「いろんなことを乗り越えてチームは自信をつけてきた」
ヒートは開幕からホームでの4連戦を1勝3敗と低調なスタートを切り、レギュラーシーズンを通じて不安定なパフォーマンスに終始して44勝38敗の8位となった。今はプレーイン・トーナメントからのプレーオフ進出を目指す戦いの最中だが、もともとレギュラーシーズンで力を発揮できなかったチームが、過密日程のハンデを抱えて上位チームとのファーストラウンドでの勝ち目は薄いとの見方も強い。
その見方は当然ではあるが、ヒートに関しては大ベテランのユドニス・ハズレムが「チャンスはある」と断言している。すでに数シーズン前から主役の座を若手に譲り、ヒートのカルチャーであるハードワークを伝えるメンターとしてチームを支えてきた彼は、ヒート一筋20年のキャリアを今シーズン限りで終えると公表済みだ。
今シーズンの出場はレギュラーシーズン最終戦を残した時点で6試合のみ。その彼が、最終戦のマジック戦で約2カ月ぶりに出場し、しかも先発を任されると24得点で勝利に貢献した。地元出身、ドラフト外入団からの叩き上げである彼の最後の雄姿を見ようと集まったファンの前で、自らの花道を鮮やかに演出したのだ。
「これだけの結果を想像していたわけじゃないけど、昨日の夜はいろんなシナリオを想像したよ。コービー(ブライアント)は現役ラストゲームで60得点を挙げたけど、僕には無理だ(笑)。トリプル・ダブルもキツい。でも、自分らしいプレーを思う存分やろうと思った。リラックスして、自信を持ってプレーしたかった」とハズレムは言う。
「試合のすべてを楽しみ、リズムに乗り、感情をプレーにぶつけた。後悔を残さないよう、すべての瞬間を大事にした。最初のシュートは外したけど、そこから試合が始まったつもりで自信を持ってプレーしたよ。はっきり言って、めちゃくちゃ楽しかった」
試合後にはバム・アデバヨからロッキングチェアを送られたハズレムは、そのプレゼントを大喜びで受け取った。これまでずっとハードワークでヒートを支えてきた彼は、これからはこの椅子に座って仲間たちのプレーを見守ることになる。
ポストシーズンのヒートの躍進を、ハズレムは信じて疑わない。「今のウチはかなり危険なチームだ。もちろん、試合はやってみなければ分からないけど、今シーズンを通じて経験した良いことも悪いことも、すべてが僕たちをここまで導いてくれた。いろんなことを乗り越えてチームは自信をつけてきた」
「全体的に見て、NBAでトップ10の力はあると思う。ただ、自分たちのバスケができなかっただけ。ポストシーズンは新しいシーズンで、新たなチャンスだ。あとはタイミング良く勢いに乗るだけだよ。僕はワクワクしている」
現地4月14日にヒートはプレーイン・トーナメントの2戦目をブルズと戦う。そこで勝てば、東カンファレンス1位のバックスに挑戦することになる。ハズレムはまだロッキングチェアには座らないが、チームの実力に信頼を寄せ、大成功を収めると信じている。