アンソニー・デイビス

「ファンが見たいのはチームの勝利で、僕はそれに集中する」

レイカーズが今シーズン初勝利を挙げたナゲッツ戦、試合終盤にアンソニー・デイビスは何度か腰を抑えて苦悶の表情を浮かべた。第4クォーターはレイカーズが終始10点前後のリードを保つ展開だったが、開幕5連敗の内容を振り返ると油断はできない。ナゲッツに良いプレーが出るたびに、レイカーズの選手たちへかかるプレッシャーは重くなっていくようだった。

その状況でデイビスはディフェンスとリバウンドで身体を張り、ニコラ・ヨキッチとアーロン・ゴードンを相手にゴール下で渡り合った。本来であれば敵に弱みは見せたくないはずで、腰に手を当てたのはよほど痛みがあったのだろう。指揮官ダービン・ハムは「一度ベンチに下げようとしたんだが、彼は手でそれをさえぎった」とコメントしている。

それでも、勝利は何よりの特効薬だ。遅すぎるシーズン初勝利ではあるが、これで精神的にはグッと楽になる。試合後のデイビスは「精神的にはとても良い状態にあるよ」と、腰の痛みについて触れようとしなかった。「心を落ち着かせてバスケに取り組んでいきたい。ケガの心配はないわけじゃないが、夏にしっかりトレーニングしてきたつもりだ」

彼は今シーズンの第一の目標に「レギュラーシーズン82試合すべてに出場すること」を掲げた。この目標は開幕5試合目のウルブズ戦で潰えてしまったが、そこを休養にあてて臨んだナゲッツ戦だっただけに、途中で退くわけにはいかなかったし、負けるわけにはいかなかった。常勝を義務付けられるレイカーズで、チームを引っ張る責任は重い。だが、彼にはそれに向き合う覚悟がある。

チームが勝てなければ、そしてケガが理由であっても満足なプレーができなければ、手厳しい批判を浴びるのがレイカーズの主力選手の運命だ。『LA TIMES』の取材で、デイビスはこの状況にどう立ち向かっているかを明かしている。

「ファンは僕たちを応援してくれるけど、彼らは舞台裏で何が起きているのかを知らない。彼らが見るのは試合だけ。鏡を見て『どうすればもっと良くなるのか』を一番考えているのは僕なんだ。だからファンどう言われても気にしない。ファンが見たいのはチームの勝利で、僕はそれに集中する」

『TNT』で解説者を務めるチャールズ・バークレーは、ペリカンズ時代のデイビスを「NBAのトップスター選手になる」と予想していたが、同時に手厳しい批判もしている。「ケガが多く、ピークは過ぎた」との旨のコメントを何度もしているのだ。これについてデイビスは言う。「ファンが言うのと同じで、何と言われようが関係ない。僕はバスケをプレーするのが仕事だけど、彼はしゃべるのが仕事だ。視聴者を喜ばせるようなことを言わなきゃいけないのさ」

それでもバークレーの発言にも一理ある。彼は現在のデイビスについて「スキルはリーグでもトップ5に入るが、とにかくコンディションに難なくシーズンを乗り切れるかどうか」と言う。それ以上に彼が強調するのは、レイカーズの浮沈を左右するのはデイビスだということだ。

「レイカーズが本気で優勝を狙えるかどうかはデイビス次第だ。レブロンじゃなくデイビスなんだ。彼が健康を維持して、相手を倒すという闘志をむき出しにして、リーグトップ5に入るパフォーマンスを見せられれば、レイカーズはNBAファイナルに進める」

振り返ればレイカーズが優勝した『バブル』のシーズン、デイビスは絶好調だった。どうしてもチームを引っ張るイメージは実績豊富なレブロン・ジェームズにあるが、実際にプレーの面でデイビスの影響力は引けを取らず、しばしば上回っていた。その再現をするためには、彼が当初掲げた「82試合出場」はむしろマイナスだろう。スロースタートでもいい。長いシーズンの最後にピークを持っていくマネジメントが、レイカーズにもデイビスにも問われる。