吉田亜沙美がWリーグに戻って来た。昨シーズンのファイナルを制し、JX-ENEOSサンフラワーズを10連覇へと導いたキャプテンは、「1回気持ちをリセットして休んで、充電をちゃんとしてから気持ちを作っていきたい」と語り、今夏の代表活動を回避。新シーズン開幕を前に、皇后杯とWリーグの2冠を新たに目指す吉田に話を聞いた。
完全休養のオフは「私には必要だった」
──長いオフは久しぶりだったと思いますが、どんなオフを過ごしましたか?
小学生からずっとバスケットをやってきて、実業団に入ってからは日本代表の活動があって、シーズンが終わったらすぐ代表、の繰り返しだったので、こんなに長期のオフをいただけたのは人生で初めてでした。だから「まずは何をしようかな」と(笑)。本当に良い時間で、リフレッシュできたオフだったので、私には必要だったんだなと今振り返って思います。
リーグが終わってしばらくは本当に何もしない期間でした。トレーニングをしないのはもちろん、身体のケアも一切しませんでした。心のケアを優先した感じです。だからこそパフォーマンスも落ちているので、そこは少し心配です。でも私は、身体が動いても気持ちが付いてこないままプレーで表現ができる選手ではないので、こうしてリーグに向かって行ける気持ちが作れればいいと思っていました。
──昨シーズンのファイナルで10連覇を決めた時には心身ともにすり減って、その先のことは何も考えずにひとまず休みたい、という話でした。バスケをやりたい気持ちは戻りましたか?
去年まで代表活動をしている時は、ほんのちょっとのオフでもすぐに身体を動かしたくなって、「バスケがしたいな」という気持ちになったんですけど、昨シーズンが終わった後はそういう気持ちになかなかなれなくて。でも、リーグが近づくにつれて「やらなきゃいけない」と動き始めました。今はまだコンディション的にも気持ち的にも万全ではないです。でもこれから皇后杯とWリーグの優勝に向けて少しずつ万全に向かってやっていければと思います。
──ファンからすれば、「もしかしたら引退してしまうのではないか」という不安があったと思います。でも、シーズンを前にこうして戻って来ました。
とりあえず今シーズンはそうですね(笑)。ここからの私はきっと1年1年の勝負になると思っています。シーズンが終わってみないと、その時の気持ちがどうなっているか分からないのが正直なところです。誰しも必ず引退の時が来ますけど、私には私なりの引退の仕方があると思うので、その時には自分自身と向き合って、納得して決断したいです。とりあえずこの1年はJX-ENEOSに専念してやっていきます。
「昨シーズンのチームを超えなければ優勝できない」
──吉田選手は以前から「勝つための準備をどこよりもやっているから、JX-ENEOSは負けない」と話していました。今夏は日本代表に行かなかったことで、代表選手ではないチームメートたちがシーズンに向けてどんな準備をしているかを見ることができたと思います。
私も代表期間中に自分のチームがどういう練習をしていて、どういう追い込まれ方をしているのか見たことがなかったんです。今回は一緒にやりながら、体力を付ける練習だったりスキルアップの練習を間近で見て、「個々で成長しなければいけない」とみんなが思っているんだと感じました。そういう意味でも、例えば宮崎早織選手や林咲希選手は危機感を持っていて、「今シーズンは試合に出るんだ」という気持ちが強くあります。日本代表に選ばれてアジア競技大会に出た経験が、今は良い方向に行っていると思います。
彼女たちは気持ちを強く持てばどのチームにも通用するパフォーマンスができます。技術よりも気持ちの部分でもっと強くなって、「自分が」という思いをもっと持っていければ、より成長してシーズンを通して安定したプレーができると期待しています。
──そういった準備を受けて、JX-ENEOSは10連覇した昨シーズンよりレベルアップしますか?
そうですね。私自身が毎年思うことは、昨シーズンを超えるチームにならないといけない、ということです。超えなければ優勝できないと思っています。
──では吉田キャプテンからあらためて、JX-ENEOSのバスケットを紹介してください。
トランジションの速いアップテンポな展開に持ち込んでいくのがJX-ENEOSのスタイルです。そこはウチの強みですし、もっともっと伸ばしていかなければいけない部分でもあります。また選手全員が負けず嫌いで、練習でも試合でもバチバチやる、勝ちたい気持ちがどこよりも強いチームです。毎年2冠を達成するという目標を掲げて、常に目の前の試合を勝ち切る、JX-ENEOSのバスケットを40分間徹底してやります。それができれば、自然と結果もついてくると思います。