田臥勇太

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

ルカコーチからの指令「今日は君がアシスタントだ」

栃木ブレックスの田臥勇太は、腰を痛めたことで昨年10月下旬から欠場が続いている。それでもBリーグオールスターには、ファン投票で選出され、富山総合体育館にやって来たが、やはりプレーはかなわなかった。それでも栃木でそうしているようにチームのサポート役に回り、大会の盛り上げに一役買っている。

いつもはバスケットにどこまでも真摯に打ち込み、チームの勝利をストイックに追求しているだけに、こういう機会でだけ見せる田臥の『素の表情』は魅力的だ。プレーはできなかったが、多くの選手に自分から積極的に絡み、ファンサービスに勤しみ、オールスターという『バスケの祭典』を存分に楽しむ田臥の姿がそこにはあった。

「年に一度の機会なので、プレーできず残念です。今回は(ルカ・パヴィチェヴィッチ)コーチから『今日は君がアシスタントコーチだから隣に座れ』と言ってもらって、ベンチで横に座って新しい経験ができるぞと楽しみにしていたんです。ですが、試合が進むうちにリードされていたこともあってコーチが本番さながらに熱くなってしまって、アシスタントの存在は忘れちゃったみたいです。結局、僕は何もしませんでした(笑)」と田臥は冗談まじりでオールスターを振り返った。

田臥勇太

「ブレックスとして1試合1試合を大事に」

初のコーチ業がうまく行かなかったのは残念だが、それでも田臥はプレーヤーとして戦線復帰を前にオールスターで新たな刺激を得られた様子。「こうして全チームの選手が集まってファンの方々の前でプレーすると、あらためてBリーグを盛り上げたいって気持ちになります。後半戦も全チームで激しく戦ってレベルを上げて、見ている方々に喜んでいただけるバスケットをしたいです」

プレーできなかった悔しさは当然あるが、「この気持ちは後半戦にぶつけたいです」と、それも力に変えていく。「ブレックスとして1試合1試合を大事にして、後半戦もっとギアを上げられるように頑張ります」との言葉を残し、田臥はまた戦いの日々に戻っていく。

今週は水曜にサンロッカーズ渋谷と、金土で川崎ブレイブサンダースと、4日で3試合というタフなスケジュール。インフルエンザでオールスターを欠場せざるを得なかった渡邉裕規とライアン・ロシターのコンディションも気になるところ。それでもオールスターで活力を得た田臥がチームリーダーとして存在感を見せることで、栃木にはまた新たな力が注入されるはずだ。