杉本天昇

学生界を代表するスコアラーとして、鳴り物入りで群馬クレインサンダーズに入団した杉本天昇だったが、想像していたものとはまったく異なるルーキーシーズンを過ごした。日本大4年次のシーズンを終え、特別指定としてチームに加わった2月に左膝前十字靭帯を断裂。約9カ月をかけて復帰したものの、出場試合数は18試合、平均出場時間は3分台に留まった。そのような背景もあり、新潟アルビレックスBBで迎える新シーズンは、杉本にとって本当の意味でのプロ1年目となる。「今シーズンに懸ける思いは誰よりも強い自信がある」と話す杉本は、開幕の時を待ちわびている。

「キャプテンの澁田をサポートできるように」

――新潟に加入しての印象を聞かせてください。

初めての移籍ということもあって、最初は不安な気持ちがいっぱいありました。ただ、平岡(富士貴)ヘッドコーチと藤原(隆充)アシスタントコーチとは群馬で一緒にやっていたので、スムーズにチームに入ることができました。今は良い感じです。

――新天地を新潟に選んだのも、平岡ヘッドコーチや藤原コーチとの縁が大きかったのでしょうか?

それもありますけど、平岡さんが求めている「堅守速攻」のスタイルが自分のプレースタイルに合っていると思ったのが一番の決め手でした。

――2000年に創設された新潟は、日本でもっとも古いプロバスケットボールクラブです。クラブの歴史を感じることはありますか?

メインアリーナのアオーレ長岡がある長岡市は全面的に新潟を応援してくれているので、どこに行ってもポスターなどを見ます。「オレンジブースター」と呼ばれるすごく熱いファンも多くて、本当にたくさんの人に支えられているチームだなと思いました。応援してくれる人のために頑張ろうという気持ちが、いっそう強まりますね。

――同い年の遠藤善選手と澁田怜音選手、2学年下の木村圭吾選手など、同年代の選手が多いです。チームの雰囲気はいかがですか?

遠藤選手とは大学時代にずっと試合をしてきましたし、澁田選手は僕が秋田、澁田選手が岩手出身ということもあって、小学生の時から知っています。みんなとても仲が良くて、良いコミュニケーションを取れていると思うんですけど、リーダーシップの面では課題が多いですね。本当だったら僕たちのような若手もどんどんリーダーシップを取らなければいけないんですけど、池田さん(池田雄一)だったり、綿貫(瞬)さんに頼ってしまう部分があります。チームが変わるためには下の世代から上げていかないといけないので、キャプテンの澁田をサポートできるように頑張りたいです。

――学生の頃まではどちらかというと、リーダーの下でのびのびとプレーしている印象でした。今は変わらなければいけないという意識なのですね。

そうですね。自分の持ち味であるシュートに関しては、タイミングが合ったら打つというスタイルは変えませんが、リーダーシップの面では、以前よりは声を掛けたり発信したりということを意識するようになりました。

とは言え、まだまだです。やらなければいけないのはわかるんですけど、他力本願なタイプなので……。でも「誰かがやってくれるだろう」という精神ではプロの世界では通用しないと思うので、今以上に周りに伝えられるようになりたいです。

杉本天昇

得意の3ポイントシュートは「50%の確率で3、4本決めたい」

――昨シーズンは、特別指定期間中に負った左ひざの大ケガの影響もあり、苦しいシーズンだったのではないかと思います。

それまで大きなケガをあまりしたこともなかったですし、すごく苦しくて、本当につらいシーズンでした。高校進学で秋田を離れた後、いつも遠くから応援してくれている両親に心配をかけてしまったことは一番辛かったです。

高校時代の恩師である佐藤豊先生や、平岡ヘッドコーチや藤原コーチなど、たくさんの人に声をかけてもらいました。両親にはケガした日に電話しましたが「ゆっくり休めよ」って言われて、いろいろと込み上げてきたものがありましたね。あの経験があったからこそ、新シーズンに懸ける思いは誰よりも強い自信があります。開幕戦から良いスタートが切れればなと思います。

――新シーズンの新潟は若手や新加入選手が多いチームですが、どのようなスタイルで戦いますか?

激しいディフェンスから速く攻めて、シュートを決めることです。本当に単純なことなんですけど、練習から常に試合を意識して、とにかくたくさん走って、体力作りを頑張っています。平岡コーチが常に言っているのは「ハードワーク」と「一生懸命戦う」という言葉です。僕らは若いし経験があるわけでもないので、そこがないと戦えませんから。

いやぁ、だいぶ走っていますよ(笑)。けど、勝つためなのでみんな弱音を吐かずにしっかりとやっています。実は走ることはあまり得意じゃないんですけど、高校時代に平岡ヘッドコーチも同じ経験をしてきていますし(平岡ヘッドコーチと杉本はともにハードな走り込みで知られる土浦日本大学高出身)……歯を食いしばって頑張っています!

――新しい武器を備えようという考えはありますか?

1対1からアタックで崩したり3ポイントシュートを打つのが好きで、ピック&ロールはあまり使ってなかったんですけど、今年はかなり練習しています。今まではピックを使っても、ただシュートに行って完結という感じだったんですけど、Bリーグはピック&ロールが主流だし、ハードショウのプレッシャーも厳しいじゃないですか。次の展開の精度を高めるためにも、状況判断を求めながらやっているところです。

――杉本選手が武器とする3ポイントシュートに関して、指標としている数字はありますか?

50%の確率で3、4本決めたいとは思っています。………いや、ウソです、80%です。いや、打ったシュートはもう絶対、100%です! 1試合での最多は10何本とかですかね。でも打ってる本数も多かったし、精度はこれからの大きな課題になってくると思います。

――他にスタッツにおいて気にかけていることはありますか?

ターンオーバーですね。やっぱり1つのミスが命取りになることもあるので。絶対にしないように状況判断のところは気を付けていますし、スタッツも試合後にそこだけは確認するようにしています。

杉本天昇

「周りを生かすことで、自分の良さがもっと出てくるんじゃないか」

――ケガから完全回復した新シーズンは、杉本選手にとって本格的なプロ1年目ともとらえられます。対戦が楽しみな選手はいますか?

琉球に移籍した松脇(圭志)さんですかね。僕、松脇さんを尊敬しているんですよ。高校、大学の1つ上の先輩で、ずっと背中を見てきたので。高校の同級生の菅原(暉)選手(群馬)とか同じ高校の選手の活躍は気にしますけど、松脇さんの活躍は他の選手以上に気にしちゃいますね。

――あらためて、新シーズンに注目してほしいところ、抱負をお聞かせください。

シンプルに、積極的にゴールにアタックする姿を見てもらいたいですね。良い時も悪い時も常にゴールにアタックして周りを生かすことで、自分の良さがもっと出てくるんじゃないかと思います。

新たな新潟アルビレックスBBになるんですけど、選手一同、勝利を目指して戦いたいと思っています。平岡さんは、まずは勝率を5割に乗せて、去年の秋田(ノーザンハピネッツ)さんみたいな感じをイメージしながらやっていこうと言っています。一つでも多くの試合に勝てるように頑張るので、ぜひ応援よろしくお願いします。

――ちなみに、新しい『天昇ポーズ』(杉本が大学時代によくやっていたポーズ)のアイディアは?

いやぁ、あれは大学2、3年くらいでやめたんですよ。なのに木村選手が過去の画像を掘り出してマネしてくるんで、だいぶ迷惑しています(笑)。今は、ああいうおちゃらけたことは横に置いておいて、とにかく謙虚に頑張っていきたいという気持ちのほうが強いです!