中村拓人

文=丸山素行 写真=鈴木栄一

まさかの大敗に「自分たちの考えが甘かった」

「出し切れたかと言われれば、出し切れてなかったんじゃないかと思います」。中部大学第一の中村拓人は、福岡第一とのウインターカップ決勝戦に敗れ、そう悔しさをにじませた。

福岡第一の武器は激しいディフェンスからのトランジションオフェンス。もちろんどのチームもその強みを消そうと対策を練る。中部大学第一も出足を遅らせ、ハリーバックを心掛けるなど、トランジションを封じようとしたが、それができずに85-42と完敗した。

思わぬ大敗に中村は「自分たちが考えている以上にうまかったです。自分たちの考えが甘かった」と力不足を痛感したという。

それでも、ここまで点差が開くほどの実力差があるとは思えない。「自分たちのちょっとしたリバウンドのミスだったり、パスミスやファンダメンタルのミスだったり、そういうのを全部ブレイクに持っていかれてしまった」と中村は大差がついた理由を説明する。

そして、「トランジションは分かっていたけど止めることができなかった。そこが(福岡第一の)強さだと思います」と勝者を素直に称賛した。

中村拓人

何度もこみ上げてくる涙

試合終了のブザーが鳴った瞬間や仲間と健闘を称えた瞬間など、中村はたびたび涙を流した。この取材に対応する際も、こみ上げる思いを抑えることができなかった。それは優勝という結果で、恩師や仲間に恩返しができなかったからだ。

「もともと僕はガードをやってなかったんですけど、自分が入学した時に、『お前をずっとガードとして使っていく』と言われて、1年生の時からいろいろな経験をさせてくれました。自分としては(常田健)監督に恩返しがしたいという気持ちが一番強かったので、優勝という形で恩返しできなかったのが一番悔しいので、涙が出てきました」

「コートに立てなかった3年生だったり、支えてくれた応援団があっての試合だったので。応援組を目の前にした時に、感謝の気持ちがこみ上げてきて」

中村拓人

キャプテンを任され性格に変化

決勝に敗れたとはいえ、全国準優勝という結果は紛れもなく誇れるものだ。中村も「準優勝は中部第一の歴史の中でも一番上なので、自分たちの代で出せたのはうれしかった」と笑顔を見せる。

1年生でガードに挑戦し、3年生になると人生で初めてキャプテンを任された。「自分も監督も言っているとおり、あまり話すキャラじゃないです」と、本人も自覚しているように、中村は性格的に寡黙なタイプだ。声を出して仲間を鼓舞することに抵抗もあったに違いない。「監督にも日頃の練習から声を出して引っ張っていけと言われていたので、変わらなきゃいけないなって思いました。チームをまとめないといけないという自覚は出てきたので、少しは変われたと思います」

そんな密度の濃い高校バスケ生活も今日が最後になった。「プレーではリングにアタックする気持ちが一番成長できました。精神的な部分では、チームが悪い時に『自分ではなく、周りを見ろと』言われてきたので、そこは変われました」と中村は3年間での成長を語った。

高校の3年間で大きく飛躍した中村だけに、大学でどのような成長曲線を描くのか、これからも注目したい。