文=大島和人 写真=B.LEAGUE

インサイド中心、外を効果的に使った秋田が主導権を握る

ともに7勝22敗という厳しい成績で2016年を終えた秋田ノーザンハピネッツとレバンガ北海道。2017年の初陣を勝利で飾りたい両チームとも、外国籍選手のオン・ザ・コート数「1-2-1-2」で試合に入った。

開始直後に田口成浩の得点で秋田が先制したものの、その後は5分近くに渡ってスコアの生まれない時間帯が続いた。北海道の水野宏太ヘッドコーチはこう振り返る。

「アグレッシブにアタックしてシュートを打てば良かったところを、パスを選択してしまい、相手に触られてターンオーバーになってしまったりということが続いていた。効果的にドライブはできていたけれど、それをスコアにつなげることができなかった」

そんな膠着状態を破り、秋田に勢いをもたらしたのが田口だ。15日のオールスターゲームで3ポイントシュートコンテストを制した余勢も駆って、残り5分17秒からスリー、スリー、ツーと1分強で3連続シュートを決める。第1クォーター残り4分5秒でスコアは10-0。そのすべてを決めた田口の『独り舞台』とでもいうべき試合の入りだった。

「田口選手のところで最初に崩されて、ディフェンスがそこから綻んでいった。田口選手がしっかりゲームを作って、ディフェンスが引っ張られる形になって、インサイドもオープンに簡単にスコアができるような形になった」と水野ヘッドコーチはそのインパクトを説明する。

加えて秋田はインサイドの働きが光った。ケビン・パルマーに変わって加入した203cm113kgのオールラウンダー、イバン・ラベネルがこの北海道戦で初登場。琉球ゴールデンキングスに所属していた15-16シーズンにはbjリーグファイナルズMVPにも輝いている期待の新戦力は、第1クォーター残り5分59秒にコートへ入ると、初登場とは思えないほどフィットしたプレーを見せる。田口が第1クォーターに決めた3ポイントシュート2本はいずれも「インサイドアウト」の形で、ラベネルのアシストから生まれたものだった。

秋田は第1クォーターを17-13とリードして終えると、その後もリードを少しずつ拡げる展開。第2クォーターの秋田はラベネル、ディショーン・スティーブンスの両外国人インサイドを中心にポイントを積み上げ、38-30でハーフタイムを迎えた。

秋田は第3クォーターに入ると流れの悪い時間帯もあったが、長谷川誠ヘッドコーチはタイムアウトで修正を図った。「しっかり焦ることなくセットオフェンス、インサイドを中心にやっていこうと。田口の調子が悪いなという時にすぐひっこめたんです。(安藤)誓哉もそうですよ。でもそういう時間帯を水町(亮介)が上手くつないだ。よくディフェンスをして、折茂選手を抑えたと思います」と長谷川ヘッドコーチは語る。

必ずしも良い時間帯ばかりではなかったが、秋田は北海道に主導権を譲らない。加えて日本代表に選出されたばかりの201cmのビッグマン谷口大智が、この10分間で3ポイントシュートを2本成功させる。田口も「あそこは(谷口)大智のスリーがすごく効いた」と振り返るように、セカンドユニットが躍動した10分間だった。

ラベネルの加入で「アウトサイド偏重」からの脱却へ

第4クォーターも秋田がインサイドを中心に北海道を圧倒した。トドメは残り5秒のビッグプレー。スティーブンスのショットブロック2連発からパスを受けたラベネルがダンクを決め、クレイジーピンクのボルテージは最高潮に達する。4つのクォーターすべてでリードを積み上げた秋田が、80-58で北海道に完勝した。

長谷川誠ヘッドコーチは「攻撃、ディフェンスともインサイドの厚みが出てきた」と勝因を説明する。秋田は田口、安藤、白濱僚祐といったアウトサイドの好プレイヤーを擁しつつ、今季は苦戦が続いていた。しかしラベネルの加入によってインサイドが間違いなく強化され、試合運びもおそらく安定していくだろう。

「3ポイントシュート(の成功率)は26%でしょう? その分2点シュートの確率が高いし、アシストも16本あった。ボールがインサイドに入って、しっかり回しながら攻めた結果だと思う。インサイド中心で攻めていかないとこういう勝ち方にはならない」と長谷川ヘッドコーチは言う。

今まで秋田はアウトサイドのシューター陣に依存し、彼らの3ポイントシュート成功率がそのまま勝敗に直結する傾向を持っていた。しかし指揮官は「3ポイントに頼らなくてもいいオフェンスの形になってくる」と今後の見通しを口にする。「バスケットIQがウチの外国人選手3人の中では一番高い」と指揮官が絶賛するラベネルの新加入で、センターとガードが連携したピック&ロールの形も迫力を増すだろう。

加えて長谷川ヘッドコーチは、12日に加入が発表された東海大出身のポイントガード中山拓哉への期待を口にする。

「即戦力だと思っている。中山のプレータイムが20分くらいになってくれればシゲ(田口)と白濱、(安藤)誓哉が休めて、上手いローテーションができると思います。中山は今までのうちの選手にないバスケットセンスを持っている。相手の先を読むプレーに期待したい」

田口、安藤が常に30分以上出続けるという状況は、軸となる選手を2人擁するメリットでもあり、その2人に過大な負荷をかけるデメリットにもなる。ほどよく休ませながら使うことでおそらく2人はより生きる。違う持ち味を持った中山が加わることで、試合運びの幅も拡がる。さらにインサイドはラベネルが加わった。秋田にとって新たな2枚のカードは、チームのバランスを絶妙に整える切り札となるかもしれない。

後半戦の『反攻』を期待させる秋田の2017年初戦と、長谷川ヘッドコーチの雄弁だった。