オールコートディフェンスで相手のミスを誘発し、残り5分半で11点差をひっくり返す

ウインターカップ男子準々決勝で中部大学第一と洛南が対戦。最後までどちらが勝つか分からない激闘となったが、第4クォーターで合計15個のターンオーバーを誘発し、わずか7失点とここ一番での堅守が光った中部第一が73-71で制し、準優勝した2018年以来となるベスト4進出を決めた。

中部第一は、試合の立ち上がりからサイズの優位を生かしたインサイドアタックと確率の良い3ポイントシュートを決めるバランスの取れたオフェンスで得点を重ねていく。だが、一方で洛南の5アウトからのドライブを抑えるのに苦戦。ドライブからのキックアウトなどを受けて前半だけで7本の3ポイントシュートを決められてしまい、44-43と得点を取り合って前半を終える。

しかし、第3クォーターに入ると中部第一はインサイドに固執し過ぎることでオフェンスが単調となり、徐々に洛南のペースとなる。第4クォーターに入ってもフリースローのミスなどちくはぐなオフェンスが続くと、残り5分半には60-71と2桁のリードを許してしまう。だが、この土壇場で中部第一は司令塔の下山瑛司が連続で3ポイントシュートを沈めて息を吹き返す。

これで落ち着きを取り戻した中部第一は、オールコートディフェンスを仕掛けて洛南から余裕を奪い、パスミスを誘発する。そして、残り26秒にセットプレーから小澤飛悠がゴール下のイージーシュートを決めて逆転に成功すると、残り1秒に辻永遠が放った同点シュートを懸命のディフェンスで防ぎ勝利をつかんだ。

「あそこまで空くと、最後は打ち切って決めてやろうという気持ちはありました」

劇的な逆転勝利の立役者となったのは、14得点6アシストを記録した下山だ。この試合は14得点6アシストを記録。11点リードを許した直後の連続3ポイントシュートや、残り26秒での逆転シュートを導くアシストなどここ一番での勝負強さが光った司令塔は、「最後までベンチメンバーも含めてチームが下を向かないように声を出してチーム一丸となってできたことが勝因だと思います」と語る。

そして、劣勢の中でもディフェンスから流れを引き寄せることを意識したと続ける。「ディフェンスからブレイクがうまく出せずにズルズルと洛南さんの流れで行ってしまいました。ですが、自分たちのやりたいことを続ければ最後は絶対に流れが来ると思って、相手にやりたいことをやらせないディフェンスを心がけていました。あとはチーム全体が一つになれたことが大きいです」

試合の大きな別れ目となった第4クォーターの連続3ポイントシュートだが、この前まで下山の3ポイントシュートは2本打って2本とも失敗。洛南のディフェンスが彼のドライブを警戒し、前にスペースがあっても長距離砲を狙わずにいた。だが、この土壇場で下山は強気の姿勢を取り戻した。「あそこまで空くと、最後は打ち切って決めてやろうという気持ちはありました」。そして常田健コーチも次のように指示をしていたと振り返る。「下山のところも下がっていたけど、無理してレイアップを狙っていたので最後は思い切って3ポイントシュートを打ちに行かせました。練習を信じろ、みんながそこでシュートと思うところで打てばリバウンドに繋がる。そこが最終的に形になったと思います」

明日のベスト4で中部第一が挑む相手は、世代随一のポイントガードである轟琉維を擁する福岡第一だ。轟と崎濱秀斗の強力ガード陣を抑えるには下山のさらなるステップアップが欠かせない。常田コーチも次のように期待を寄せる。「(試合全体としては)もうちょっと冷静にやって欲しかったですが、最後は冷静でした。明日、轟君ともう一回やれますので、最高の相手と良いゲームができたらと思います」

そして下山本人はこう闘志を燃やしている。「すごく楽しみです。自分が止めてやろうという気持ちとあとは仲間を信じてやりたいです」

福岡第一に勝つには今日の第4クォーター残り5分から見せたプレーを40分間続ける必要がある。そのためには攻守の両方で下山がリーダーシップを発揮してチームを牽引し、司令塔として轟を超える輝きを放つことが求められる。