デレック・ライブリー二世

マーク・キューバン「市場動向を見ながら、どんなチャンスでも利用したい」

ドラフト外から這い上がった選手を何人も抱え、チームのカルチャーを前面に押し出して何度も苦難を乗り越え、第8シードからアップセットを連発してNBAファイナルに進出。ヒートはレギュラーシーズン終盤からプレーイン・トーナメント、そしてプレーオフと、人々に感銘を与える戦いぶりを見せた。しかし、逆境に負けないヒートの強さが明らかになるにつれ、自分たちの選択と比較してみじめな気分になったチームがいる。

マーベリックスはレギュラーシーズン最後の2試合で主力選手を休ませた。その時点で西カンファレンスの10位からでもプレーオフ進出の可能性は残っており、エースのルカ・ドンチッチは「このチームのリーダーである僕が責任の多くを引き受ける。最後まであきらめない」と執念を燃やしていた。ところがマブスのフロントは、勝負を捨てることを指示。指揮官のジェイソン・キッドも「みんなプレーオフに何とか進みたいとの思いだったが、違うことをするよう指示された。組織の決断には従わなければならない」と悔しそうに語った。

ただ、フロントにはフロントの考えがある。チームに悔しい思いをさせ、ファンを憤慨させた代わりに得たのは1巡目10位のドラフト指名権で、これを最大限に活用した。

まずは10位指名権とダービス・ベルターンスを放出し、12位指名権と交換するトレードをサンダーとまとめた。クリスタプス・ポルジンギスとのトレードで2022年2月に獲得したベルターンスだが、すでに力が衰えてマブスでもフィットできず、残り2年で2100万ドル(約28億円)が保証されていたサラリーから解放されたのは大きなメリットとなる。さらに1700万ドル(約23億円)のトレード選手例外枠も手に入れた。マブスはこの枠を、キングスのリショーン・ホームズ獲得に使った。キャップスペースを空けたいキングスとのトレードをまとめ、ホームズと24位指名権を獲得したのである。

こうしてNBAドラフトに臨んだマブスは、12位でデレック・ライブリー二世を指名。デューク大出身で、今回のドラフトではビクター・ウェンバニャマに次いでリムプロテクト能力が高いとの評価を得る身体能力に優れたセンターだ。もともとマブスはフロントコート強化が目的で、ライブリー二世に目を付けていたが、競合するチームはセンターを必要としてはいなかったため、10位から12位への指名順位を下げたことは何の痛手でもない。本命のライブリー二世を指名したことに加え、余剰戦力のベルターンスを年俸の安いバックアップセンターのホームズと交換できた。

さらに24位で指名したオリビエ・マクセンス・プロスパーは、運動量と長い手足を生かした粘り強いディフェンスのできるウイングで、ドリアン・フィニー・スミスの穴を埋める働きが期待できる。プロスパーは『CBS』の取材に「多くの選手が20得点すべきだと思っているけど、彼らが注意を払わない部分を僕は埋めたい。複数のポジションを守り、ハードに戦い、カットしてフィニッシュしてリバウンドを取る。2人のスーパースターがいるチームでどう貢献するかを考えたい」と語っている。

そして今、オーナーのマーク・キューバンはマブスの一連の動きに満足している。地元メディアの『97.1 The Freak』に出演した彼は、「必要なポジションと必要なスキルを得られた」とドラフトを振り返る。

キューバンはライブリー二世について、12位で指名できる保証がなければ10位指名権のまま獲得していたと明かす。プロスパーはシーズン終了直後の時点で、ニコ・ハリソンGMから「ドラフト外で取れそうな良い選手がいる」と名前が挙がっていたそうだが、ワークアウトで「この選手はドラフト外まで残らない」と評価を格上げし、24位での指名に至った。

キューバンはこうも語る。「ニコラ・ヨキッチが良いことを言っていたよ。『まずは負けて、そこから向上する』とね。勝つためには負けることも必要だ。昨シーズンはひどかったが、我々は失敗から学んで前進するんだ」

そして今後のフリーエージェント、トレードでも「アクティブに動くつもりだ」と宣言した。「サラリーキャップのルールが新しくなる今、このタイミングでどのチームも様々な調整が必要となる。変化はチャンスだ。ニコは全チームとずっと会話している。どうなるかはまだ分からないが、選手の価値、フリーエージェントやサイン&トレードの市場動向を見ながら、どんなチャンスでも利用したいと思っているよ」