マーカス・スマート

「バスケで報酬を得ているんだからシンプルで明確だ」

グリズリーズのエースであるジャ・モラントは、銃にまつわるトラブルで25試合の出場停止処分を受けている。試合だけでなく公式なイベントには参加できないが、この出場停止はチーム練習に参加したり、遠征に帯同することを禁じるわけではない。モラントはトレーニングキャンプからチームと行動をともにし、準備を進めている。

エースの長期出場停止は痛手だが、グリズリーズにとって致命傷ではない。グリズリーズは2シーズン連続で西カンファレンスの2位に躍進したが、プレーオフで勝てるチームではなかった。この大きな壁を乗り越えるのが今シーズン最大の挑戦であり、シーズン序盤にモラントが不在でも、精神的に成熟して戻ってくれば問題はない。チームと行動をともにして関係性が築けているのであれば、プレーの面でモラントに不安はない。

これまでのグリズリーズには、若くて伸び盛りのタレントは多かったが、チームのために自己犠牲を払い、シーズン終盤にピークを持っていく意識が足りなかった。トップの選手はともかく、それに続く選手は春先になると勝利よりも自分の将来に意識が向き始める。

ただ、立場が保証されていない選手がそうなるのは自然なことで、それを曲げてチームを優先させるには強烈なリーダーシップが必要となる。モラントにはそれがなかったし、若い彼にそれを求めること自体が酷だ。他の選手も、これまでその類のリーダーシップは発揮できなかった。

そういう意味では、マーカス・スマートの獲得は非常に大きい。セルティックスの『チームの魂』だったスマートは、クリスタプス・ポルジンギスを巡るトレード交渉にトラブルがあったことでグリズリーズにやってきた。リーダーシップを欠く若いチームにとっては、まさに僥倖だ。

チーム始動に際し、新たなチームメートについてスマートは「素晴らしいメンバーが揃っている。若いけど才能があり、ハングリー精神がある」と満足そうに語った。そして自分がこのチームにどんな影響を与えるか、こう持論を語っている。

「自分が自分であり続けることを大事にしたい。誰かが何かをして、他の誰かがそれを気に入ったり気に入らなかったりする中でバランスを取っていく。そこで僕がいきなり強硬な態度を取ったりはしないけど、無関心であることもない。一方で僕が何か間違いを犯した時には指摘してもらいたい」

「チームの勝利が本当に大事ならば、僕が何を言っても問題はないはずだ。誰に何か厳しいことを言ったとしても、その誰かを助けたいだけで悪意がないことは理解してほしい。その逆もまた然りで、僕に指摘してくれて構わない。そういう意味で、この数週間でチームメートへの理解を深めたい」

同じく新加入のデリック・ローズは、モラントとの付き合い方について「僕は子守りじゃない」と発言した。スマートも新しいチームメートの誰一人として子供扱いしていない。

「バスケで多額の報酬を得ているんだから、シンプルで明確だ。プロとして行動するんだ。もしそれができないのであれば、言うべき言葉はない。僕たちは大人なんだから」

ヘッドコーチのテイラー・ジェンキンスを始め、グリズリーズは急成長する若手たちを愛しすぎていたのかもしれない。スマートもローズもシンプルかつ明確に『プロであれ』を求めている。数か月後、そしてシーズン終盤にグリズリーズがプロフェッショナルの集団になっているかどうか。その変化が楽しみだ。