ニック・ファジーカス

昨シーズン、川崎ブレイブサンダースは天皇杯連覇を達成したが、リーグ戦は2シーズン続けてのセミファイナル敗退と頂点にあと一歩届かずに終わった。Bリーグ誕生以降では初となる悲願のリーグ制覇、天皇杯3連覇の二冠を目指す上で今シーズンもチームの絶対的なエースを担うのがニック・ファジーカスだ。37歳の大ベテランとなっても、その卓越したシュート力で得点を量産している彼だが、昨シーズンは彼自身にとっても満足のいくプレーではなかった。新シーズンで雪辱を果たそうと静かに闘志を燃やす臨むファジーカスの思いを聞いた。

「ロードマネジメントは好きじゃない」と語るチームへの忠誠心とファンへの思い

――昔と比べるとシュートを打つ本数が減っていると言いましたが、それでもファジーカス選手が川崎のエースであることは変わりません。引き続き1試合平均20得点、10リバウンドを狙っていきたい気持ちはありますか。

僕を信じてほしいですが、この数字を挙げることはできると思っています。それができれば、自分の役割を果たしてチームの成功に貢献できていることになるはずです。昨シーズンは平均20得点、10リバウンド(19.7得点、8.9リバウンド)に届かなかったので、今シーズンは達成するつもりです。そして、今夏のワークアウトでは特にシュートタッチなど3ポイントシュートに力を入れており、50-40-90を達成したいです。(左から2ポイントシュート、3ポイントシュート、フリースローの成功率で、一流シューターの証とも言われる数字)

――自身の年齢も考慮すると、チャンピオンシップに万全のコンディションで臨むためにも、レギュラーシーズンのプレータイムは長くても25分に制限した方がいいとか、思うことはありますか。

そういうメンタリティは好きじゃないです。休養日を作るロードマネジメントを行なったり、プレータイムを制限することで、より効果的にプレーできるという考えもあるでしょう。ただ、それはチーム、チームメートとってフェアではない。週末は連戦だからとプレータイムが減るのは僕にとって論理的な選択ではないです。僕の世代は、ロードマネジメントという考えがなかった時代からプレーしています。チームは僕の仕事に対して給与を支払う。自分が健康であるなら常に仕事をやりたいです。そして試合を見に来る人たちには、ファジーカスを見たいと思って来てくれる人もいるでしょう。それを考えると、プレーできるのにコンディション調整で欠場するのはファンの人たちに対してもフェアではないです。

――宇都宮、千葉ジェッツ、アルバルク東京とこれまで上位を争ってきたライバルチームは、今オフに揃ってヘッドコーチが代わりました。この点について、どう感じましたか。

ここまで上位チームが揃ってヘッドコーチが代わるのは奇妙な感じですね。それがどんな結果になるにせよ、現時点で大きな出来事であることは間違いないです。各チームがどのように変わっていくのかは興味深いです。その中で僕たちは新しい選手も入っていますが、チーム体制は基本的に同じです。特にシーズン序盤においては、そこがアドバンテージになると思っています。

ニック・ファジーカス

「昨シーズンはおそらくキャリアの中で最も出来が悪いシーズンの一つだった」

――開幕が近づき、あらためてどんな心境ですか。

シーズン開幕を前にした心境は、これまでと変わらないです。10月1日の開幕まで待ちきれない気持ちです。日本に来た当初や5年前とメンタリティは同じで、自分がベストプレーヤーであることを示したい。川崎はBリーグになってからリーグ優勝をしたことがないので、チームとして証明しなければいけないことが多く残っています。

――すでに様々なタイトルを獲得していますが、それでもいまだに自分の力を証明したいと、ハングリーでいられる秘訣を教えてください。

ハングリーであること、そしてシンプルに試合が好きだからです。まだまだ、自分を成長させるための挑戦を楽しんでいます。そこは自分のプライドにかかわってきます。僕は試合で活躍できなくなって、「これはただのバスケットボールだし、大した問題じゃない」と割り切ることはできない。そういう状況では寝つきが悪くなるタイプの人間です。引き続きプレーの質、試合の結果にこだわっていきます。引退する時まで、その状況に変わりはないと思います。「自分は歳を取ったから、動きが悪いのは仕方ない」、このような考えを自分が受け入れるようになったら引退する時です。昨シーズンはおそらく自分にとってキャリアの中で最も出来が悪いシーズンの一つだったので、今シーズンはもっと良いプレーをしたいです。

――昨シーズンもいつもと変わらないハイパフォーマンスに見えました。レギュラーシーズンベスト5にも選出されました。

多くの選手たちが投票してくれてベスト5に選ばれたように、昨シーズンも支配力を持った選手と見てくれている人は多かったと思います。数字の面では今までと大きな違いはなかったですが、映像を見ると自分の動きが重かったり、本来の動きではなかったと感じました。だから、今シーズンはオフから身体を絞っていて、よりアクティブにプレーできるようにしていきたいです。年齢は数字にすぎない。まだ、リーグのトップレベルの選手たちと競うことができると思っています。今シーズンも再びベスト5を受賞するようなプレーができれば、チームを次のレベルに引き上げることができます。

――Bリーグでは外国籍選手のレベルも年々上がっています。自分より一回り若く、欧州での実績十分なビッグマンとの対戦にどのようなメンタリティで臨んでいますか。

Bリーグに来たばかりの選手は、僕を見ると「年を取った選手で、動きも速くない。今日は楽な夜になるだろう」と思うかもしれないけど、そうはさせません。アンダードッグの精神で、自分より若くて動ける選手たちとの対決を楽しんでいます。川崎と対戦する時は、しっかり準備をしないといけないと思わせるつもりです。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

皆さんと再会できるのを楽しみにしています。開幕からとどろきアリーナで人数制限がなくなることはうれしいですし、そこでより多くの皆さんの前でプレーしたいです。あともう少しでお会いできるのはうれしいです。

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