富樫勇樹

ともにゲームハイとなる18得点6アシストを記録

7月19日、バスケットボール男子日本代表はアジアカップベスト8進出をかけてフィリピンと対戦し、102-81で快勝した。

後半開始早々に大黒柱の渡邊雄太が負傷離脱する事態となり、直後に3ポイントシュートを決められて暗雲が立ち込めたが、ここで嫌な流れを断ち切ったのが富樫勇樹だった。富樫はすぐさま3ポイントシュートを決め返すと、その次のオフェンスでもステップバックからタフな3ポイントシュートを沈め、セーフティーリードを保つ原動力となった。また、最終クォーター中盤にも、攻め手がなくなった際に個で打開し、勝利を決定付ける3ポイントシュートを射抜いた。

渡邊が戦線離脱し浮足立つ可能性もあったが、現在の日本のスタイルを信じる富樫に焦りはなかった。「もちろん、この大会は彼の存在がかなり大きいですけど、その前からWindowの試合があって、長く合宿もしています。彼がいてもいなくてもチームが目指していることは一緒なので、そういう部分で変わらなかったです。あとはフィリピンがすごくフィジカルで戦う気持ちが強かった。Bリーグの選手も3人いたので、そういう選手に負けたくない気持ちもありました」

富樫は7本中5本の3ポイントシュートを成功させ、ともにゲームハイとなる18得点6アシストを記録した。グループリーグ3試合での平均が4.3得点、4.6アシストだったことを考えれば、昨日のフィリピン戦は限りなくベストパフォーマンスに近かった。富樫は言う。「僕が合流したのは最近ですが、Windowを通して去年からトムさんと練習して試合もしています。シーズンが終わってから一回休み、練習を始めて大会直前にチームに合流しました。対人練習があまりできていなかったので、試合を重ねることで試合勘は良くなってきて、それが昨日のパフォーマンスに繋がったのかなと思います」

また、富樫は若い選手が多い今回の代表チームを引っ張らないといけない責任感も当然感じており、それが体現できたフィリピン戦は若手の底上げに繋がったと感じている。「僕はベテランの方に入るので、雄太と一緒に少しでも若手を引っ張っていかないといけない存在だと思います。国際試合とBリーグの試合はかなり違いますし、昨日の試合でも分かるように、ああいうフィジカルさはBリーグではほとんど見られないので、そういう経験ができて良かったと思います」

富樫勇樹

対オーストラリア「ある程度の選手の3ポイントシュートが当たらないと難しい」

ベスト8に進出した日本は明日、優勝候補のオーストラリアと対戦する。ワールドカップ2023のアジア予選Window3で対戦した時は52-98と圧倒された。指揮官のトム・ホーバスは「リベンジマッチ」と意気込んでいるが、短期間で大幅なレベルアップをしたとは考えられず、さらに渡邊が出場できないとなると、苦戦を強いられるのは間違いない。

富樫も素直にオーストラリアの実力を認めつつ、このように心境を語った。「オーストラリアは今大会で一番強いチームだと思っています。インサイドを圧倒することは難しいと思うし、シリア戦とまでは言わないですが、ある程度の選手の3ポイントシュートが当たらないと難しい。僕は雄太みたいに25得点して10リバウンドを取ることはできないですが、昨日の試合のようなプレーができればチームの助けになると思う」

富樫が口にしたシリア戦は須田侑太郎の9本成功を筆頭に、チームで52本中27本の3ポイントシュート成功(51.9%)と驚異的な数字をマークした。純粋に全員のシュートタッチが良かったとも考えられるが、ペイントタッチやキックアウトの精度が高く、シュートセレクションが良かったことがこの確率を生んだとも言える。そのため、オーストラリア戦はいかに良い状態で3ポイントシュートが打てるか、その前の崩しが重要になる。

「トムさんのバスケはドライブからのキックアウト、3ポイントシュートをかなり重要視していて、自分のスタイルに似ている部分はある」と言う富樫が、オーストラリアディフェンスを切り崩し、さらに自らも高確率で3ポイントシュートを決めることができれば、ベスト4の扉が開けてくる。