デマー・デローザン

写真=Getty Images

「感情的にも、感傷的にもならなかった」

昨年7月下旬、9年間所属したラプターズからスパーズにトレードされたデマー・デローザンは、誠意が感じられなかった球団の対応にショックを受けた。しかし、気持ちを新たに、名将グレッグ・ポポビッチの下で今シーズン開幕を迎え、西カンファレンスでの戦いに身を投じている。そんな彼が、1月3日に古巣ラプターズと初めて対戦し、21得点14リバウンド11アシストの大活躍を見せ、キャリア初のトリプル・ダブルを達成した。

本拠地AT&Tセンターのスパーズファンは、カワイ・レナードらとのトレードの経緯を知ってか、デローザンがプレーを決めるたびに大きな歓声でエースを称えた。チームメートも、デローザンのトリプル・ダブルを後押しした。

デローザンは試合後「たまにスコアボードを見るんだけれど、今日は第1クォーター中に見たら5リバウンドで、次に見た時には7アシスト、9アシストにまでスタッツが伸びていた。そうしたら、チームメートから『LA(ラマーカス・オルドリッジ)とスクリーン・アンド・ロールをやって、トリプル・ダブルを決めちゃえよ』と言われてね。それで彼が僕のためにシュートを決めてくれたんだ」と、語った。

スパーズの選手としてホームゲームでトリプル・ダブルを達成したのは、2003年のティム・ダンカン以来で、ポポビッチが指揮を執ってからの23年間でトリプル・ダブルをマークしたのは、ダンカン、トニー・パーカー、パウ・ガソル、デローザンの4選手しかいない。

古巣に対する特別な感情があったかを聞かれたデローザンは、「何もなかった」と答え、こう続けた。

「昔のチームメートと雑談できてすごく楽しかった。でも、感情的にも、感傷的にもならなかったよ。ただ、楽しい試合だった」

デローザンにとっては、昨年のトレードは過ぎたことでしかないのだろう。同じことはレナードにも言える。スパーズファンからブーイングを浴びせられたレナードだったが、試合後には恩師ポポビッチ、スパーズのコーチ、元チームメートと談笑する姿が見られた。

NBAでは、目まぐるしいスピードで物事が動いていく。デローザンとレナードら当事者たちは、昨年のトレードを過去のこととして気持ちを切り替え、目の前のシーズンに集中している。