
今シーズンの三河はウィザーズの元アシスタントコーチであるライアン・リッチマンを新ヘッドコーチに招聘し、強豪の座に返り咲くことを目指している。まだまだ発展途上とはいえ、リッチマンヘッドコーチの卓越した指導力もあり、特に近年にはない守備のインテンシティと連携が光るなど、ポシティブな変化は間違いなく見えている。
この生まれ変わった三河の中で同じく新加入の石井は、ベテランらしい安定したプレーなど、数字に出ない部分での貢献も大きい。「しっかり求められているものを表現できている手応えはあります。チームのスタイルと、自分の得意な部分がマッチしている感覚はあります」と言い、リッチマンヘッドコーチのやりたいバスケットボールとの相性の良さを感じている。
そして、指揮官が積極的に選手とコミュニケーションを取ってくれることも、フィットできている要因だと続ける。リッチマンヘッドコーチはずっとアメリカで活動しており、Bリーグの外国籍枠のルール、連戦が続くスケジュールなどは初めての体験となる。その中で「Bリーグのスタイル、どんなプレーコールが多いのかなど、僕や柏木(真介)さんと現役生活が長い選手にいろいろと聞いてくれます」と言うように、Bリーグに自身が一刻も早く適応するための努力を惜しまないと石井は明かした。
現在36歳と、石井は大ベテランの域に入っているが、リッチマンの下でこれまでにない刺激を受け、充実した日々を過ごしているという。「毎日、僕らに高いレベルを求めてきますし、それによって選手がハードワークを常に意識することに繋がります。戦術面ではNBAの考えをチームに落とし込んでくれて、新しいバスケットボールを学べ、新鮮な感覚でプレーできています」
新たな引き出しを増やすことに意欲的な石井だが、今シーズンはあらためて自身の代名詞であるアウトサイドシュートに強い思いを持っている。2018-19シーズンにはリーグトップの3ポイントシュート成功率(45.2%)をマークするなど、40%前後の高い成功率を安定して記録していたが、昨年は34.5%、一昨年は32.3%に留まっている。石井は言う。
「もう1度、シュートを強みにする。そこを強調してほしいとコーチは言ってくれています。シューターとして、相手の脅威になりたいですし、シュートはずっとこだわりたいです」
琉球の桶谷大ヘッドコーチが「9点差にした後で石井ちゃんがタフショットを決めたり……」と試合後に語ったように、石井は有言実行のパフォーマンスで琉球の脅威になった。『シューター石井』の復活となるか、三河復活のキーマンとして注目していきたい。