デジョンテ・マレー

ヤングの負担を軽くし、さらにエースキラーにもなれるマレー

以前から噂されていたホークスとスパーズによるデジョンテ・マレーを巡るトレード交渉は、フリーエージェント市場が開く前日になって、多くのドラフト指名権と引き換えに成立しました。指名権のプロテクトや数で、お互いが優位な条件を引き出すための交渉が行われていたと推測されますが、スパーズにとって満足いくオファーが得られたと考えられ、結果的にホークスはダニーロ・ガリナリ以外の戦力を削ることなく、懸念だったガードの補強に成功しました。

トレイ・ヤングを中心としたホークスは、フィニッシュ力のあるウイングを揃えている一方で、プレーメークはヤングに頼っており、プレーオフではヒートの徹底した「ヤング潰し」のディフェンスによって、まともなオフェンスを構築できず、2人目のプレーメーカーを補強することはオフの最優先課題でした。

イマジネーションに溢れて誰もが想像つかないパスを出してくるヤングに対して、クイックネスを生かした突破とミスの少ない堅実な選択をするマレーは、同じポイントガードながら特徴が全く違うプレーメイカーです。交代でハンドラー役を務めることで、展開に変化をつけやすく、またマレーがウイングからのドライブ担当に回ったり、ヤングがオフボールムーブからのシューター役に回るなど、それぞれの役割を変化させることも可能なコンビです。

もちろん、マレーに求められる最大の仕事は、ヤングの弱点であるディフェンス面でエースキラーになることです。ホークスのインサイドはクリント・カペラやジョン・コリンズ、オニエカ・オコングとスピードも高さもあるビッグマンが揃っている一方で、アウトサイドはボールにプレッシャーをかけられず、自由にパスを回されて3ポイントシュートを高確率で決められていました。マレーにはウイングスパンの長さを使ったハイプレッシャーで、相手の起点役を潰し、ボールを奪い取る役割が期待されます。

13回のトリプルダブルを記録したようにリバウンドにも強く、スモールラインナップでも使いやすいマレーは、ホークスにとってベストなターゲットだったからこそ、やや過剰に思える対価を払ってまで欲しかったのでしょう。

一方でスパーズにとっては生え抜きのオールスターを失うことになりますが、マレーの価値が最大化している今オフが『売り時』と判断したと思われます。これで昨シーズン開幕前のデマー・デローザン、シーズン中のデリック・ホワイトとスパーズは次々と主力がいなくなっており、明確に新たな時代へと動くことになります。ドラフト9位のジェレミー・ソーファンや2年目のジョシュ・プリモを中心とした再建へと向かっていくのか、それとも空いたキャップスペースで補強に動くのか。もう少し動きが続くオフになりそうです。