辻直人

取材=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

悔やまれる一戦「審判とも戦って、すべてが悪循環」

川崎ブレイブサンダースはアルバルク東京との連戦を1勝1敗で終えた。11月10日の初戦は79-66と完勝したが、続く第2戦は70-87の敗戦。ただでさえ負けて週末を終えたくはないものだが、さらにこの試合は審判と戦ってしまい、北卓也ヘッドコーチが退場処分を受ける後味の悪いものとなってしまった。この第2戦で辻直人は5得点。5試合続いた2桁得点が途切れるとともに、チームの連勝も5で途切れてしまい、試合後の表情はさすがに浮かない。

「第1戦が自分たちのやりたいバスケットができた試合で、今日は東京さんがそれを上回るほどの闘争心を出してきました。これが本来の東京さんだと思います。逆に自分たちは動きが止まる場面があり、個々の力で打開するのが目立ったゲームでした。それは本来の自分たちのバスケットではなく、連敗していた時期のバスケットに戻ってしまいました」

個人としても反省は多く、「シュートも単発になってしまい、全部入らなかったですし、中盤から終盤にかけては審判とも戦ってしまって、すべてが悪循環でした」

第3クォーター終盤に辻が初めての3ポイントシュートを成功させて42-60。勝利を手中に収めかけているA東京が、辻の3ポイントシュートを警戒するのは当然のこと。次のポゼッションで大きく動いてフリーになった辻が再び3ポイントシュートを狙うが、バランスを崩しながらもチェックに行った馬場雄大が遅れて辻の足元に飛び込む形に。ここでファウルがコールされなかったことに猛抗議した北卓也ヘッドコーチが逆にテクニカルファウルを受けたことで、意識がジャッジへと向いてしまった。その後、チームは2度のベンチテクニカルを宣告され、北ヘッドコーチは退場。17日のレバンガ北海道との第1戦ではベンチに入ることができなくなった。

コート上では熱くなっていた辻だが、試合後は「切り替えられないまま終わってしまったのが今日のゲームでした」と、本来は追い上げてA東京を苦しめるべき時間帯に集中できなかったことを悔やんだ。

辻直人

「今年はチームの優勝が一番に思えています」

チームと辻個人は歩調を合わせるように調子を上げていたが、今回は厳しい敗戦を喫した。それでも復調気配をこれで断ち切るようではいけない。勝っても負けても課題を見付けては修正し、積み上げていくのがリーグ戦では肝心なところ。当然、コンディションの管理も重要となる。復調している感覚について「それは確実に自分の中である」と強調する辻だが、「疲れは正直なところありました」とも明かす。

「ただ、個人の調子とか疲れを除いたコンディションは戻ってきているので、そこは自信を持ってやっています。開幕戦の自分に戻れているというか、代表戦もありますけど、今年はチームの優勝が一番に思えていますし、1戦1戦勝ちたい気持ちが強い」と辻は言う。

大阪でのゲームでは両手を耳に当てて「もうここまで顔を出しています」という表現で『本来の辻直人』が戻って来ている様子をアピールした辻だが、この日は「昨日はもう顔を出していたんですけど、また引っ込みました」と苦笑いだった。

長いシーズン、一つの勝ちにこだわる姿勢も大事だが、勝ち負けに一喜一憂しすぎず、前向きな姿勢を保つことも必要となる。スランプを脱した今、負けても辻が下を向くことはない。「ちょっと今日はチームに迷惑をかけました。次の北海道戦に向けてまた万全にしたいと思います」

その辻は現在、日本代表の合宿中。コンディション管理がとりわけ難しい1週間になってくるが、その経験は十分にある。今の彼であれば問題なくこなして、週末の試合を迎えるに違いない。