マーベリックス

「チャンスがある限りは戦う」と語っていたドンチッチも試合序盤で下げる

現地4月7日、マーベリックスはホームでのブルズ戦に、カイリー・アービング、クリスチャン・ウッド、ジョシュ・グリーン、ティム・ハーダウェイJr.とマキシ・クレーバーを出場させなかった。エースのルカ・ドンチッチは先発したが、第2クォーター最初のポゼッションを終えたところでベンチに下がり、13分しかプレーしなかった。

ブルズはデマー・デローザンにザック・ラビーン、パトリック・ベバリーを欠場させていたが、それでも115-112で勝利。かくして昨シーズンはカンファレンスファイナルに進み、ドンチッチとカイリーというオールスターのスターター2人を擁するマブスが、プレーイン・トーナメントにさえも進めないことが確定した。

ヘッドコーチのジェイソン・キッドは試合前の時点で、「我々は命懸けで戦っていた。ルカは勝ちたかったし、みんなプレーオフに何とか進みたいとの思いだった。しかし、今日は違うことをするよう指示された。組織の決断には従わなければならない」と苦しい胸の内を明かしている。

サンダーを逆転して西カンファレンスの10位に食い込んだ場合、マブスはプレーイン・トーナメントを勝ち抜けるだろうか。キッドは「そう信じている」と語ったが、オーナーのマーク・キューバンとニコ・ハリソンGMは逆のことを考えた。「それに同意したのか?」との問いに対し、キッドは「彼らが私のボスだ。だからイエスだ」と答えている。

今年のドラフトにおけるマブスの1巡目指名権は、クリスタプス・ポルジンギスのトレードにより、11位以下であればニックスに譲渡される。マブスは下から10番目でシーズンを終え、ロッタリーを待つ。約20%の確率で11位から14位の指名権を引き当てればニックスに譲らなければならないが、約66%の確率で10位指名権を確保でき、4位以上の指名権に変わる可能性が約14%ある。

試合後のキッドは「このビジネスでは、時に難しい決断をしなければならない」と言う。「我々は優勝できるチームを作ろうとしている。今日の決断は一歩後退かもしれないが、上手くいけばそれが前身に繋がる。我々はここから学び、成長しなければならない」

ホームの観客の前で主力選手たちをベンチに座らせ、プレーオフ進出の可能性を自ら断ち切る決断をマブス首脳陣は下したわけだが、課題はここから山積みとなっている。マブスは今シーズンのサラリー総額でリーグ5番目のチームで、カイリーと新契約を結べば、ドンチッチとカイリーの2人でサラリーキャップのうち8000万ドルから9000万ドルを取られることになる。このデュオのディフェンスに課題があるのは明らかで、それでもチームとして攻守のバランスを取る方法をどう見いだすのか。10位指名権で何とかできる課題ではないのは明らかだ。

そして、懸念されるのはドンチッチの感情だ。今回の首脳陣の決断は「チャンスがある限りは戦う」というドンチッチの思いを踏みにじるものだ。ドンチッチはハーフタイムにシャワーを浴び、後半はトレーナー姿で試合を見守って、試合後にはメディアの取材に応じることなく沈黙のままアリーナを去っている。

『戦わない』という決断は選手にとって屈辱的なもので、キッドもそれを飲み込んだ苦々しさを隠そうとはしなかった。クラブ首脳陣によるこの決断は、ドンチッチとの間に決して小さくない遺恨を残すかもしれない。