流れを呼び戻す、富樫勇樹の殊勲の働き
千葉ジェッツが敵地で富山グラウジーズに連勝。昨年12月16日から続く連勝を12に伸ばすとともに、リーグ最速で30勝に到達。全体勝率1位をがっちりとキープしている。
富山は昨日の第1戦で退場処分を受けた宇都直輝を出場停止で欠く状況、阿部友和が今シーズン初先発。昨シーズンまで千葉に所属した阿部は古巣のトランジションオフェンスを警戒し、相手の持ち味を封じるが、オフェンスはジョシュア・スミスとレオ・ライオンズの両外国籍選手頼みになってしまう。巨漢センターのスミスに対して千葉はダブルチームを徹底したため、ここで空いた選手を使いたいところだがうまくパスが回らない。
千葉はトランジションを出せなくても焦らずパスを回す。富山のディフェンスはタイトで、簡単にシュートまで持ち込めたわけではないが、バランスの良い攻めで少しずつリードを作る。富樫勇樹の3ポイントシュートで41-32とリードを広げて前半を折り返した。
ここまでは千葉にとって盤石の試合運びだったが、後半開始から2分半でバランスが崩れる。ジョシュ・ダンカンが個人4つ目のファウルを取られ、この時点でギャビン・エドワーズも個人3つ。富山にとってはダブルチームに対してズレを生かせず、スミスが強引なアタックを繰り返してしまう『マズい攻め』が、結果的に苦境を打開する好機を呼び込んだ。ここで富山は今まで以上にインサイドを強調。2桁前後で推移していたビハインドを47-49と2点差まで一気に詰める。
だが、ここで富樫が恐るべきスコアラーぶりを発揮する。第3クォーターのラスト3分、2点差に詰められたところから3ポイントシュート2本とミドルレンジからのプルアップジャンパーを決め、その間には田口成浩の3ポイントシュートもあった。富樫は阿部を振り切ってのアタックでフリースローを得て、再び2桁のリードを作り出す。
ライオンズとスミス頼み、富山の課題
富山も水戸健史がリスタートからのコースト・トゥ・コーストを決めてチームに喝を入れるが、富樫から西村文男に司令塔が代わっても攻守の遂行能力が落ちない千葉から付け入る隙を見いだせない。ライオンズのキックアウトから大塚裕土が3ポイントシュートを決める理想的な形がようやく出た直後に、セットオフェンスから右コーナーで完全なオープンを作られて西村に3ポイントシュートを決め返され、さらには連携ミスからのファストブレイクをアキ・チェンバースに決められてしまい、残り3分半で65-77。これで富山の集中の糸は切れ、最終スコア68-86で敗れた。
日本人エースの宇都を欠きながら、リーグ最高勝率の千葉を相手にハードワークで食い下がったことは評価できるが、チームとして良いシュートチャンスを作り出すオフェンス、それを許さないディフェンスという両面で、時間が経過するごとに千葉との差は明確になった。富山の68得点のうち49点がスミスとライオンズによるもの。単純なインサイドアウトに留まらずさらに崩してズレを生かす動き、日本人選手の合わせといったプレーへのトライが少なかったのは、チャンピオンシップ進出を実現する上で大きな課題となる。
逆に千葉は、フラストレーションの溜まる展開でも自分たちのバスケットを遂行。エースの富樫は結果的に5本の3ポイントシュートを含む25得点と大当たりだったが、「入る入らないは別に、自分のシュートを打ち続けることを意識しています」と試合後にコメントしたように、良いプレー選択と良いシュートの意識はチーム全体で徹底されている。
この試合、ギャビン・エドワーズ(7得点)のゴール下やマイケル・パーカー(6得点)の合わせといった大きな武器が封じられる中で、当たっている富樫に良い形でシュートを打たせたのは、チームとしてオフェンスがうまく回ったことを意味する。プレータイムの少ない田口が3本の3ポイントシュートを決めたり、ケガ明けでまだ本調子ではない小野龍猛がポストプレーでオフェンスに貴重な変化をもたらすなど、芯のある強さを見せた。チームとしての総合力の高さを見せ付けた千葉、シーズンで最もキツい過密日程の中ではあるが、その強さはまだ続きそうだ。