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選手やコーチからも愛された名リポーターの死を悼んで

長期に渡る闘病の末、12月15日に永眠したNBA名物リポーターのクレイグ・セイガーを称賛する声は後を絶たない。昨シーズン限りで現役を引退したコービー・ブライアントもその一人だ。

ブライアントは『ESPN Radio』の番組に出演した際、セイガーがNBA選手に慕われた理由について、こう語っている。

「選手は皆、彼と話すのを楽しみにしていた。その理由は、まず彼がどういう服装かが気になったことと、どうしてその服装なのかを聞くのが楽しみだったこと、そして彼の活力だね。彼はいつだって、すごいエネルギーとともに選手の話を聞いていた。試合に関する造詣の深い人にしか聞けない素晴らしい質問ばかり投げかけてきてくれた。アスリートが心を開いて話せるリポーターだったと思う。彼のような才能は本当に稀だと思うんだ」

現役時代は気難しいことで知られたコービーも一目置いていたセイガーは、インタビューでも他のリポーターとは異なる手法を用いた。

「彼が他のリポーターと違ったのは、質問の柔軟性だった。たいていアスリートは、聞き手がインタビューで特定の方向に話を持っていこうとすることに気が付く。どういう話に持っていこうとしているのかが分かってしまうんだ。クレイグの場合は、そういうものが一切なかった。彼が質問して、アスリートが答える。その答えを聞いて彼は次の質問を決めていく。だから、フレンドリーな会話のようなインタビューだった。インタビューをしている感じがなかった。それが一番の違いだね」

コービーだけではなく、意味のない質問には一言程度しか答えず周囲を凍りつかせることも多いスパーズ指揮官のグレッグ・ポポビッチも、セイガーにだけは心を開いていたように見えた。2014年に急性骨髄性白血病と診断されたセイガーが現場を離れた際、セイガーの息子クレイグ・セイガーJr.とのインタビューに応じた際、珍しくテレビカメラを通じ、「クレイグ、君はNBAの重要なパートを担っているんだ。早く戻ってこ来い!」とエールを送ったほど。そして、悲報を耳にしたポポビッチは、セイガーとの思い出を振り返り、「プロである以上に、素晴らしい人間性を持った人物だった」と称賛した。

杓子定規に働くのではなく、スター選手たちとも心と心を通わせることができた稀代のリポーターの旅立ちを惜しむ声は、今後しばらくは止みそうにない。

ポポビッチへのインタビュー。気難しいとされるポポビッチもセイガーには気を許した。