ジェフ・ギブス

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

インサイドを制圧、A東京撃破の立役者に

栃木ブレックスはアルバルク東京との全勝対決を延長の末に制し、開幕からの連勝を5に伸ばした。大黒柱のライアン・ロシターが35得点14リバウンドと圧巻のパフォーマンスを見せたが、ジェフ・ギブスの活躍も決して見逃してはならない。

身長188cmのギブスはインサイドプレーヤーとしては小柄で、ポストアップされるシーンでは頭一つ分の差がある。それでも21歳までやっていたアメフトで作り上げた強靭な肉体とウイングスパンの長さを生かし、栃木のインサイドを支え続けている。

「自分の役割はどんな時も変わらない。リバウンドとフィジカルにプレーすることだ」というギブスは、ロシターを上回る16リバウンド(4オフェンスリバウンド)を記録した。

リーグトップクラスのビッグマンのアレックス・カークや日本代表の竹内譲次など、高さと巧さを兼ね備え、20cm前後の身長差がある相手に対し、「彼らをいかにゴールから遠ざけるか。リバウンドのポジションでいかに優位に立つかを意識した」とマッチアップの極意を明かす。

得点機会を増やすオフェンスリバウンドに比べ、ディフェンスリバウンドはインパクトに欠けるが、栃木のようにトランジションバスケットを強みとするチームにとっては、攻撃の起点となるディフェンスリバウンドは最も重要と言える。

栃木を指揮する安齋竜三ヘッドコーチも「最後までディフェンスとリバウンドを我慢した」ことを勝因に挙げており、その言葉からもギブスの勝利の貢献度の大きさが分かる。

ジェフ・ギブス

「自分が0得点でも、試合に勝てればそれでいい」

今回のような拮抗した展開では、勝負を分けたプレーを絞ることは難しい。ただ延長戦で渡邉裕規が沈めた2本のシュートは、勝敗を左右するシーンの一つに挙げられる。

「お互いに流れが行ったり来たりして拮抗した試合になったが、延長戦でナベがビッグショットを2本決めてくれて、チームとしてリバウンドをしっかりと取ることができたことが勝利につながった」とギブスも言う。

終盤の緊迫した場面や流れを変えるシーンなど、ここ一番の場面で渡邉がシュートを沈める時間帯を、ファンは『ナベタイム』と呼び、「俺たちもナベタイムって呼んでるぜ」とギブスは笑顔を見せた。

35分間身体を張り続けていたギブスにとって、全6得点をオーバータイムに集中させた渡邉は『おいしいとこ取り』と映ってもおかしくはないはずだ。それでもギブスは「自分が0得点でも、他の選手が決めて試合に勝てればそれでいい。やるべきことをやれればそれでいいと思っている」とチームの勝利にしか関心がない。

また「自分のスクリーンはチームの強み。いかにシューターをオープンにするかを考えているよ」とギブスが言うように、渡邉のシュートを生んだのがギブスのスクリーンだったことも忘れてはならない。パスを出したわけではないのでアシストは記録されないが、フリーを生み出したその働きは正真正銘のアシストだった。

ごつい肉体とあどけない笑顔のギャップでファンの心を鷲掴みにするギブスは、これからも栃木とチームのために身体を張り続ける。