フランス連盟の会長「彼と話し合いの場を持ち、その決定を待っている」
ジョエル・エンビードは来年夏のパリオリンピックに出場する意向だ。しかし、どのユニフォームを着てプレーするかはこれからの決断となる。
フランスは自国開催のオリンピックで金メダルを獲得すべく意気盛んであり、今夏のワールドカップで1次リーグ敗退という大失敗をしたことで、その意欲はさらに強いものとなっている。先日、フランスバスケットボール連盟のジャンピエール・シウタ会長が自国メディアの『RMC』に対し、エンビードの参加について「近いうちに決まる」と発言した。
エンビードはカメルーン、フランス、アメリカの国籍を保有しており、選べる立場にある。もともとエンビードの代表入りにはフランスが一歩リードしていると見られていたが、アメリカがワールドカップの結果を受けて「エンビードを招集したい」とグラント・ヒル代表ディレクターが発言。カメルーンもオリンピックの最終予選出場権を獲得し、チャンスが出てきた。
シウタ会長はエンビードについてこう語る。「公式には何も決まっていない。我々は彼に参加してほしいと強く願っており、彼はそれを知っているが、今のところ彼が何らかの意思表示をしたわけではない。アメリカもカメルーンも彼を欲しがっている。我々は彼と話し合いの場を持ち、その決定を待っている」
フランスが不安を感じているのはアメリカの存在だ。今夏のワールドカップにアメリカはパオロ・バンケロを連れていった。昨シーズンのNBAでルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いたバンケロはアメリカで生まれ育った選手だが、父はイタリア系アメリカ人。イタリアの代表関係者はオーランドを公式に訪問するなど関係性を築き、バンケロは今夏のワールドカップにイタリア代表として参加するのが規定路線だった。
ところがアメリカ代表は、ワールドカップ開幕まで2カ月となった土壇場でバンケロを招集。バンケロとしてはイタリアに自分のルーツがあると分かってはいても、彼自身はアメリカ人だと感じている。メダル獲得の可能性、自分のキャリアにとっての重要性を考えれば、アメリカ代表を選択するのは当然だった。
ただ、バンケロがアメリカにとって不可欠な存在だったかは微妙と言わざるを得ない。スティーブ・カーは彼をチームの中心として考えていたわけではないし、他にも候補となる選手はいた。それでもバンケロを招集した理由は、ライバルになり得るイタリアの伸びしろをあらかじめ削っておこうとアメリカが考えた、と見られてもおかしくはない。
エンビードはそのバンケロの何倍も価値がある。正統派のビッグマンがもたらす高さとパワーを欠いたアメリカにとって、エンビードは最もチームに加わってほしい人材と言っても過言ではない。大型センターが少なくなった今のNBAで、エンビード以上の選手はいない。
だからこそフランスには焦りがある。むしろ、ややあきらめに似た気持ちなのかもしれない。シウタ会長は「決まるとすれば、そう先の話ではない。10月10日までに答えを出すように期限を設定した」と言う。この態度をエンビードが不快に思い、アメリカ代表になびいてしまう可能性はあるが、イタリアにとってのバンケロがそうだったように、ギリギリまで判断を先送りにされてアメリカを選ばれたのでは、選手集めは後手に回るし、チームの士気も下がる。10月10日までにエンビードは決断を下すのだろうか?