ベン・シモンズ

シクサーズ時代から得点は半減「今はパスが見えすぎている」

現地1月12日、東カンファレンスの首位対決となったセルティックスvsネッツは大きな注目を集めた。ネッツはケビン・デュラントを、セルティックスはジェイレン・ブラウンをケガで欠く状況で、チームとしての成熟度で上回ったセルティックスが第4クォーターに25-16と差を見せ、109-98で勝利している。

ネッツもまずまず良い戦いを見せたのだが、やはりデュラント不在の穴は大きい。特に終盤の勝負どころで彼の不在は大きく、カイリー・アービングがその穴を埋めようと奮闘したものの、それが焦りに繋がった。カイリーのフィールドゴールは10本中3本成功と打っても打っても決まらず、第4クォーターでチームのアシストはわずか2と、チームでのオフェンスがない状態。対するセルティックスはパスがよく回り、出場した8選手全員が得点するチームバスケットが機能した。

カイリーには全部一人でやりたがる癖があるが、デュラント不在の状況では仕方のない面もある。その一方で気になるのがベン・シモンズのパフォーマンスだ。

先発で起用されているシモンズは26分の出場で9リバウンド13アシストを記録したが、得点はゼロ。シュートを試みたのは3本だけですべて外し、フリースローも1本も得られなかった。彼のプレー自体は悪くない。むしろ今シーズンの中でもベストに近く、デュラント不在の状況で彼のボールプッシュに合わせた『走るバスケ』が機能し、味方のイージーシュートを演出することでアシストを13まで伸ばした。

しかし、アシストだけでなくディフェンスとリバウンドも計算できるにもかかわらず、勝敗が懸かった第4クォーターでのシモンズのプレータイムは3分弱。ヘッドコーチのジャック・ボーンは「ベンはアシストでチームに貢献しようとチャレンジしている」とシモンズを評価したが、勝負どころでベンチに置いたことに変わりはない。

リム付近までドライブで侵入したにもかかわらず、シュートに行かずパスを選択したシーンでは、ネッツファンからブーイングとは言わないまでも失望のため息が漏れた。シモンズにとっては、セブンティシクサーズで経験した悪夢の再来がよぎったことだろう。

「もっとアグレッシブに行かなきゃいけない。それをチームが必要としているのは分かっているんだ」とシモンズは言う。「多分、今はパスが見えすぎているんだ。ボールをプッシュして、オープンになっている選手を見付けるとパスを出してしまう。もっと自分本位でプレーすることも必要なんだろうね」

昨シーズンはセブンティシクサーズでプレーすることを拒否し、シーズン途中にネッツに移籍。結局、1試合にも出場しなかった。今シーズンは及第点以上のプレーを見せて7.5得点、6.7リバウンド、6.2アシストという数字を残しているものの、かつてのオールスタークラスのパフォーマンスではない。特に得点はデビューシーズンからの4年間の平均から半減している。デュラントとカイリーが得点を取ってくれる間はそれでいいかもしれないが、今はシモンズにも得点が求められる。

さらに言えば、優勝を目指すネッツにとって戦術の幅の広さが問われるプレーオフで勝つためには、シュートを打てない選手がいるのは好ましくない。相手の対応が楽になり、勝負どころで致命的な差が出かねない。このセルティックス戦がそうだったように、勝負どころで主力であるシモンズが戦術的理由で使えないのは痛い。

セルティックス戦でのシモンズは、出場した9選手で唯一得失点差がプラス(+10)の選手だった。これだけのパフォーマンスを見せて議論の的となるのは彼にとって酷ではあるが、戦犯に仕立て上げられたシクサーズとは違い、ネッツでの彼は期待されているからこそ多くを求められている。シモンズもそれを理解しているから、応えようとしている。ポストシーズンを見据えて、シモンズがシュートスランプというトラウマを克服できるのかが、ネッツの成績を大きく左右しそうだ。