ディアロン・フォックス

連携されたオフェンスの中でフォックスのドライブ力が光る

開幕5試合目でようやく初勝利を手にしたキングスですが、なぜ4連敗したのか不思議なほど内容は充実しており、「今年こそは」という期待を抱かせています。毎シーズン補強を繰り返しながらも勝利が遠く、NBAで最も長くプレーオフから遠ざかっているキングスは『万年弱小チーム』と認識されてしまっていますが、その評価を覆すシーズンになるかもしれません。

エースのディアロン・フォックスは止められないスピードでペイントを攻略していくオフェンス力に磨きをかけてきましたが、今シーズンに劇的に変化したのがディフェンスで、対応の悪さで逆を取られることはあっても、驚異的なスピードで一瞬にして距離を詰め、長い腕を利用してプレッシャーを掛けています。身体能力に依存してはいるものの、オフェンスで大きな仕事を担いながら、ディフェンスでもハードに動き回る姿勢は、チームのカルチャーそのものを変革する意思を感じさせます。

リムプロテクト力が低いドマンタス・サボニスをセンターに置くため、個々のマンマークで相手のドライブを止めきることが重要で、フォックスに引っ張られるように全員が気を緩めず奮闘しています。ただし、そもそもスターターにはディフェンス力の高い選手がいないため限界もあり、結局は得意のオフェンスに活路を見いだすことになります。ベンチにはデイビオン・ミッチェルやKZ・オクパラが控えているものの、安易にディフェンダーのカードを切れないほど、オフェンス面での連携の良さが生まれています。

連携を生み出す最大の要因はドラフト4位で指名したキーガン・マレーで、ルーキーとは思えぬ質の高いオフボールムーブとシュート能力で、あっという間に信頼をつかみ、チームで最も長いプレータイムを得ています。1on1で仕掛けることがほとんどないにもかかわらず、常に動き回って空いたスペースに飛び込み、チームメートのパスを引き出し確実にフィニッシュすることで、フォックスに次ぐ18.8得点を稼いでいます。

マレーとの相性の良さを見せるのがホークスからトレードで獲得したケビン・ハーターで、動き回るマレーに合わせてポジショニングを修正してフロアバランスを整え、3ポイントシュートでディフェンスを外に引っ張り出します。マレーとハーターはキングスに足りなかったオフボールの質を大きく向上させ、それがポイントセンターとしてのサボニスの能力を輝かせることに繋がりました。次々とポジションを入れ替える3人の連携でオフェンスが構築され、間を縫うようにスピードで翻弄するフォックスのドライブが決まっています。

スターターで唯一、チームの流れに乗れていないハリソン・バーンズは10.4得点とスタッツとしては低空飛行ですが、初勝利となったヒート戦は終盤の苦しい時間帯に、1on1からのタフショットをねじ込みました。チームの連携が機能している限りスポットシューターの役割に留まりそうですが、試合を決める場面ではバーンズの個人技が必要になります。チームオフェンスと個人技が上手く配分されれば、キングスのオフェンスは止められそうにありません。

攻守に大きな改善が見られる今シーズンですが、華麗なオフェンスで得点を奪った直後に3ポイントシュートをあっさり返されるなど、例年通りの「勝てそうで勝てない雰囲気」も漂っています。内容は良くても開幕から4連敗したことが物語るように、歯車が崩れるとなかなか立て直せず、長い連敗をしてしまうのが毎シーズンの悩みでもあります。魅力的なオフェンスを展開できているだけに、自分たちのポテンシャルを信じ抜くことが重要なシーズンになります。

https://youtu.be/vISNlPYNYuU